部品加工の依頼を受ける時にどうにもこうにも加工が難しい案件というものは多々ある。
とりわけエンドミルという刃物を使った加工においては、その刃物の形状による加工制限を受けます。
実際に工場の現場で部品加工をしてみないと分からないことが多いのはごもっともであり、専門的な常識を素人に押し付けるのは良くない。
良くないけど「少し」は知っていてもらえると有難いのが本音でもあります。
部品加工用の図面を送ってくれる中で「ポケット加工の隅」は特に意識せずに描かれることが多く、ちょっとしたことで加工代が高くなってしまったりもする。
もちろん打開策、妥協案はあるので、この際、それを知ったうえで加工依頼をするとよい。
ポケット加工の隅とは
ポケット加工の隅とは赤線で引いた部分のことを指します。
この絵では隅(角部)がきっちりと90°になっています(これを「ピンカド」と呼ぶ)。
ところが、このように金属に四角のポケットを彫り込む時にエンドミルを使用した場合は、実際のところこのようなピンカドの形をしたポケットにはなりません。
エンドミルが円柱状の形をしているのでポケットの隅が丸くなるのです。
エンドミルで加工をするということは、最小でもエンドミルの径の分だけ隅が丸くなるのです。
ポケットの隅が丸くなってしまうということは、もしも、このポケットにブロックをはめることを想定していたら、ブロックの角がポケットの丸くなった部分に引っかかって絶対にはまりません。
この場合の打開策の1つは、ポケットにはめるブロックの四隅にC面をつけておくことです。
そうすれば、入るはず。
実はブロックが入るようにする打開策は他にもあるので、それを次に紹介していきます。
最近の機械はテーブルもヘッドも自由に動かせるタイプが多くなってきているので、そういった機械を使う場合は刃先が三角形になっているエンドミルを用いることで、隅をピンカドに加工することはできます。
でも、どこの町工場でもそんな機械があるわけではないので、基本的には隅に丸みができると思っておいた方が良い。
加工したポケットに四角いブロックを入れる方法
ポケット加工をエンドミルで行った場合、隅に丸みがついてしまうがそこに四角いブロックをはめこみたい場合は工夫が必要です。
はめるブロックには手を加えたくないのであれば、ポケットの方に細工をしないといけません。
ここでは、その方法例を紹介します。
ポケットの角部にヌスミを入れる
角ばったブロックをポケットに入れたければ、ポケットの角部を少しエグるように加工してやればよいのです。
それを「ヌスミを入れる」と言います。
ヌスミの入れ方は大方、この2通りです。
このようにポケット加工をする時にヌスミを入れておけば、ブロックが入るようになる。
ポケットにヌスミを入れる加工方法を選んでも問題ない場合は、断然この方が加工単価が安く収まる。
でも、どうしてもポケットの隅は丸くなってはいけないし、ヌスミも入れて欲しくないという時には、最終手段は放電加工だ。
放電加工は銅(あるいは銅とタングステンの合金)で加工したいポケットの形に作った電極と呼ばれるものを専用の機械に設置し、電気を流しながら加工物(金属)に当てて溶かしていく方法です。
電極を押し付けて加工物を溶かして形を作るので、電極の形通りにポケットが加工できる。
なので、ポケットの隅もしっかりと丸みのないものが出来上がるわけです。
問題はコスト。かなり高くなる。
それを知らない人が加工見積もりの金額を見て「ぼったくりや!!」と言うのはよくある話です。
ポケット加工を頼む時の注意点「まとめ」
ポケット加工をする使用目的は何かを考え、もしも中にブロックをはめこむ場合は隅にヌスミを入れることを考えてみよう。
もしも、それが使用上妥協できないのであれば、加工代が高額になることを覚悟しないといけない。
また、強度が必要になる部品の場合は、あえて角部を丸めるた方が良いこともある。
ピンカドにしておくと、負荷がかかった時にそこから割れる恐れがあるからです。
いずれにせよ、隅部の丸みは念頭に入れておくべし。