金属粉末射出成型(MIM)とは?普通の焼結とは違う?

町工場

金属部品加工と聞いた時、あなたはどんなことを想像するでしょうか。

切削加工、鍛造、鋳造、溶接、プレスなど色々ありますが、最近ですと金属3Dプリンターが期待されつつありますね。

 

3Dプリンターはホビー用品なら、なんと安いもので5万円以下で買えてしまうようになりました。

こうした3Dプリンターでは材料を溶かして積層していく方法でパーツを作り上げるのがほとんどなので、溶けやすい樹脂(プラスチック)やゴムが材料として使えるのが主流です。

 

そんな中、レーザー照射で金属の粉末を溶かす技術と組み合わせた金属用の3Dプリンターもあります。

複雑な金型などを3Dプリンターで作ろうという試みは以前から耳にしていました。

 

これからの時代は3Dプリンターだ!

 

なんて声も多いようですが、まだまだ実用性と普及性に乏しいのが現状。

設備も高価ですから投資対象にはなりにくいですしね。

 

そんな3Dプリンターとは全く別の方法で、同じく複雑な形状を作り上げることができ、なおかつ量産まで可能という技術があります。

それが、金属粉末射出成型です。

Metal Injection Molding を略して MIM (ミム)と書くことが多い。

 

MIMを知っている人のなかには、普通の焼結と何が違うの?と思っている人がいるようなので、ここで説明しようかなと思います。

金属粉末射出成型(MIM)とは?普通の金属粉の焼結じゃないの?

金属粉末射出成型(MIM)は簡単に言えば、金属の粉を金型に押し込んだ後に焼いて固める手法です。

 

よく比較されるのが同じく金型を使用する鋳造とか鍛造ですね。

鋳造は金型に溶かした金属を流し込んだ後、冷やして固める手法。

鍛造は金属の塊を金型で挟み込み、プレスして引き延ばすことで形作る手法。

 

似てるようで、全く違います。

 

また、金属の粉を焼き固める焼結とも比較されますが、それもちょっと違います。

 

射出成型という技法はプラスチック製品の量産などによく使われており、溶かした樹脂を金型に射出充填することで製品を作るので、形状の自由度が非常に高いのが特徴です。

その利点を生かして、難加工剤の成型に使ったのが金属粉末射出成型です。

 

もう少し具体的に示すと、金属の粉末と樹脂を混ぜて金型の中に射出成型します。

金属の粉末だけでは、固まらないので ”つなぎ” の役割を果たす樹脂を混ぜているのです。

 

一度、金型の中に充填した金属粉末と樹脂の混合物に脱脂処理を加えて樹脂を取り除きます。

この段階では、まだ柔らかいので熱を加えて焼結すると、高精度な金属部品が出来上がります。

 

鋳造と大きく異なるのは、金属粉末射出成型では金属を溶融させないということ。

鋳造のデメリットは、金属の塊(インゴット)を金型に流し込むためには溶かさないといけないということで、時には流し込んだ時に ”巣” と呼ばれる空気穴みたなものが製品の中にできてしまうこともあります。

 

また、鋳造はどうしても製品精度がよくありません。

ロストワックスと呼ばれる手法は比較的高精度の鋳造法ですが、それでも±0.1mm以上の誤差が出ることはよくあります。

 

それに比べると、金属粉末射出成型は高精度ですし、ロットごとの品質のばらつきも少ないメリットがあります。

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MIMは難溶性のチタンやステンレスにも利用できる

錆びない、軽い、高強度ということで使用される機会が増えているチタンや昔から広く使われているステンレスは加工性が悪いということで有名です。

いわゆる難削材ですね。

 

専門の加工会社があるほどで、特にチタンは融点が1,670℃と非常に高い。

鋳造するのも大変なのです。

どう大変なのかというと、鋳造に使われる型(鋳型)の温度が幅はありますがだいたい800℃くらいで使用します。

そこに1,670℃もの溶かしたチタンを流し込んだらどうなるか?

 

鋳型と接触したところから、瞬間的に凝固していきます。

なので、型の中を完全に隙間なく溶けたチタンで埋め込むのが難しいのです。

(巣ができてしまう)

 

ところが、金属粉末射出成型では高温にして溶かす必要がないので、鋳造ほど ”巣” の心配はいらないということですね。

 

さらに、メリットはチタンやステンレスなどの難削製品を大量生産できるということです。

しかも、肉厚の薄いものでも関係なくバンバン作れるということ。

すごく小さいものや、薄いもの、形状が複雑なものほど有用性が高いです。

 

最終的には、研磨やラップ(磨き)などが必要になることもありますが、大幅に機械加工を減らすことができる金属粉末射出成型は今後も広く使われるようになるでしょうね。

 

金属粉末射出成型(MIM)が威力を発揮するのは?

金属粉末射出成型は今後も期待される技術の1つですが、デメリットはコストが高いということ。

自社で新たに設備を導入してというのは、中小零細企業では現実的でないかもしれません。

 

しかし、製品形状によってはチタンのような難削材だと、切削して形をつくることが難しいものも多々ある。

特に医療用の部品はチタンが多く、切削するには小さすぎるものも。

そうなると、MIMの出番です。

 

MIMを使えば問題なく製作できます。

台湾や中国では、MIMをやっている業者がたくさんあります。

コストも日本よりも安いので、世界中から引き合いがあるみたいですよ。

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