『鍛造』温度によって違う種類分け!【熱間・温間・冷間とは?】

部品加工の基礎

金属部品加工をしていると、金型部品の図面を見ることもあるでしょう。

ふと、誰かが「熱間用の部品が・・・」とか「冷鍛部品は公差が厳しいからなぁ」とか話しているのを小耳にはさんだりしませんか?

 

鍛造には、その管理温度によって大きく熱間鍛造、温間鍛造、冷間鍛造の3種類に分けられます。

ここでは、部品加工初心者さん向けにその違いについてザックリと紹介します。

熱間鍛造とは?

熱間鍛造はおよそ1000~1200℃くらいの温度で金属を熱してから、金型で挟んで成型する鍛造であり、再結晶温度以上、固相線温度未満の範囲で行う鍛造。

これらの温度について少しだけ、簡単に説明しておきます。

 

金属素材は引き延ばしたり、切ったりすることで固くなったり(加工硬化)歪みが生じているものです。

これは金属の結晶構造が壊されたり変形したりするものによります。

そんな状態の金属素材に熱を加えていくと、ある温度以上で急激に金属が柔らかくなる。

その理由は、歪んだ結晶構造がいったん解消され、新たに整った結晶構造に変わるからで、これを再結晶と言い、その温度のことを再結晶温度と言います。

 

もう1つの固相線温度とは、金属がドロドロの液体状態になる温度だと思ってください。

 

つまり、再結晶温度(金属が柔らかくなる温度)と固相線温度(ドロドロになってしまう温度)の間の温度で鍛造するのが熱間鍛造ですよということです。

 

熱間鍛造のメリットとデメリット

熱間鍛造のメリットは、鍛流線(メタルフローライン)が形成されるため、その機械的性質が他の鍛造よりも優れているということです。

 

メタルフローラインはファイバーフローとも言いますが、その名前の通りで、木材に木目があるように金属にも金属目(こんな言い方しないかもしれないけど)があります。

ファイバーフローを断ち切るように加工すると、金属製品の機械的性質は落ちてしまいます。

木材を加工するときに、木目の方向を見誤るとパックリと割れたりすることがありますよね?

同じことが金属でも起こったりします。

 

鍛造ではなく、工具で切削するとファイバーフローは断線されることは容易にわかりますよね?

あるいは、鋳造のように溶かした金属を固める場合もファイバーフローは無くなります。

しかし、熱間鍛造の場合はファイバーフローを断ち切ることなく曲げてしまうので、割れにくいといった靭性の高い部品が出来上がるのです。

 

そしてもう1つ、熱間鍛造は金属を柔らかくしてから打ちますので金型設計の自由度が高い。

固い金属を鍛造して変形させようとすると限界がありますが、熱間の場合はかなり複雑な形状まで可能となります。

 

ファイバーフローの点で良好とされる一方、熱間鍛造は金属を高温に熱しますので、どうしても寸法精度はよくありません。

加熱した金属を鍛造したあと、常温に戻すと金蔵は必ず収縮してしまいます。

 

精度が必要な部品については、熱間鍛造した後に機械加工を入れなければ製品としては使えないでしょう。

 

また、材料を高温に加熱することによって素材中に含まれる不純物が酸化物(スケール)として表面に浮き出てきます。

なので、熱間鍛造品は表面の仕上がりが悪いのです。

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冷間鍛造とは?

都合上、温間鍛造の前に、先に冷間鍛造の説明をします。

 

冷間鍛造は名称に「冷」という漢字がついていますが、冷却して行う鍛造ではなく、常温で行う鍛造のことです。

 

金属って常温のままだと、固いですよね。

それをそのまま、無理やりドン!!と叩いて変形させるのが冷間鍛造なんです。

 

冷間鍛造のメリットとデメリット

常温で鍛造するため、固い金属を押しつぶしたり引き延ばしたりするのに、かなりの力が必要です。

しかも、あまりに無茶をすると金属が割れたりすることもあります。

 

そのため、通常、冷間鍛造では多段階鍛造をすることが多い。

1回の鍛造で製品を仕上げてしまうのではなく、複数回のステップに分けて形を整えていくということです。

 

つまり、それだけ金型の種類も必要になるということなので、金型費用が高額になります。

また、金型に使用する素材も耐摩耗や耐衝撃性の高い金属を使う必要があり、ハイス鋼、超硬など加工性の悪い素材を使います。

 

それでもやはり限界があるので、熱間鍛造や温間鍛造に比べると冷間鍛造ではあまり複雑すぎるものは作れないです。

あと、大型部品も無理です。

普通に考えて、でっかい部品を常温で叩いて成型するのは想像できないでしょ?

基本的には、ネジ・ボルト・ナットのような小物部品に適用されます。

 

 

これらの制限がある一方、冷間鍛造では「金型寸法=製品寸法」と言ってもよいほど、製品精度が高い。

熱間や温間のように高温にさらすことがないので、表面にスケールが浮き出てきたりすることもありません。

なので、製品表面はきれいに仕上がります。

 

ものによっては、鍛造品そのものが製品として使えるものが結構あります。

熱間鍛造だと、ほとんどで切削加工を入れないといけなかったこととは対照的ですね。

 

温間鍛造とは?

熱間が1000~1200℃なら、温間は300~800℃くらいです。

温間とありますが、室温ではないです(笑)

結構高温ですね。

 

温間は熱間のように、再結晶温度(柔らかくなる温度)以下で行われます。

熱間鍛造は製品の寸法精度があまりよくないと書きましたが、この問題を解決するために行われるのが温間です。

 

冷間鍛造ほどではありませんが、そこそこ精度が良く、冷間鍛造ではできないような複雑な形状も対応できます。

冷間鍛造と温間鍛造の中間と思ってください。

 

まとめ

以上、熱間鍛造、温間鍛造、冷間鍛造の違いを紹介しました。

もしも、鍛造用の部品図面を見る機会があれば、それらの公差をよく見てください。

 

冷間鍛造用の金型部品になると、0.01mmじゃなくて0.001mmレベルで精度要求してくるものもあります。

かなり厳しいです(汗)

 

あなたが普段加工している部品は、どんなところで使われるものでしょうね?

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