部品加工の指示図面にたまに「ステ研」という文字が書かれていることがあります。
特に研磨工程の指示書に書かれていることが多いようですが、初心者さんにとっては「??」かもしれません。
ステ研?なんじゃそりゃ。
ステータスの高い研磨?(ますます意味分からん・・・)
特殊な研磨剤を使う研磨?
頭の中がぐるぐる回るかもしれないですね(笑)
結論から言うと、ステ研とは加工基準面を作るという意味で寸法精度を出しやすくするための工程の1つで、加工基準面を作るための研磨のことを指します。
あるいは、加工工程上、研磨しておくと後工程がやりやすくなるという意味でもステ研します。
とにかく、ステ研の有無で加工のしやすさがすごく変わります。
加工精度を出しやすくするための工程が”ステ研”
部品加工では、図面指示通りに狙った寸法をバシッと出して加工したいですよね。(というかしないといけない)
しかし、部品の加工状態や工程によっては加工精度が出しにくい場合もあります。
例えば、熱処理した部品があったとします。
熱処理をすると金属部品のほとんどは歪が生じる。
しかし、加工図面では平行度や直角度が0.05と記載されているので、このままでは精度保証ができない。
そんな時に、必要な面の平行度や直角度を出すために指示は無いけれども他の面を軽く研磨することをステ研と言います。
下の画像の場合なら、①の面をステ研した後、①の面を基準にして他の面の加工を行って直角度を出していきます。
つまり、最初に基準となる面を「ステ研しておく」と私たちはよく言います。
他にも、円筒研磨でステ研指示があることも多々。
その場合、回転軸がズレないように研磨しておけば後々楽になるという意味が多い。
研磨工程の後に、フライス加工でキー溝加工をする場合も平行出し、芯出しがしやすくなります。
ステ研は「捨て研」とも書くようですが、「前工程の研磨」という意味と考える方がよいのではないかと思います。
なので、ステ研した面を最後の最後に寸法を出すために仕上げ研磨することもたまにあります。
ステ研は必ずしも必須ではない
ちなみにですが、ステ研というのは製品精度が出せるのであれば必ずしも必要ありません。
ステ研と言えども、研磨工程が1つ増えるわけですから時間が余分にかかります。
例えば、直角度も平行度も出ていない黒皮素材をバイスやチャックで掴み、底面以外を1発で仕上げてしまいます。
その後、加工品を外して裏返し、切削面を基準に加工すればステ研なんて必要ないですよね。
(ただし、刃物で削れる硬さのものに限られる)
つまり、複数の工程に分けて加工せざるを得ない場合には、ステ研が必要になることが多いということです。
1台の機械で1工程で終わるような加工品にはステ研というものは必要ない。
sponsored link中国製部品の多くはステ研をしている!?
私は中国の加工メーカーに依頼して部品加工をしてもらうことが多いです。
日々、中国製の部品を見るわけですが、中国製はステ研が多いです。
指示の無い面も研磨していることがほとんど。
日本製だと、まず研磨することないのに・・・という箇所も研磨してあったりします。
なので、見た目はすごくきれいです。(寸法精度は別問題)
以前、知り合いに「中国製って、なんであんなに研磨してるん?」と聞かれたことがあります。
必要のない部分まで余計に研磨してあるからでしょうね。
研磨してはダメというわけではないので、全然問題ないけれども我々からしたら「研磨代が余計にかかってしまうやん」と思ってしまうわけです。
しかし、実情は違うようです。
実際に、中国の加工メーカーの社長さんから聞いた話があります。
加工技術レベルの低い作業者が大量にいるとステ研が必須??
「ステ研をしておかないと、NGが出やすいし加工時間が多くかかってしまうんですよ」
と説明を受けました。
社長さん曰く、加工技術者のほとんどは経験の浅い作業者ばかりで、その理由は中国の部品加工業界の背景にあるようです。
というのも、部品加工代が安いのは中国でも人件費が比較的安い地域になります。
そういった地域では、加工者募集をかけても経験者が応募してくる数は少ないらしい。
かといって、熟練者が時間をかけて毎日教えたところで、すぐに辞めて他の仕事に転職するようです。
この仕事は自分に向いているかな?と考えるよりも「給料をたくさんもらえる仕事」を選ぶため、仕事の内容をあまり深く考えないらしい。
そうすると、結局は就職しても「この仕事は大変だな、辞めよう」となるわけです。
なので、会社としてはできるだけ単調作業になるように、難しい仕事にならないように計らっておかないといけない。
部品加工では精度を出さないといけないわけですから、基準面となるステ研が中国の加工メーカーでは必須となるみたいです。
あとは、見た目の問題もあるとのこと。
「日本は品質・外観にうるさい国だから、できるだけ研磨してキレイにしておかないとクレームが来るでしょう?」
とも言われました。
この発言には何とも言えない気持ちです。
よい塩梅というのが中国メーカーに説明できん。。。
まとめ
以上、ステ研のことについて書いてみましたがいかがでしたでしょうか?
うちの会社ではステ研の意味はそうじゃない!!
という意見もあるかもしれません。
しかし、おおよそはここで書いたようなことだと思います。
もしも「ステ研」という言葉を見つけたら、あぁ、基準面を作るんだなという感じで思っておけばいいかも。