リーマ加工の依頼はあまり加工法に固執してはいけない

加工のこと

金属部品加工に関する様々なご依頼を法人・個人問わず日々頂いている中でどうも認識がビミョーじゃないかな?と思うことの1つに「リーマ加工」がありまして、今回は部品加工を依頼する前にちょっと一息ついてから図面のリーマ加工指示部分を見直すポイントをご説明したいと思います。

 

このページをご覧頂いている方はもちろん「リーマ加工」のことが何かさっぱり分からないということがないとは思いますが、一応、超簡潔に後ほど説明しておきますので安心して読み進めてください。

 

リーマ加工に限らず、様々な部品加工技術において、金属加工業界に所属し働く人すべてがプロだというわけではありませんし、それぞれの会社でそれぞれのノウハウがあったり、やり方(加工方法)があったりもします。

もちろん、そろえている工具の問題上で加工方法の選択肢が限られている場合だってある。

 

なので、金属加工に従事する者同士でも「この方法が正しいぞ!」「いやいや、お前何言ってんの?違うだろバカ!」とかいう小さな言い争いは実のところ、ちょいちょいあるのですが、加工依頼をする側に立ってみればそんなことはどうでもよい。

だって、キチンと使える物を作ってもらえることが最終目的ですからね。

 

バイク用ナビ取りつけ部品だとか、スマホケース、iPadケース、何かのスタンドなど部品というより、そのものが単独で製品として機能するものは外観(見た目)もキレイにしないといけませんが、それはメッキや塗装、その他サンドブラストなどの表面処理にて最終処理するのが一般的ですから、加工段階で大きな傷等が無い限りは問題にはなりません。

 

さて、問題の「リーマ加工」ですが、あなたが加工依頼を出す時に ”とりあえず” でリーマ加工指示を出しているとしたら、そこは見直す必要があるかもしれませんので、このページで基礎の基礎範囲おさえておくべきことを説明します。



リーマ加工で求めることができる寸法公差

 

まず「リーマ加工」の指示を出す時に注意することを書く前に、リーマ加工が何かを超簡潔に説明すると、精度の必要な穴加工をするということだけです。

リーマ加工をした穴が何に使われるのかというと、多くの場合は位置決め用のピンを入れたりします。

 

ミスミやモノタロウといったネット通販でも購入できる「ノックピン」と呼ばれる規定の寸法にそろえられたピンが市販で売られています。

それをリーマ加工した穴に突っ込んで使用するのです。

 

例えば、同じサイズの金属板が2枚あったとします。

この2枚をピッタリと0.1mm以下の誤差内で重ねて動かないようにする場合などに、ノックピンは使用されます。

 

まず、2枚の金属板それぞれに工作機械で正確に同じ位置にリーマ加工をします。

そして、1枚のリーマ加工した穴にノックピンを打ち込み(あるいは差し込み)、もう1枚のリーマ穴にピンが入るように重ねるとピッタリと誤差なく済みます。

この時、リーマ穴は1枚の板につき2か所は必要です。

 

1か所だけだと、その穴に差し込んだピンを起点にクルクル回ってしまいます。

 

ほとんどの場合、リーマ加工はストレート穴が多いですが、中にはテーパリーマと呼ばれる円錐状になった穴を仕上げるものもあります。

私に限ってかもしれませんが、円錐状の穴は正直なところ別の加工方法で対処することが多いので、テーパリーマを使用することはあまりありません。

 

個人依頼のレベルでも、あまりテーパリーマ加工指示を出すことも稀だろうと思いますし、ここでは「リーマ加工」をストレートリーマ加工に限定して話しを進めますので悪しからず。

 

リーマ加工で認識される寸法公差は?

一般的かどうかは断言できませんが、リーマ加工で要求される寸法公差の認識にはプロの中でも少しずつ異なります。

超ハイレベルな加工技術を持つ職人さんが加工した場合と、一定のノウハウに基づいてセミプロレベルの職人さんが加工した場合、同じリーマ加工でも品質の安定性とか寸法公差の範囲とかに差がでます。

 

それでも、私たち町工場の人間がたぶん一般的には ”これくらい” でしょ、と思う寸法公差範囲というものはあります。

教科書的なものに書いてあることが、必ずしも現場でその通りに動いているとは限らないのと同様に、会社ごと、現場ごとにリーマ加工の加工手順とか寸法許容範囲が微妙に違うのも加味しないと、加工依頼を出す段階でリーマ加工に求める要求レベルを上げてしまうことになりかねません。

 

そうなると、加工屋さんから「それは無理」とか「図面がおかしい」とか色々文句を言われてしまうのです。

 

なので、安全パイなリーマ加工で求める寸法公差は穴径によっても若干誤差はありますが、概ね「0~+0.03mm」くらいです。

いやいや「0~+0.015mm」やで!と仰る方もいるでしょうけれど、あくまでも安全パイです。

 

例えば、直径8mmのリーマ加工をして下さいと指示を出した場合、仕上がってくる穴の寸法は8.00~8.03mmにおさまっているということです。

これが8.05mmくらいになると、ちょっとアウトですね。

 

なぜか。

ノックピンを差し込んだ時にスカスカになって、ノックピンの役目を果たさなくなるから。

(品物によっては許容される場合もあります)

 

穴のはめあいっていうのは、0.01mmレベルの世界で大きく変わります。

日常のセンチメートル単位では考えられないレベルかもしれませんが、それが部品の可動性とか寿命を左右したりもするのです。

 

寸法許容範囲ってことについては、別記事でも書いていますので参考にしてください。

 

ま、とりあえず使えるか使えないのかをご自身で最終判断をしてください。

闇雲に公差が0.01mm外れているからダメだ!!って怒らないようにお願いします(笑)

これは加工屋からのお願いでもある。。。

 

 

その「リーマ加工」指示は変だよ!って言われないために気をつけること

 

リーマ加工というのが、一定の寸法公差範囲内の穴を加工することだという説明はしました。

その認識を持っているがために面白い?指示を出してくださる個人客も見受けられます。

 

リーマ加工は基本的に手軽にそこそこ精度良く穴を仕上げるための加工法です。

だけど、リーマ加工でせいぜい対応するのは直径13mmくらいの穴までです。

 

会社によっては直径20mmでもリーマ加工されるかもしれませんが、弊社ではしません。

 

ましてや30mmとか40mmは間違いなくリーマ加工なんてしません。

そもそも、工具すらない。

リーマ加工の代わりに、エンドミルで加工したり、ボーリング加工をしたり、ホーニング加工、ワイヤー加工、放電加工など色々と手段はあります。

その品物の形や大きさ、材質、加工穴の深さなども加味して加工法を選びます。

 

なので、何でもかんでも精度のいる穴なら「リーマ加工」って書けばいいってもんじゃないのです。

そこは気をつけよう。

 

なので、直径が14mmを超えるくらいになれば、いっそのこと「リーマ加工」と書かずに寸法公差を書けば良い。(例. 0~+0.03)

もちろん、その時も先ほどのリーマ加工で出せる安全パイな寸法公差を参考にしてほしい。

あまりにも寸法公差を厳しく指定していくと、当然加工賃は高くなるので。

 

時々、ありとあらゆるところに寸法公差±0.05mmとか書いている部品加工依頼の図面を頂くことがありますが、かなり厳しい値段になることを覚悟しないといけない。

ましてや、場合によっては検査(寸法チェック)すらできない場合もあるので、その時は丁重にお断りさせて頂く。

 

リーマ加工に頼らない加工方法もある

 

穴加工をする時の加工方法に選択しはいくつかあります。

リーマ加工はその中の1つであって、それ以上でもそれ以下でもない。

 

数ある選択しの1つです。

 

なので、あまりリーマ加工に固執して加工依頼を出そうとしない方がよいです。

 

では、実際にリーマ加工と同等レベルの穴加工を別の手段を用いてするケースについて列挙してみよう。

これを参考に加工依頼を出す時には考えてみてください。

きっと、話しがスムーズに進むようになると思います。

 

 

深い穴のリーマ加工

穴と言ってもその種類は色々あります。

穴の大きさもそうですが、もう1つ重要なのは穴の深さです。

 

1mm、10mm、30mm、100mm・・・

 

ご自身がどのレベルの穴を所望されるかによるのですが、あまりに深い穴の場合はリーマ加工を避けることが多いです。

というのも、まずはリーマそのものの刃長の問題もあります。

 

リーマを販売しているメーカーによっても、リーマの種類によっても有効刃長は異なりますが、50mm、60mmレベルになると加工者によってはリーマが加工中に折れてしまうこともあるのです。

 

使用している切削油や工作機械、切削条件といったいくつかの要因によってリーマが折れる、折れないが分かれます。

 

穴が深くなればなるほど切りカスが刃と刃の間に詰まりやすくなりますし、深い穴の途中で切りカスが噛んでしまうと容易にポキッとリーマが折れてしまいます。

あるいは、折れなくても切りカスが噛むことで精度の悪い穴になってしまうこともあります。

 

もちろん、そういったことを防ぐためにも荒下穴、中下穴、仕上げ(リーマ)という工程で加工するのですが、あまり深い穴の場合はワイヤー加工や放電加工を選択することもあります。

その方が品質の安定性は高いので。

 

 

止まり穴のリーマ加工

私事ですけど、リーマ加工の中でこの「止まり穴」の加工が最も嫌いな加工の1つなんです(笑)

 

リーマ工具の中には「止まり穴用」っていうのもあるのですが、穴に底があるだけにリーマの突っ込み量を間違えると一発でボキッて折ってしまいかねない心配があるのです。

そんなことはないと言えばそうかもしれませんが、やっぱりちょっとね。

そこは、まだまだ私が未熟なだけかもしれませんが、必ずしもリーマで加工しなくても同じ品質の穴加工ができれば問題ないわけです。

 

止まり穴でそんなに深くない穴の場合、方法は2つ。

仕上げる穴の径よりも小径のエンドミルでクルクルと円を描いて切削加工する方法。

もう1つは、新品のエンドミルをリーマの代わりに突っ込むかです。

 

注意しないといけないのは、新品のエンドミルが必ずしも寸法公差0ではないこと。

例えば、直径8mmの新品のエンドミルを購入して直径を測定すると、8.01~8.02mmだったり、逆に7.98~7.99mmだったりするってことです。

なので、リーマ加工同等レベルに仕上げるためには、代わりに使うエンドミルも選ばないといけないってことです。

 

変則的ですけれど、少し使い古した(へたった)エンドミルをあえて使うなんてことも、場合によってはあるのです。

 

止まり穴にノックピンを入れる時の注意点

止まり穴の加工依頼をして、そこに市販のノックピンを入れようと思う時に注意しておくべきことがあります。

非常に単純なことですけれど、ついついスルーしてしまうので書いておきます。

 

それは空気穴です。

 

精度よく加工された止まり穴にノックピンを差し込むと、当然ですがノックピンと止まり穴の底の間に準密閉空間ができます(厳密には密閉ではないけど)。

そうすると、ノックピンを差し込んだ時に中に溜まった空気によって押し戻されてしまいます。

ギュッと押し続けたりすると、ジワジワと空気が抜けてノックピンが入りますけど、できれば空気穴がほしいところ。

 

ノックピンに一筋ヤスリ等でへこみを入れるだけでも空気穴になりますし、リーマ穴の底に小さい穴をあけたり、リーマ穴の底付近に横から小さい空気穴を入れる方法もあります。

 

 

焼入れした硬い材料へのリーマ穴加工

金属は種類によって焼入れという処理をすることもあります。

焼入れをすると、金属はカチコチに硬くなりますが、それと同時に歪みも出てきます。

 

特に、リーマ穴のように寸法公差が0.02mmレベルの範囲だと、穴径によっては簡単に変寸してノックピンが入らないなんてことも生じる。

なので、公差レベルの厳しい穴は基本的に焼入れが終わってから最終的に仕上げます。

 

ところが、焼入れをした金属はそう簡単に刃物で削れるものではなく、リーマ加工が難しくなってしまうのです。

よって、焼入れした金属へのリーマ加工指示は現実的には別の加工方法にて対応することになります。

 

最も多いのは、ワイヤー加工と放電加工ですね。

これらの加工は電気を通す金属であれば、基本的には硬さに関係なく加工できますので多用されます。

ただ、コスト的には高くなるので注意が必要。

 

またまた、変則的ではありますが、エンドミル刃物の中には「超硬(ちょうこう)」と呼ばれる非常に硬い金属で作られたものがあり、それを用いて穴径を仕上げることもあります。

その時に注意するのは、仕上げ径よりも小さい径の超硬エンドミルでクルクル円を描いて加工することです。

 

超硬エンドミルは横からの力には強いのですが、縦方向からの力にはあまり強くなく、すぐに欠けてしまいます。

なので、8mmの仕上げ穴を加工しようと思って8mmの超硬エンドミルを突っ込むのはあまりよろしくないのです。

ま、この話は作業者向けですけどね。

 

 

リーマ加工指示を出すときの注意点のまとめ

さて、ここまでリーマ加工に関する基本中の基本的なことだけをサラリと書いてみましたが、実際に部品加工依頼をする時に「リーマ加工」と指示するのか、寸法公差を記入するのかについては、仕上げる穴径でまずは区別されると良いでしょう。

 

私の感覚的には直径14mmを超える場合は寸法公差を記入するようにするべきかと思います。

 

また、穴の深さや止まりか貫通か、素材は何か(焼入れがあるのかないのか)も含めて考えてみてください。

ナイロン系の素材でも一応はリーマ加工は可能ですが、非金属系の加工は非金属専門に加工されている会社様にお願いするのが一番です。

ノウハウが金属加工とは違いますから。

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