『多条ねじ』とは何か?

部品加工の基礎

ネジはあらゆる機械部品(機械要素?)のなかで最も多く使われています。

身の回りにはネジだらけです。

 

そのネジのなかでも『多条ねじ』と呼ばれる種類のネジがあります。

普段は特に気にすることもなく見る機会もないので、機械加工を始めたばかりの人や、普段はあまりネジ加工に携わることのない人が初めて聞くと想像できないかもしれません。

 

そんなあなたのために、ここでは、多条ねじとは何かについて簡単に説明します。

多条ねじの「条」とはネジ山のこと

ネジ山が1本のネジを「一条ねじ」、ネジ山が2本のネジを「二条ねじ」と言います。

一般的には条数(ネジ山の数)を「n」で表記します。

例:n=1 ならば一条

 

普段よく使うであろう、Mねじは一条ねじです。

M6 x P1.0 も1つのネジ山からなります。

 

Pというのはピッチのことで、隣り合うネジ山の間の距離のことを指します。

なので、P1.0ならばネジ山とネジ山の間が1mmになっているネジです。

 

そして、ネジを一回転させたときに移動する距離のことをリード(lead)と呼び、「l(エル)」で表します。

リード(l)=ピッチ(p) x 条数(n) 

なのでネジのピッチと条数からリードが計算できます。

 

ここで気付くのは、ピッチが同じでも条数が増えるとリードが伸びる。

つまり、ネジが一回転したときに進む距離が伸びるということです。

何故、条数が増えるとリードが伸びるのか?

多条ネジの話をすると、初心者さんのなかにはこの理屈がイマイチ理解できない人もいます。

そこで、簡単な絵で説明します。

下手くそですけど、1本のネジだと思ってください。

1本のネジ山がグルグルと螺旋を巻いているので、一条ねじ。

数字の「1」はピッチです。

つまり、ネジが一回転すると1mm動くというネジです。(リードは1)

 

これが二条ねじになると

赤と黒の螺旋は別々のネジ山だと思ってください。

2つのネジ山が交互に螺旋を巻いています。

ピッチは1で変わらないとすると、赤と黒のネジ山の間が1mmということになります。

 

※ネジピッチはあくまでも、山と山の間の距離なので隣り合うネジ山の距離のことを指します。

 

ということは、黒のネジ山だけに注目すると1回転で進む距離(リード)は2倍になっていますね。

これが、リード=ピッチ x 条数 という計算式になるのです。

 

三条ねじになった場合、同じくピッチが1で変わらないならば、1回転で進む距離は3倍になります。

一方で仮に三条ねじでもピッチを1/3にしたら一回転で移動する距離に変化はありません。

もう分かりますよね?

 

さらに、Mネジでも並目と細目がありますが、細目ネジはピッチが短いネジのことです。

条数が変わらないまま、ピッチが短くなるということは一回転で進む距離が短くなるということです。

また、並目と比べて細目ネジでは同じ長さのボルトでもネジ数が多くなるので、よりしっかりとガタがなく締結することができます。

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どんなところで使われているのか?

多条ねじは少ない回転数でより移動距離を伸ばすために使われます。

例えば、カメラのレンズの望遠部分とか、食料品の蓋、工作機械のボールねじ、あるいは車のトランスミッションにも使われています。

 

実は色々なところで使われています。

 

時々、多条ねじの締結力はどうなんですか?

という質問にぶつかることがありますが、基本的に多条ネジの目的はモノを締め付けることに使うわけではないです。

どちらかというと、モノを動かすために使うネジなので締結力は注視されることはありません。

 

あと、多条ねじは何条まで作れるのか?という疑問が出てくるかもしれませんが、私が今までに見たことがあるのは16条ねじくらいまでですね。

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