個人のための部品加工依頼「い・ろ・は」

身の回りの様々なところに使われている様々な部品。

個人で依頼したいと思うことありますよね。

 

実際、私が町工場を経営していて個人様からのご相談を数多く受けてきた経験から、困ったことがたくさんありました。

正直に言わせてもらうと、部品加工のことを何も知らない素人さんからのご相談ってすごく面倒なんです。

 

なぜ面倒なのかというと、答えは簡単です。

依頼指示がすごく適当過ぎるからです。

 

どういうこと?

と思うかもしれませんが、ここではそういったことも含めて解説したいと思います。

 

この記事を読めば、どこの業者にどのようにして部品加工依頼をすればよいのかというポイントを掴めるので、加工依頼の成功率が格段に上がります。

個人の「部品加工依頼の手順」を知っておこう

部品加工と言っても、本当に色々あります。

  • 自分で考えたオリジナルバイクパーツを作ってほしい。
  • すでに廃盤となってしまった現品部品をコピーしてほしい。
  • オリジナル商品を作って販売したい。試作や量産はできるの?
  • こんな便利な自分だけの装置って作れる?

などなど。

 

それぞれの要望・希望があるはずですが、業者への相談から依頼までの大まかな流れ(手順)というものがあります。

図面の用意 → 材質の指定 → 数量の指定 → 納期指示 → 予算の提示(見積依頼) → 発注 → 製作 → 納品

多くの業者から断られてしまっているという人のほとんどが、図面が無い、素材が分からないということが多いです。

作る側としても、情報が無いとどうやって作ればよいかわからないんです。

図面の用意・提示ができない場合の対処法

部品図面

最初の関門が「図面の準備」だと思います。

「部品加工依頼をするなら図面を用意しなさい」と言われても、誰でも図面をつくることができるわけじゃないですよね。

どうすればよいか。

 

1.簡単な形のものなら、ネットや本を見て簡易図面を自分で描く

2.業者さんに頼んで製図してもらう

3.製作をあきらめる

 

この3パターンしかありません。

私も過去に多くの個人さんから加工相談を受けていますが、30~40%くらいの人は図面が用意できないということでした。

図面らしきものは用意できても、加工者が見ると「???」というものもありました。

 

図面とは、それを見れば完成形が想像できるものでなければいけません。

もちろん、誰が見てもね。

描いた本人だけが理解できるものは、もはや図面とは言えないので図面にはルールというものが存在するのです。

 

自分で色々と部品を作っていきたいと考えている人は、1冊だけでよいので図面の本を手元に置いておくことをおすすめします。

とりあえず、私がおすすめする本を1冊紹介しておきますね。

 

ちなみに、手元になにかしらの現物品があって、それと同じものが欲しいという場合はどうしたらいいのか?という悩みをお持ちの方も多いです。

実際、純正品が廃盤になってしまって手に入らないとか。

 

現物品しかない場合はその現物品を寸法測定してトレース(図面化)するしかありません。

素人さんがよくやるのは写真を撮って送っちゃうという行動。

これはNGです。完全にNG

 

写真を送っただけでは、部品加工できません。

寸法も素材も細部の構造も分からないだらけなので。

あくまでも、検討の余地があるか無いかを判断してもらうための材料として写真を送るのは良いですが、写真だけを見せて同じものを作ってくれという指示は出してはいけないです。

 

また、写真に撮って送る場合にも注意点はあります。

 

正直、写真では限界があります。

やはり、できる限りは現物を測定して図面化するべきでしょう。

 

測定方法はノギスやマイクロメーターを使ったりする方法の他、どこかの企業にお願いして三次元測定したりCTスキャンする方法がありますが高額な費用がかかるのが現実です。

メーカー純正品の商品情報に図面データがあればよいのですが、通常は部品図を公開していない。

図面がない現物品の図面化の方法とは?

 

部品図面の寸法単位や公差は重要

私たちが一般的に使う長さの単位ってセンチメートル(cm)が多いと思うんですが、基本的に部品加工ではミリメートル(mm)を使います。

 

なので、図面を描くときも長さはミリメートルで表記するように注意してください。

そうでないと、製作依頼をして出来上がったものが、思っていたものの1/10サイズになっちゃいますよ。

金属部品加工の個人依頼でよくある寸法単位ミス

 

そして、もう1つ重要なのが寸法公差です。

寸法公差というのは、指定した寸法の許容誤差を示す範囲のこと。

例えば、10(±0.1)であれば、9.9mm~10.1mmの間に寸法が入っていればOKですよという意味になります。

 

寸法公差が重要になるのは、異なる部品どうしを合体させたりする時です。

公差が大きいとガタガタになるし、逆に公差が狭すぎると加工が難しくなるので製作費用が高くなります。

時には、公差が狭すぎてプレス機を使わないと合体させられない・・・なんてことに。

これを”はめ合い”と呼びます。

【公差で値段が変わる!】ワンオフパーツ加工依頼の図面に書く公差に注意!

 

材質を決める

部品、商品、装置のいずれにしても、それらをどのような材料を使って作るかを決めないといけません。

 

装置の場合は、仕様書を業者に提示することで適当な素材を選んで設計をしてくれます。

プラスチック(樹脂)系の商品や部品を作る場合は、目的は何かによって素材を選ぶんですけど専門家じゃなければどんな種類の素材があるかすら分からないと思います。

参考までにネット上から拾ってきたものですが、こちらからダウンロードしてもらえればよいです。

 

見てもらえれば、こんなにも種類があるのか・・・と驚くかもしれないです。

めちゃくちゃ迷うでしょうけれど、とりあえず物性を見ながら適当に選んでみてください。

ちなみに、私が樹脂加工でよく見るのはPOM(ジュラコン・デルリン)、PVC、PET、PC、MCナイロン、ABS、PEEKです。

 

金属素材の場合も用途によって材料選びはすごく奥が深いものになります。

こちらも、私の経験から言及すると、個人依頼で相談される部品で使う素材は一般的な鉄(SS400)、炭素鋼(S45C、S50Cなど)、クロモリ鋼(SCM440など)、ベアリング鋼(SUJ2)、アルミ(A5052、ジュラルミンなど)、ステンレス(SUS303、SUS304)、真鍮がほとんどです。

 

これ以外に鋼材はいっぱいありますけど、そこまで細かい使い分けをするほどの部品ではないこともあって、あまり特殊な鋼材は材料価格が高くなるだけなので薦めていません。

錆びる・錆びない、軽い、強度がある、耐摩耗性が欲しい、という要求が色々とあると思いますので、それらの要求を基準にざっくりと選ぶとよいです。

引張強度とか靭性については、そのた鋼材の種類によってスペックが異なりますが、本当に専門的な機械装置とかのレベルでテストしていかないと分からないことも多いですから、そんなに気にしなくてよいと思います。

 

材料のカテゴリでもいくつか紹介しています。

 

2Dデータ、三次元データ(3D)はあるか?

部品加工依頼をするとき、もしもCADソフトでデータを作れるのであれば提供する方がよいです。

CADデータを送る場合は、拡張子の種類にご注意ください。

部品加工の依頼で送るCADデータの拡張子は何がよい?

 

あなたが使っているCADソフトのオリジナルの拡張子でデータを送ってはいけません。

必ずdxfやstepなどの中間ファイルに落としてから送るようにしてください。

 

とりわけ部品にサーフェイス曲面が多いものだったり、フィギュアのようなものだと絶対に3Dデータが必要になります。

3Dデータ無しにイメージ図だけで仕事の依頼はできません。

 

3Dデータの作成は専門の業者がありますが、インターネットで探すかクラウドワークスなどで個人で受けている人にお願いすると比較的安く済んだりすると思います。

 

加工業者さんによっては、3Dデータの作成までやってくれるところがありますけれど、データ作成だけを受けてくれるところはほとんどありません。

見積りをするのに3Dデータを作ってもらったけれど、製作費が高くなるので依頼はやめたというのが一番最悪なパターンです。

このリスクを考えて、通常はデータ作成と部品製作はセットで依頼するものと思ってください。

 

熱処理や表面処理

金属の種類によっては、熱処理をして使用するものがあります。

熱処理は一般的には金属の耐摩耗性や硬度を上げたりする目的で行います。

刃物などは必ず熱処理します。

 

熱処理のカテゴリで説明しているので参照してください。

 

表面処理はアルミであればアルマイト処理。

鉄系なら黒染め。

その他、コーティング(個人さんからの依頼でやった経験はありません・・・)。

メッキや塗装もありますね。

 

表面処理がある無しで、加工屋によっては対応していないこともあるので確認は必要です。

表面処理のカテゴリ

 

試作・単品加工か量産加工か?

試作単品加工の依頼はさておき、個人で数千個、数万個の量産加工を依頼することはないとは思いますが、私は数十個レベルの依頼はたまに受けます。

数十個レベルになると、発注金額は数万円ではなく数十万円になったりするので依頼する側としても慎重になるはず。

 

受ける側としても、本当に大丈夫?

個人でそんなに作るの?

という印象を持つんですよね。

 

数十個、数百個レベルだと、普通は金型などを作ることはありません。

毎月何万個も作るのであれば、金型を使わないとコストが高くなってどうしようもなくなるのですが、金型は安いものでも数十万円くらいはするでしょう。

 

個人さんから「金型って高いですか?」と聞かれることがありますし、「金型を作ったら製作費はいくらですか?」と質問されますけど、そんなの即答できるわけありません。

何故なら、金型は何個必要になるのか?製造工程はどうするか?など細かい費用がすぐには見えないからです。

 

代金の支払いのこと

部品加工費の支払いは会社によって様々です。

普通は前払いでしょう。

作ったけど支払いをしてもらえないというトラブルを回避したいからです。

 

支払い方法は現金の銀行振り込みがほとんど。

クレジットカード払いとか電子マネーを取り扱っている部品加工屋を私は見たことないです。

そもそも、部品加工業者は飲食業や小売店と違ってB to Bの仕事がメインですからね。

 

まとめ

というように、個人の部品加工依頼の流れを掴んでもらえたと思うのですが、一番の問題点は図面ですね。

図面の中に書き込む情報も含めて、図面あるいはデータさえあれば何とかなるんですけど、ここが一番難しい。

 

町工場が個人さんからの依頼をあまり好まないのは

  • お金の支払いを信用していない
  • 作った部品に細かいクレームをつけられる
  • 加工図面がもらえない

だいたいが、この3つです。

あれは?これは?と質問攻めされるのも嫌がります。

パッと図面を出して、パッと加工して、パッと納品したいんですね。

 

私も加工屋なのでその心情はよく分かりますが、最初から加工屋だったわけではないので個人さんの心情も分かります。

一人で悩まず、1つ1つ依頼のための準備をしていきましょう。

 

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