焼きなましと焼きならしの区別は熱処理のことをよく知らないと難しいかもしれないが、炭素鋼においてはしばしば行うことであり、よく聞くことでもあるので知っておいた方が良いことには間違いありません。
ザクっと言ってしまえば、いずれも金属を柔らかくする処理のことですが、ここでは、この2つの違いを説明します。
焼きならし(焼準)
圧延や鍛造、鋳造などの過程で生じた内部応力を除去し、肥大化した金属の結晶粒を微細化、均一化して靭性や機械的性質の改善を目的として行う焼入れ。
800~900℃くらいに加熱して大気中で空冷します。
焼きなまし(焼鈍)
焼きなましは焼鈍(しょうどん)とも言います。
焼きならしと同じように金属組織を調整(組織の均一化)して、残留応力を除去したり、熱処理で硬くし過ぎた材料を柔らかくしたりする(軟化)させることを目的としています。
それぞれの目的に応じて加熱温度が異なります。
応力除去
金属材料の内部応力は時として非常に厄介なものとして語られます。
冷間加工、鋳造の金属凝固の過程や刃物による金属切削、砥石による研削、焼入れや溶接などの熱によっても残留応力が生じてしまいます。
残留応力があると、金属加工で大きな歪みが出て加工精度が保証できなくなったり、長期放置すると金属変形や寸法変化が起こって問題になったりもします。
そのため、残留応力を除去するために焼なましをします。
よくあるのは、溶接をする製缶品やガス切溶断材や調質材の購入をする場合に焼なましの指定をします。
焼なましをしておかないと、製缶品は溶接後の機械加工で加工歪が大きくなりすぎて製品を完成させられないこともあるし、ガス切溶断品も機械加工をしていくとどんどん歪みが出て加工精度を出せなくなったりします。
応力除去には金属の結晶構造が変化しない400~600℃で加熱し、ゆっくりと冷却していきます。
金属軟化
軟化焼きなまし、中間焼きなましとも言いますが、冷間加工や機械切削加工をすることで金属の硬化が起こったりすることがあります。
金属硬化が起こるとその後の加工が非常にやりづらくなるので、焼きなましをして金属を柔らかくすることがあります。
加熱温度は600~650℃くらいです。
sponsored link焼きなましで金属はどれくらい柔らかくなるのか?
焼きなましをすればどんな材料でも柔らかくなって削りやすくなるのか?というと、実はそうでもない。
金属成分の差によっては、焼きなましをしてもそんなに柔らかくならないものもある。
普段、「生材」として購入する材料が多くあると思うが、それらのほとんどはすでに焼きなまし済みのものだと考えていい。
だけども、金属の種類によって削りやすい・削りにくいというものがあるはずです。
ハイス鋼よりもダイス鋼が削りやすいし、ダイス鋼よりもS45Cのほうが削りやすい。
もちろん、それぞれの鋼材に含まれる元素に起因するところが大きいですけどね。
実感としては、普段から削り慣れているものによって変わるかもしれないが、理屈的には金属組成の差が被切削性を変えていると思えばいい。