SCM材とSNCM材の違いと使い分け

部品加工の基礎

金属部品加工を経験すると様々な材料に触れる機会があります。

非鉄金属を除けば、SS400、S45C、S50Cなどが多いかもしれません。

その中でSCMSNCMという材料も見たことがあるのではないでしょうか。

 

SCMは通称「クロモリ」と呼ぶこともありますが、SNCMとの違いは?使い分けは?

このような質問を受けた時に困ってしまうことのないように、ある程度の基礎知識を身につけておきたいものです。

そうすれば、仕事の相談をしてくれるお客様からの信頼も得られやすく、新しい案件の受注にもつながるというものですから。


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SCM材とSNCM材の成分的な違い

SCM材は鉄に炭素を混ぜた炭素鋼にCr(クロム)とMo(モリブデン)をさらに少量添加したものであり、炭素鋼よりも熱処理が容易に管理できるようにしたもので、通称「クロモリ」と呼ばれている材料です。

 

SNCM材はさらにNi(ニッケル)を添加することで、焼入硬化性や靭性を高めています。

ただし、Niが少し高価であるため材料コストは若干高め。

 

SCM材もSNCM材も原則として焼入れをして使用します。

ただ、全体焼入れをするのか浸炭焼入れをするのかについての違いもあるので注意しよう。

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では次に、Niが含まれるか含まれないかの成分差でどのように使い分けが必要になるのかについて簡単に説明していきます。

SC材とSCM、SNCM材の熱処理から見た使い分け

S45CやS50Cなどを構造用炭素鋼と呼び、部品加工で最もよく使われる鋼材の1つです。

S〇〇Cの「〇〇」に表記されている数字は炭素量を表しており、熱処理による焼入れ硬度は炭素量が多くなるほど高く設定できます。

 

しかし、構造用炭素鋼ではその鋼材の大きさによって熱処理の安定性が変化します。

そのため、熱処理の安定性が必要な大きな部品では炭素鋼ではなくSCM材やSNCM材を使用することになります。

詳しい理由を知るためには、まず炭素鋼を焼入れするとはどういうことかも簡単に知っておきましょう。

 

炭素鋼の焼入れとは

炭素鋼において、焼入れ前の金属結晶(金属組織)は柔らかい鉄(フェライト)と鉄と炭素が結合した硬い組織(セメンタイト)がまばらに分布した状態にあります。

この状態から熱処理で高温にするとオーステナイトと呼ばれる炭素が均一に分布した状態の組織に変化します。

 

ここから急冷することで、炭素が均一に分布した状態の硬い金属組織マルテンサイトが出来上がります。

ちなみに、急冷せずにゆっくり冷やすと炭素がまばらに分布した状態に戻ります。

 

マルテンサイトになった金属組織は硬いのですが、一方で脆いため機械部品としてはそのまま使用することができません(圧力や衝撃で割れてしまうため)。

そのため、焼き戻しという工程をいれることで金属の靭性を高めます。

もちろん、硬度は少し下がりますが「焼入れ」と「焼き戻し」は基本的にセットで行うと考えておかなければなりません。

 

ただし、炭素鋼の場合は高温で得たオーステナイト組織からマルテンサイト組織を得るための臨界冷却速度(どれだけ速く冷却するかの度合い)が大きいため、急速に冷やさないといけません。そのため、構造用炭素鋼では鋼材のサイズが大きくなると水で急冷しても十分に焼きが入らない(マルテンサイトにならない)のです。

 

構造用炭素鋼では熱処理の安定性が大きさによって変化するというのは、こういう意味なのです。

一方、SCMやSNCMなどCr(クロム)、Mo(モリブデン)、Ni(ニッケル)等の元素を多く含ませた金属では臨海冷却速度が低下するので、大きな鋼材でも焼入れが容易になります。

そういったことから、構造用炭素鋼との熱処理の安定性からみた使い分けができるということになります。

 

機械的性質からみたSCMとSNCMの使い分け

SCM材とSNCM材は成分が非常によく似ており、焼入れによる安定性や靭性や耐衝撃性という機械的性質が優れているため、自動車部品やボルト・ナット、シャフト(軸)などに多用されます。

SCM材は自転車のフレームにも使われることがあり、アルミフレームと比べると重さはあるものの衝撃などを吸収するため愛好家は多い。

 

その上で、SCM材とSNCM材の違いを挙げるとすれば、Ni(ニッケル)が含まれるSNCM材の方がより焼入硬化性と靭性が高いと言えることです。

いずれも強度の高度な調整が必要になる航空部品などにもよく使われますが、一般的な感覚で使い分けするとするならば過酷な条件下で使用するならSCM材よりもSNCM材を選択すればよいのではないでしょうか。

 

まとめ

結局のところ、構造用炭素鋼では一定の大きさを超えると十分に安定した焼入れ処理ができなくなるため、代わりにSCM材を使用することになります。

構造用炭素鋼に比べて熱処理の安定性と引張強度などが高くなるため機能性としては良い。

さらに、高価なNi(ニッケル)を含んだSNCM材はSCM材よりも高硬度、高靭性を得やすいため、過酷な条件下で使用する部品には選択する意味が高いと言えます。

 

理論的には説明できても、実際のところは試してみないとわからないということがよくあります。なので、SCM材かSNCM材かで迷った時はSCM材で試してみると良いのではないでしょうか。

 


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