部品加工図には穴加工の指示があり、大きく分けて3種類の穴があるということをこの記事では紹介します。
機械加工であける穴は趣味のDIYで適当にドリルであける穴とは違います。
部品加工依頼をするときには、区別して加工指示が出せるようになるとトラブル回避になりますので覚えておいてください。
キリ(ドリル)で開けるだけのバカ穴と言われる『穴』
部品加工において、穴加工のところを「適当にお願いします」って言われることはありませんが、「ただの穴やで」というようなニュアンスを言われることはあります。
これは、もう「バカ穴」でいいんだなって解釈をします。
そこになにかキッチリした物がはまり込むとかではなく、ただ穴が開いていればいいんだねってこと。
ここで言う「バカ穴」とは、いわゆるキリ(ドリル)でズコッと開けた穴のことを指します。
『穴なんて、どれもキリで開けるもんじゃないの?』
そう思いますが、穴の開け方も色々あります。
大きな穴になると、レーザーやウォーターカッターで切ったり、最初に小さめのキリで開けた後にワイヤー放電など他の機械を使って穴を広げていくとか、刃物で切り落とすとかね。
でも、ただのバカ穴はキリで開けるのがほとんど。
図面には「Φ8キリ」なんて書き方をします。
もちろん、深さを指定する時には「深さ10」とか「貫通」というコメントがついています。
何も明記していない場合は「貫通」とみなします。
図面に記載する寸法数字には特別長さの単位は記入しません。
寸法単位は全て「ミリ」が基本であり、センチメートルでもメートルでもありません。
キリ穴の用途は空気穴、ボルトを通すための穴やその他精度が不要な穴に適用します。
ボルトで留めるためのザグリ(座ぐり)穴、皿ネジで留めるための皿モミ穴
バカ穴には他にも種類があって、六角レンチやドライバーで締めこむネジの頭部分を沈めるタイプの穴があります。
こんな感じです。
引用元:www.sonic-eng.co.jp
要するに、キリで開けたバカ穴の上にさらに大きめの穴を一定の深さまで加工した穴です。
図の左側をザグリ穴、右側を皿モミ穴と呼び六角穴が付いたボルトや皿ネジで留める時にネジの頭が固定部から飛び出さないようにするための加工方法です。
その時、注意しておきたいのはどのサイズのネジを使用するのかってことによってザグリ加工の決まりがあります。
例えば、「M8ザグリ」って図面に書いてあれば、M8用のボルト穴(ザグリ穴)を加工してくださいってこと。
キリ穴の大きさとか、ザグリ穴の大きさは一切記載されていません。
えっ?どうするの?と初心者さんなら思うかもしれませんが、M8ザグリはΦ9キリ、Φ14ザグリ深さ8とか。
ただし、客先の要望によってボルト頭が飛び出ないように深めにザグリ穴を加工しておいてくださいと言われることもあります。
sponsored link「はめあい」などが大事になる精度の高い穴
穴にも色々あって、シャフトなど棒状の軸をはめる穴もあります。
そんな穴は軸を入れた時にあまりにガタガタだと困るんですね。
やっぱり、軸がはまった時に「あそび」が少ないキチッとした穴が必要になることもあります。
こうした寸法精度の高い穴の加工はキリ(ドリル)では難しいのです。
ボーリング加工、放電加工などで寸法精度を出しますが、当然、加工代は高くなりますし時間もかかってしまいます。
特に熱処理工程のある部品では熱処理後に穴変形が起こるので、あらかじめ荒加工で少し小さめの穴加工をしておいて、熱処理が終わってから穴加工の最終仕上げをします。
図面には、そういった加工手順なんてどこにも記載されていないので、熱処理前に仕上げてしまう初心者さんは多いです。
それで、先輩や上司にめちゃくちゃ怒られるんですよね・・・
材料(材質)は何か?
熱処理はあるのか?
こうしたことは、加工する前にチェックするのは基本中の基本ですから、忘れないようにしましょう!
このように穴と軸のはめ具合のことを「はめあい」と言いますが、はめあいにも種類があって軸を穴に入れた後に軸をスライドさせたり回転させたりすることがある場合、軸を穴にはめた後は動かすことも外すこともない場合の大きく2つに大別できます。
前者を「隙間ばめ」、後者を「しまりばめ」と呼び、隙間ばめでは穴の径が軸の径よりも大きく加工し、しまりばめでは逆に穴の径を軸の径よりも小さく加工します。
隙間ばめ、しまりばめっていう穴の種類があるんだよってことを知っていればよくて、どれくらいの精度でつくらないといけないとか細かいことはお客さんや上司と直接相談するべきでしょう。
あとは、精度が必要になるのがノックピンの穴などもあります。
2種類の部品を合わせる時、位置合わせが重要な部品はノックピンを入れて位置合わせします。
そのノックピンの穴精度は0.01mm単位で管理しないといけない。
そういったピン穴はワイヤー加工、放電加工、リーマ加工、ボーリング加工など方法は色々とありますので、部品形状に合わせて加工されます。
タップ加工で開けるネジ穴
タップとはネジ穴加工のことです。
ネジには色々と規格がありますが、もしも何か現物品があって、そのネジと同じネジの加工をしてほしいけどネジ規格が分からない・・・
ということがあるならば、簡易的ではありますが「ネジ規格の調べ方」も参考にしてください。
先ほど、ボルトネジを留めるための穴(ザグリ穴)について書きましたが、ザグリ穴は言わばボルトを入れるための穴。
ネジ穴はボルトを締めるための穴です。
ちょっと文章で説明しにくいな・・・
ま、分かりますよね!!(^^;)
なので、ネジ穴の加工(タップ加工)をしてほしい時には、例えば「M8ネジ」と図面に書いてあるわけです。
タップ加工の深さ指定をしたい場合は「深さ10」とか記載されていますので、この場合ならば有効深さが10であると認識してください。
何も書かない場合は、貫通とみなします。
貫通できないような深さだと、別途、問い合わせしておくといいですよ。
もしも、アルミ部品でネジ加工指示を出す場合、ヘリサートというものを挿入するべきかどうかも考えておきましょう。
ヘリサート(インサート)というのは、アルミや樹脂などの柔らかい部品のネジ部に入れるコイル状のもので、Amazonでも売っています。
ステンレス製やスチール製のネジ・ボルトをアルミや樹脂のネジ穴に入れて、ネジを強く引っ張るとアルミや樹脂はボルトよりも柔らかいのでネジ山がつぶれたりすることがあります。
あるいは、ネジを締めたり緩めたりを頻繁に行う場合も、ネジ山が摩耗して弱くなります。
それを防ぐために、スチール製やステンレス製のコイルをネジ穴に挿入するんです。
ヘリサートを挿入する場合は、普通のタップ加工ではなくてヘリサートタップと呼ばれるタップでネジ加工してヘリサートを挿入します。
この時、ヘリサートの長さを示す「D」の指定をすることを忘れないように。
まとめ
穴を開けると言っても用途によって、その加工方法や寸法精度というのは様々です。
何に使う穴なのかが分かれば一番よいですが、なかなかそういうわけにもいかないですね。
なので、材料のことや熱処理のこと、そして穴精度のことなども見るようにしましょう。
穴やネジ加工というのは、結構トラブルの多い加工になりますのでご注意を!!