金属部品加工の世界には図面に記載する寸法の単位に一定のルールが存在します。
それは、普段私たちがものさしを使ったりして計る長さの単位がcm(センチメートル)やm(メートル)が多いのに対して、日本の部品加工ではmm(ミリメートル)単位を使用しているということです。
欧米では「inch(インチ)」を使用します。(1inch=25.4mm)
海外製の製品カタログを見たりする場合はその寸法単位に注意が必要です。
意外と盲点になるこの寸法単位に注意しておきたいところです。
部品加工の図面に書く数字に単位は記入しない
インターネットの検索で色々と町工場で個人からの金属部品加工依頼を受けてくれそうな会社を探し、やっとここかなぁと思った会社に打診する時は結構ドキドキすると思います。
会社のホームページの問い合わせフォームの欄に一生懸命に書いて、いざ「送信ボタン」をクリックするのさえちょっとためらう場合もあるでしょう。
でも、そんなのおかまいなしにどんどん聞けばいい。
そもそも、加工ができるかどうかなんて見てもらわない限りわかりませんから。
弊社でも色々と相談を受けますが、正直なところ対応できる内容は3割くらいですよ。。。
面倒だから無視するとか、ちょっとややこしいからパスとかはしません。
でも、どうしても出来ないなぁというような弊社や弊社の協力会社では難しいものに関してはお断りさせて頂いております。
さて、そんなこんなで勇気をふりしぼって問い合わせをした後、町工場から「図面を見せてください」と返答があった時にあなたが渡す図面は今一度見直さないといけません。
図面ですから、もちろん寸法は記載していると思いますが、その寸法数字に単位は記入しません。
加えて、寸法数字の単位は暗黙のルールでmm(ミリメートル)であると覚えておこう。
例を挙げてみよう。
数字に一切寸法単位が記載されていませんが、これは20cm x 50cmではありません。
20mm x 50mmです。
さらに、補足ですが数字の横に±0.05とか、0.00+0.1と書かれているのは、寸法公差のことです。
50(±0.05)だと、50mmに対して-0.05mm~+0.05mmまでOKですよって意味です。
なので、49.95~50.05mmの範囲で寸法が入っていればOK。
また、20(0~+0.1)というのは、同じように寸法が20~20.1mmの範囲におさまっていればOKという意味です。
よく、これをcm(センチメートル)単位の認識で書いてこられる方もいますが、加工屋では絶対にcm(センチメートル)だと認識しません。
よほど「何かおかしいぞ?」と思えないかぎりは。
なので、十分に注意しましょう。
寸法単位の勘違いが招くトラブルの可能性
これは実際に弊社への問い合わせであったことだが、とある個人様から「iPadスタンド」と書かれた図面を頂き、見積もりをすることになりました。
個人使用するのか、製品として販売したいのかまでは伺っていなかったのですが、ここでも寸法公差の問題でおかしなことになったのです。
私たちは図面の数字を見ると単位はmm(ミリメートル)だという無意識に判断するクセがついてしまっています。
なので、今回頂いた図面も全てmm(ミリメートル)単位で加工方法とか、表面処理とか材料代なども含めて考えて見積もりを提出したのです。
でも、見積もりを提示する前に図面に違和感を感じたのは、それが3mm x 10mm x 30mmくらいのサイズだったと思いますが、スタンドにしてはやけに小さいなぁと思ったこと。
ちなみに、分かりやすいようにcm(センチメートル)単位に直すと
0.3cm x 1cm x 3cm
どう考えてもおかしい(笑)
で、一応、メールで相談者様にcm(センチメートル)単位で寸法を記載されていませんか?と確認しておいたのです。
そんな小さいものに iPadが立てかけられるわけないですよ。
ミニチュアか?とも思いましたが、いやいや。。。
で、結局、相談者様はcm単位ですってことで、再見積もりすることに。
材料代も表面処理代も加工代も全て変わってきます。
単純にサイズは10倍になるわけですからね。
だから、本当は「3x10x30」ではなく「30x100x300」と寸法数字は記載しないといけなかったってことです。
今回はすぐに気付きましたけど、もし別の案件等で何も気付かずに加工依頼を出し、出来上がってきたものを見て愕然としたらどうします?
こんなミニチュア頼んでないし!!って憤慨する前に、図面の寸法単位を見直そう。