金属部品加工でも特にフライス加工をする場合に絶対に必要になるのが、エンドミルという刃物。
ドリルに見た目は少し似ていますが、ドリルは穴を開けるために使う工具。
エンドミルは工具の側面もしくは底面で加工物を切る刃物です。
エンドミルには主に以下の種類のものがあります。
- スクエアエンドミル(フラットエンドミル)
- ラジアスエンドミル
- ボールエンドミル
- ラフィングエンドミル
- テーパエンドミル
とりわけ個人でちょっとした加工をするために、卓上のミニフライス盤を数万円で購入される方もいますが、肝心となる工具の選別に悩むことがあると思います。
エンドミル1つにしても、ネットショップを見ると色々なメーカーから色々なタイプの刃物が売られているので、どう使い分けするのか疑問に感じることもあるでしょう。
町工場では専門の工具問屋から購入することが多いですが、ネットショップなどから購入することもあるように、一般向け・専門向けという区別はありません。
だからこそ、趣味の一環でフライス加工を自分でやってみようという人でも問題なく使える工具が手軽に購入できるということでもあるのです。
その時には、超基本となることさえ押さえておけば問題なく使い分けられるはずです。
ここでは、フライス加工で使用するエンドミルという切削工具の超基本的な使い分けを書いてみますので、個人で購入を考えている方は参考にしてください。
ラフィングエンドミル
もはや「荒削り用」と「仕上げ用」という言葉で超基本は片付いてしまいますが、本当にこれに尽きます。
金属って基本的には硬いですよね。
柔らかいと言われるアルミでさえも、ブロックを素手でバキバキ割れる人なんていないですし。
だから金属を削るのは、さらに硬い金属。
それが刃物。
実際に一般的なエンドミルを見てみよう。
まずは、荒削り用のエンドミル(ラフィングエンドミル)。
刃先がギザギザになっているのがわかると思います。
これは、切削抵抗を少なくするための形状。
加工物に接触する刃先の面積を少なくすることで、ザクザクと削ることができるのです。
エンドミルの素材には、ハイス鋼と超硬の大きく2つのタイプに分かれますが、現在では超硬素材のエンドミルが主流となっています。
価格もずいぶんと安く抑えられているので、うちの会社ではミスミの超硬ラフィングエンドミルを荒加工に使用しています。
フラットエンドミル(スクエアエンドミル)
一般的によく見るエンドミル(スクエアエンドミル)はこちら。
荒削り用と違って、刃先が真っ直ぐですね。
切削した面をキレイに仕上げるためのエンドミルです。
もしも、この仕上げ用のエンドミルで鉄などをいきなりザクザクと削ろうとすると、切削抵抗が大き過ぎて刃物が折れてしまうこともありますので、削りシロが残り1mm以下くらいになってから使ったりすることが多いですね。
もちろん、剛性強化されたエンドミルの場合だと荒加工にも使う場合があります。
メーカーが出している切削条件を見ながら加工してみて確認するのが一番です。
特にアルミなどの柔らかい金属や樹脂ならば、荒削り用を使わなくてもサクサクと削れますので加工する材質によっても使い分けをします。
この他にも、中仕上げ用のエンドミルというのもありますけれど、それは使わなくても特別問題はありません。
ラフィングエンドミルで削ってから、仕上げ用のエンドミルで仕上げればよい。
中仕上げ用のエンドミルを使えば、仕上げ用のエンドミルで削る量が減るため刃先摩耗が軽減されるメリットはあります。
コーティング付きエンドミル
刃物の耐摩耗性を向上させるためにエンドミルにコーティングを施したものが多くあります。
先端が金色になっていますが、これは刃物をPVD(Physical Vapor Deposition)コーティングしたものです。
PVDについては別記事で紹介していますので、ここでは詳しく書きませんが、刃物を窒素などと反応させて表面に硬い窒化物の被膜を形成させているのです。
加工する金属によっては、ハイス製のエンドミルでは切削が困難であったり、すぐに摩耗して切れなくなったりするものもあります。
例えば、ALBC(アルミ製銅合金)や焼入れしたダイス鋼(SKD11, SKD61 など)、インコネルなどが挙げられます。
また、ステンレスも難切削の部類に入るものがあります。
ハイス製のエンドミルでは削りにくいものについては、超硬エンドミルを使用することもある。
こちらは、色が少し黒っぽいですがすごく硬い金属(超硬合金)で作られた刃物です。
ハイス製のエンドミルと比べると高硬度を示し、硬い金属でも削ることができますしビビりが少なくなります。
ビビりとは、刃物のしなりなどによって加工面が波打ったように凸凹になってしまうことを指します。
超硬は硬くてしなりが少ないためにビビりにくく、仕上げ面が綺麗になるのです。
価格も普通のハイス製のエンドミルと比べると高価ですが、中には低価格のものも出てきたし、ロングスパンで見れば刃物の持ちがよいため、コストは結果的に安く収まることもある。
なので、最近では超硬エンドミルが主流になっていると思います。
ちなみに、超硬合金は金属の粉を焼き固めたもの(焼結)で重い。
例えば、Φ12mmのハイス製のスクエアエンドミルの重さを測ったものがこちら。
こちらが、ほぼ同じ大きさのΦ12mmの超硬エンドミルの重さ。
外径も長さもほぼ同じものなのに50gほどの差がある。
超硬エンドミルの方が重いのです。
別に重いから何だってわけではないのですが、超硬エンドミルかハイスエンドミルかを区別する一種の基準みたいにしているところがあります。
sponsored link刃物形状による分類
ここまでは刃底が真っすぐになっているフラットエンドミルを例に挙げてきましたが、他にも刃先が丸くなっているボールエンドミルがあります。
ボールエンドミルは刃先が丸くなっているので、注意しないといけないのが周速度ゼロが存在するということです。
周速度ゼロというのは、ボールエンドミルをどれだけ回転させても先端は周速がゼロになりますよということです。
詳しくは別記事で記載していますので参照してください。
他には刃先に小さいRがついたラジアスエンドミルもあります。
ボールエンドミルとは違って、刃先にRがついているので溝加工をするときに使用すると溝Rが簡単に入れられます。
他にも、刃の形がテーパーになっているテーパーエンドミルや刃先の裏の溝にアタリが付けられたエンドミルなどもあります。
刃数によるエンドミルの使い分け
エンドミルを使い分ける時に大事なポイントの1つに刃数があります。
エンドミルには2枚刃、3枚刃、4枚刃、6枚刃がありますが、それぞれをどのように使い分けるべきかも考えないといけません。
刃数が少ないほどチップポケットと呼ばれる切りくずを排出する溝が大きくなる一方で、エンドミルの芯部の太さが細くなるので弱くなります。
刃数が増えれば芯部が太くなりますが、チップポケットが小さくなるので切りくずの排出性が悪くなります。
こうした特徴をどのような加工に活かすべきかについては、別記事「エンドミルの2枚刃と4枚刃の違いと使い分け」で記載していますので参照してください。
エンドミルの超基本のまとめ
エンドミルは荒削り用として、切削抵抗が少ないラフィングエンドミルと、切削面が綺麗に仕上がるスクエアエンドミルがあり、灘削材を削る場合は、コーティング刃物や超硬エンドミルを使用すれば加工性が向上します。
刃物には刃長が色々とありますが、最低限の長さのものにしておくことでビビりや刃物の折れなどが少なくなりますので、自分が必要とする長さのものを選ぶようにしよう。