個人で町工場などに、ワンオフパーツの製作検討を依頼する時には、必ず見積もりをお願いするでしょう?
そして、返ってきた見積もり単価を見て自身の希望金額との乖離にため息がこぼれることもあるのではないだろうか。
しかし「あなたが漏らしたため息」に町工場もため息をついていることを知ってほしい。
あくまでも誤解しないでほしいのですが、個人依頼の見積りだからといって、わざと高い見積り金額を出しているわけではないです。
どうしても高くなってしまう理由があるんですよ・・・
でも、この理由って、あなた次第で実は価格を安くすませられるようになるかもしれないので、是非とも読んでみてください。
部品加工価格の基準は『段取り』
あなたが町工場にワンオフパーツの製作を相談するときに必ず気になるのが加工代ですが、その金額がどのようにして算出されているのかをご存知でしょうか?
例えば、あなたが友人から有償で「折り紙で鶴を100羽折ってくれませんか?」と頼まれたときに幾ら請求しますか?
1羽10円で1000円?
それとも、1羽50円で5000円?
5000円は取りすぎだろうとか、いやいや、そんなもんでしょ~時間かかるしとか。
そう、お金の単価はあなたの基準ですよね。
1000円で受ける人もいれば、5000円じゃないと受けない人もいる。
町工場でも基本的にはこういうことなんですが、それぞれの町工場において金額を算出するに当たって大きなファクターになるのが段取り時間なんです。
1日の労働時間、いわば時給換算するならば段取り時間も加工時間の一部に入るわけです。
ちなみに、段取り時間とは加工物のセッティングやら工具の選定やらのことです。
モノを削り始める前には、かならずセッティングが必要ですが、このセッティングが意外と時間を要することが多い。
(段取り20分、加工時間20分とか)
いつもやっている仕事と同じ(似ている)内容の依頼ならば、段取り時間も少なくて済むので早く終わらせることができます。
「図面がありません」⇒どうやって作ってもらうつもり?
個人依頼でめちゃくちゃ多いのがこれです。。。
現物があるけど、図面が書けないから図面は無しでってやつです。
メールなどの問い合わせで写真だけを送ってくる人。
大きさも材質も何もかもが分からないことだらけで
あれは?これは?ここはどうなってるの?
という質問のやり取りをさんざんした挙句、「現物を送るからそれを見てください」と言われるんです。
けどね。言わせて。
それを見たところで、材質が何かとか分かると思うんでしょうか?
鉄(鋼)って、いくつかの金属元素の合金なので種類いっぱいあるんですよ。
純粋な鉄(Fe)だけで出来てる金属製品ってほとんどないです。
また、現物を見ただけで見積りって言われても、実際に加工する時には図面がいるんです。
設計図無しに家を建てることってできないですよね?
「適当に作りました!!」と言われた家をあなただったら買います??
買わないよね。
じゃあ、図面を描いてよ。
と言われるんですけど、図面を描く手間についてはそれをサービスの一環として受けている加工屋さんもありますが、そうでない加工屋さんもあります。
どちらが正しいとかは無いですけど、製図でお金を貰っている製図会社が独立してあるくらいなので、無料が当たり前だとは思わないようにした方がいいです。
つまり、図面も何もないということは、見積り価格が高くなる原因でもあるので、自分で描いてみるということにトライしてみてください。
どうしても無理という場合は、ココナラとかクラウドワークスで製図を安く受けている個人さんがいたりするので探してみよう。
個人だから高いという認識は間違っている
よく、町工場へワンオフパーツの製作を依頼したらぼったくりやった!という話を聞くことがある。
しかし、それが本当にぼったくりかどうかは知りませんが基本的に個人と町工場で価格に対する認識のズレは大きいように思える。
前もって伝えておくが、個人に対しても真っ当に商売をしている町工場において「個人だから」高くするということはない。
前述の通り、基本的には段取り時間や加工内容、数量を吟味して価格計算をするからだ。
だから、あなたが町工場から提示された金額は町工場の世界の金額なのです。
違う土俵の人間をあなたの土俵に上げて叩くのは、ただのイジメだ。
依頼する側であるなら、少なくとも相手の土俵に上がるべきだろう。
個人依頼者が町工場から提示される加工金額が高いと思ってしまうその大きな理由は、ホームセンターや百円均一の店でそこそこのクオリティの商品が数百円という金額で購入できることが挙げられる。
しかし、そういった商品は決してワンオフではない。
大量生産品である。
専用の機械設備を数百万円、数千万円かけて投資し、数百円の商品を大量に作って資金回収をしているのだ。
あなたが見ようとしている町工場とは全く世界が違うところで作られているモノなのだ。
だから、それらと同じ価格基準で町工場にワンオフパーツの相談をしてはいけない。
町工場における部品加工の価格基準になるもの
町工場で部品加工をする時に絶対的に必要になるものはある。
工作機械、工具、切削油などの消耗品
これらについては、基本的には加工代に大きく繁栄されることはない。
よほど特別な工具を使わないと加工できないようなものであれば、別途工具購入代金を請求されることもあろうが稀。
個人依頼のワンオフパーツで最も関係してくるのは以下の項目だ。
段取り時間・加工時間・人件費・材料費
町工場も会社である。
基本的には時給換算して売り上げを考える。
あなたが依頼しているワンオフパーツがいったい、どれくらいの時間をかけてできるかがポイントなのだ。
先ほどの折鶴の話に戻してみよう。
あなたが折鶴100羽を折るのに4時間かかるとする(1羽2分ちょいかかる計算)。
そこで、1000円の報酬を貰えるなら時給250円だ。
5000円の報酬を貰えるなら1250円。
このように計算した場合。
時給750円で計算すると、100羽の折鶴の見積もりは3000円が妥当というわけだ。
(これが人件費・加工時間に相当する)
細かい話になると、そこに折り紙100枚の代金を仮に200円とすると合計が3200円。(材料代)
さらには、折り紙を購入しに行く時間も計算するともう少し欲しいと思うかもしれない。(段取り時間)
ひっくるめて、あなたがやっぱり5000円だと決めたときに依頼者が「高すぎる!」と文句を言ったらどうでしょう?
町工場の気持ちは少し理解してもらえるだろうか?
「端材で作ってくれ」は禁物
たまに個人依頼において「余った材料を使ってくれていいから」という声もある。
正直、その余った材料も商品の1つなんだよ!!
そう叫びたい。
安く作ってねという気持ちは分かりますし、少しでも協力したいと思いますが、これは本当に町工場に言ってはいけないフレーズです。
材料をどうするかは、町工場が決めること。
あなたが決めることではない。
あなたが決めたかったら、材料を用意して「これで作ってくれ」と頼みに行くべきだ。
結構な無茶を要求していませんか?
図面も用意した、材質も決めた。
じゃあ、正式な見積りをください。
というところまではよいのですが、図面の内容を見たら超難易度が高いものだったりします。
何をもって難易度が高いかどうかは加工会社によって異なりますが、その会社では対応が難しいものだったりすると、何とかして加工しようと工夫したりして価格が高くなることがあります。
決してぼったくっているわけではなく、たまたま、その会社では難しいものだったのかもしれないと思ってください。
例えば、1mmくらいしか厚みのない旋盤加工品とか。
長さが2mもあるような長い部品だったりとか。
本来は鍛造品とか鋳造品、あるいは3Dプリンターで作るものであって、刃物で削れないような形状だったりとか。
要素は色々あります。
なので「作れるでしょう?」という先入観を持たずに問い合わせしましょう。
ワンオフパーツが高くなる理由まとめ
ワンオフパーツが高くなるその正当な理由は「高い」と思うあなたの心境に依存するところが少なからずあるということ。
もちろん、本当に高いぼったくり町工場もないとは言い切れませんが、単価にいちゃもんはつけない方がよい。
値切り交渉も成功する確率は低いと思ってください。
予算があるなら、最初に伝えておけば割かし協力的になってくれる町工場は多い。
まず、高い安いと言う前に加工をしてくれそうな町工場を見つけることが先決ではありますがね。。。
そして、せめて図面の用意だけは何とか頑張ってしてください。