圧力角45°のインボリュートスプラインの修正に四苦八苦!!

町工場

先日、中国メーカーに依頼していたインボリュートスプラインの加工品が空輸便で届いたんです。

中を開けて確認してみたら、全く入らない!!

こういうことってよくあるよね。

中国だもの。

なんて言ってらんない状況です。

 

修正しないといけないですよね。

誰が?

中国に送り返す?

 

いやいや。時間がない。どうする・・・

しばらく思考停止状態が3分くらい続きました。

 

結局は自分が何とかしないといけないので、修正方法を考えます。

45°の圧力角のスプラインをワイヤーで加工する

私がスプラインでよく見かける圧力角は30°くらいのものなんですが、今回のは45°

 

自動車業界にはよく使われているらしいよという信憑性に少し欠ける情報をもらいつつも、とりあえず歯切り屋ならできるっしょ!

みたいなノリで、中国の外注に見積りしてもらったんだけど失敗しました。

 

中国メーカーに注文してからしばらくして、「スプラインのデータください」と外注先から言われ、こちらも「そんなの無いよ」としか言えないやりとりが続きました。

(※お客さんからもデータ支給は無いと言われたのです)

この頃から、本当にできるんかな?という不安はあったんですけどね。

 

でも、走りだした列車ですから。もう止まりません。。。。

事故が起こるまでは。。。

結局、事故りましたけど。

 

で、今回のトラブルをどうやって解決(修正)するか。

問題のスプラインがこれ。

インボリュートスプライン

内径に切ってるスプラインが削り足りないわけです。

これをワイヤー加工で少し広げていこうという作戦。

 

今から電極を作って放電加工して・・・・なんてやってる時間ないので。

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スプラインのデータが無い!!!!

ワイヤー加工で修正するためには、dxfとかdwgデータが必要になります。

でも、手元にはデータが無い!

 

そこで、中国メーカーに加工したデータをくださいと言ってみたところ、メールで送られてきたのがこれ↓

スプラインデータ

Hardening 弊社データ

バカヤロウ。

これで、どないせぇってんだよ!

 

私が欲しいのはdxfデータだって言ってんだろ!

 

でも、中国メーカー側はdxfデータは無いと言うんだわ。

どうやってるか知りませんけど、なにやらワイヤー放電の機械にインボリュートスプラインの歯数とか圧力角とかの数字を入れて自動で加工したみたいですわ。

 

なので、CADデータは作っていないんだと。

オーマイガッ!!です。

知らないなりに、ギアの描き方を調べてCADデータを作る

現在時刻17時。

この時点で、お客さんからは明日中に修正してくださいと言われてます。

やべぇ(汗

 

人間、本気で気力を出したら何とかなるか!と思いながら、必死でギアの描き方を調べてCADで描きました。

オーバーピン径って何?とか、短時間で頭がめっちゃ疲れました。

 

普段はギアなんて描いたことないので、まったくもって、よく分かっていなかったです。

この時ほど、ギアのことをもう少し勉強しとけばよかったと後悔した時はないかもしれません。

 

出来上がったデータがこれ↓

ギア

よし。

とりあえず、データはできた。

まてよ!?

このデータどおりにワイヤー加工修正して、本当にスプラインシャフトが入るんやろうか?

という不安が。

緊急!作ったスプラインデータをレーザー加工でくり抜いて、スプラインシャフトに入れてみる

そもそも、作ったデータが正しいかどうか、スプラインギアに入るかどうかを確認しないといけません。

ぶっつけ本番でワイヤー加工修正したら、入りませんでしたとか最悪です。

ワイヤー修正したらギアが大きくなりすぎて、品物がパァになりましただと頭がパァになりそうです。

 

なので、まずはこのデータを使って適当な薄い板をくり抜いてみます。

すでに時間は18時30分くらい。

やべぇ!!!!!

 

急いで、知り合いにお願いしてお願いして、とにかくお願いして緊急にレーザーカットしてもらいました。

そっこーで加工屋のところに車で向かいます。

インボリュートスプライン

いやぁ、持つべきものは仲間です。

あざぁーーーーす!!!

 

ということで、無知の私が作ったギアのデータを使ってくり抜いたこの板。

果たして、スプラインシャフトに入るのでしょうか。

ドッキドキです。

入らなかったら・・・・

 

この時、時刻19時30分。

インボリュートスプライン

わーい♪わーい♪

入りました!!!

キレイに入りました!!!

やりました!!!!

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どうやってワイヤー加工の位置出しをする?

すでに時刻は20時前になっているので、流石に今からワイヤー加工屋の扉をドンドン!!なんて非常識なことはできません。

とりあえず、夜分遅くに申し訳ない!!と言いつつ事情を説明して、電話で朝イチに伺うアポを取っておきました。

 

ここで、ふと思った。

ワイヤー加工の位置出しをどうするよ??

 

基準面とか無いし。

インボリュートスプライン

 

うぉぉぉ!!!

うぇぇぇぇ!!!

状態です。

 

とりあえず、会社に戻り治具を考える。

 

位置出しが狂うと、全ての努力がパァになります。

修正しているのか、オシャカを作っているのかわからないです。

 

あなたなぁ~ら、どうするぅぅぅ♪

というソングが頭の中に響くなか、「四角のブロックを入れてみよう!!」と思いつきました。

 

これが最良策かどうかはわかりませんが、この時点では少なくとも妙案が浮かびませんでした。

そして、作ったブロックを入れた状態がこれ↓

インボリュートスプライン

中に入れたブロックで平行をみて加工してもらいます。

ブロックを入れたときに、ギアの頂点が90度の位置にくるようにしてます。

 

よし、これでとりあえずOKかな。

ワイヤー加工で修正をしてもらう

翌朝7時前、ワイヤー加工屋さんのところに到着。

まるで借金取りみたいにワイヤー加工屋が来るまで張り込む。

 

ワイヤー加工屋:「おはようさん」

来た!!!

 

かくかく、しかじか、こうやって平行みて、こうやって加工して・・・

と改めて説明して、今日中になんとか処理してもらえるようにお願いしました。

 

ワイヤー屋さん、ご迷惑をお掛けしました。

感謝します。

 

インボリュートスプライン

治具を使ってワイヤー加工機にセットしてもらい、加工。

数十分後。

連絡が入り、次の画像が送られてきました。

 

インボリュートスプライン

入った!!!!

やった!

 

これで納品できる。

助かったぁ。

 

その報告を中国メーカーに伝えると、「お疲れ様でした。けっこう修正に手間がかかるようですね」だって。

当たり前です。

データも時間も無い状態から、ようやったわと思いましたよ。

 

海外製は素晴らしい部品が出来上がってくることも多くなりましたが、一方で今回のようにちょっと特殊なギアの加工とかは危険です。

普通のスプライン加工でもNGが出やすいです。

あとは、ネジの旋盤加工もNGが出やすい。

 

どうしても、相手側との嵌め合いとか、ネジ合わせがあるものは注意しないと修正の嵐に巻き込まれます。

修正はちゃんと修正できたらよいけれども、修正したつもりが製品をぶっ壊してしまったりすることもあります。

そうなると、結局は再製作することになるので、修正にかかった時間とか全てが無駄になってしまいます。

 

だから、他社で作った製品の修正ってみんな嫌うんですよね。

みなさんも、こんなことにならないように注意してください。

 

インボリュートスプラインの修正実録でした。

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