鋼材の添加物と役割【基礎中の基礎を簡単に説明するよ】

熱処理

金属加工で使われる鋼材には様々な種類がありますが、それぞれに含まれる元素がどのような役割を果たしているのかということを知れば、何かのトラブルが発生した時にその知識はとても役に立つでしょう。

 

それに、金属加工をする者として他の人よりワンランク上にいける!!

周りから頼りにされる!!!

給料も上がる!!!!

 

ということなので、是非とも鋼材への添加物がどんな目的で入れられているのかを覚えてください。

詳しいことまでは覚えなくてもよいので、ザックリとした感じをつかんでください。

鋼材の基本中の基本【鉄の5元素】

鋼材に含まれる元素として必ず覚えておいて欲しいのが「鉄の5元素」と呼ばれているいかの5つです。

  • 炭素(C)
  • ケイ素(Si)
  • マンガン(Mn)
  • リン(P)
  • 硫黄(S)

炭素は鋼材の硬さや強さを決定する最も重要な元素です。

熱処理で鋼が硬くなる理由」という記事でも説明しましたが、鋼を熱処理することで硬度を上げることができるのは、加熱することによってできた鉄のオーステナイト組織の中に炭素が入り込んだまま急冷して炭素を閉じ込めてしまうからです。

閉じ込められる炭素量が増えれば鋼はより硬くなります。

 

炭素から出来ているダイヤモンドをイメージしてもらえればわかりますが、炭素量が多いほど、熱処理で鋼は硬くなると覚えておいてもよいくらいです。

 

ケイ素も鋼材の硬さを向上させる元素ですが、炭素ほど重要じゃないです。

マンガンは鋼のより深くまで焼入れが入りやすくなるための元素です。

 

鋼の靭性を脆化させる有害元素「リン(P)と硫黄(S)」

鉄の5元素にも含まれるリンと硫黄ですが、これらは鋼の靭性(しなやかさ)を脆化させてしまいます。

いわゆる不純物なのですが、SUS303のようにわざと添加している鋼材もあります。

 

有名な例として「SUS303とSUS304の違いについて」の記事で説明していますが、SUS304って削りにくい材質ですよね。

特にフライス加工では、エンドミルの摩耗が激しいので加工するのが嫌だと言う人は結構多い。

 

そんなSUS304の加工性を向上させるために加えられているのがリンと硫黄で、これがSUS303です。

SUS304と比べると圧倒的に切削性がよいです。

サクサク削れます。

 

このように、素材の性質そのものよりも切削性を改良する目的で添加されることもあるのですが、欠点としてはリンも硫黄も不純物には変わりないので耐食性などが低下してしまいます。

なので、どこに使う部品かを考えないと思わぬトラブルに発展することもありますので注意しよう。

 

焼入れ性を向上させるマンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、ボロン(B)

鋼材は巨大になればなるほど焼入れをしても中の方までは焼きが入りません。

どうしても表面近くだけが焼けます。

 

しかし、鋼にマンガン、モリブデン、クロム、ボロン(ホウ素)などの元素を添加すると焼入れ性が向上するため、奥深くまで焼入れが入りやすくなります。

このうち、クロムは炭素と炭化物を作りやすくSCM415やSCM420など浸炭焼入れをする鋼材には必ず含まれています。

 

よくシャフトを作りたいけど、S45CとSCM材とどっちがいいかな?

と聞かれますが、シャフトの中まで焼入れをしっかりと入れて頑丈なものを作りたいならクロムやモリブデンを含むSCM材の方が良いですね。

耐食性と靭性が良くなるニッケル(Ni)

SCMとSNCMの違いがニッケル(Ni)の含有の有無にあるように、ニッケルが添加されることで鋼は耐食性が向上します。

また低温下での鋼材の靭性(粘り)がよくなるので、シャフトなどではより折れにくいものを作るためにSCMではなくSNCMを使ったりするし、工具のホルダーにもSNCMが採用されることはよくあります。

 

炭素と化合物を作って高温での硬さを維持するタングステン(W)

タングステンは金属の中で最も融点が高い3380℃です。

その性質から鋼の焼入れ性を向上させるだけでなく、高温にしたときに硬度が下がってしまうことを防いでくれます。

なので、金属の中でもとりわけ硬い超硬金属にはタングステンが添加されているのです。

 

ちなみに、コバルト(Co)も熱による鋼の軟化を阻止してくれる元素です。

 

鋼の硬度と強度を向上させるバナジウム(V)

バナジウムは炭素と結合して結晶粒が細かくなるため、靭性を保ったまま金属強度を高くすることができるため、ハイス鋼(SKH)やダイス鋼(SKD)に含まれています。

 

鋼材の添加物の役割と特徴を覚えるだけで視界が広がる理由

金属加工をしていると、材質相談を受けたり代替材の提案をされたりすることもあります。

そんな時にどんな添加物が入っているのかを調べ、なんとなくでもその鋼材の特性みたいなものが予測できれば、果たして材質変更をしてよいものかどうかを判断しやすくなります。

 

それに、お客さんのところに営業に行った時とか、鋼種変更の提案とかできるようになります。

製品がよく割れてしまうという問題があったとしても、何故だろうかということを論理的に考えることができるようになります。

 

1つ1つ全部覚えるのは難しいと感じるかもしれませんが、繰り返し思い出していくうちに自然と頭の中に定着しますので、忘れたと思ったら何回も調べてみよう。

 

タイトルとURLをコピーしました