マシニングとNCフライスに違いってあるの?
呼び方が違うだけかと思っている初心者さんも多いはず。
ちなみにNCとは「Numerical Control=数値制御」の略で、マシニングはMCと略すことがあります。
本稿ではマシニングとは何か?ということを紹介します。
マシニング加工とNCフライス加工との違い
マシニングセンタは切削工具を使って金属や樹脂などの材料を削るための工作機械で、汎用フライス盤との違いは加工プログラムを入力すれば複数の加工工程を自動で加工をしてくれるということ。
そのため、マシニングセンタを導入することで夜中に無人でも加工を進めることができるので時間の節約と生産性の向上のメリットがあるんです。
あるいは、複数のワーク(加工物)を同時にセットして1回の加工プログラムで行うことも可能です。
ただし、加工プログラムを間違えていたりすると、切削工具が加工部品に衝突して大惨事になったりNG品ができてしまったりするという注意点がある。
一方でNCフライスはマシニングとはちょっと違います。
NCフライスも加工プログラムを入力して動かせば自動で切削加工をするので、マシニングもNCも同じように考えている初心者さんも多いですが、両者には決定的な違いとしてツール交換装置の有無が挙げられます。
マシニングセンタにはATC(Automatic Tool Changer)と呼ばれる自動で工具交換する装置が必ずついていますが、NCフライスにはATCはありません。
工具交換装置が付いていないNCフライス加工をするメリットとしては、手動で加工もできるので汎用フライス盤のように使うこともできるということ。
ちょっとした簡単な修正加工とか、手直し加工をしないといけない時などは加工プログラムを作ってわざわざマシニングで加工するよりも、すばやく対応できます。
これから新しく機械を導入する場合は、ほとんどの会社がより複雑な加工にも対応できるようマシニングを選ぶと思いますし、工作機械メーカーもNCフライスよりもマシニングに力を入れているはず。
ただ、マシニングにもNCフライスにも使い勝手に違いがあるので弊社では両方を併用しています。
sponsored linkマシニングセンターの種類
マシニングセンターには大きく分けて4つの種類があります。
- 縦型マシニングセンタ
- 横型マシニングセンタ
- 門型マシニングセンタ
- 5軸マシニングセンタ
縦形マシニングセンタ
切削工具(主軸)が上から下に向けて垂直(地面に対して垂直)に取り付けられているのが縦型マシニングセンタです。
機械テーブルに対して上から刃物が降りてくる構造になっているので、コンパクトな構造にすることが可能。
そのため、すごく小さいマシニングセンタもあります。
ただし、切り屑が加工物の上に溜まって切削刃物の邪魔をすることがあるので、大量に切り屑が出るような加工の場合は切り屑を時々エアーなどで除去しながら進めないと刃物の破損や製品に傷が付いたりすることもあります。
横型マシニングセンタ
ワークに対して刃物が横向き(地面に水平)に付いているのが横型マシニングセンタ。
横向きに工具が付いているメリットは、切り屑が加工物の上に溜まりにくいということ。
長時間の加工でも切り屑が溜まる心配も少なく、安心して放ったらかしにできます。
門型マシニングセンタ
門型というのは、その名の通り加工物を置くテーブルをまたいで門の形のアームが設置されている機械です。
こちらも、フライス盤なので加工物をテーブルに固定し、回転工具を当てて加工します。
門型加工機は五面加工機とも言います。
五面加工機の「五面」というのは四角いブロックをテーブルに置いたら、テーブルとの接地面以外の五面を段取り変え無しで加工できることからそう呼びます。
門型加工機の工具が取り付けられているヘッド部分は、常に下を向いているわけではなく、横を向いたり斜めになったりもできるように可動部があります。
だから、五面加工ができるんですね。
2m、4mという大型サイズの部品などは、門型の機械で加工することが一般的です。
ちなみに、5面加工機と5軸加工機は異なるものですので間違いのないように。
5軸マシニングセンタ
(参照:DMG MORI)
マシニングセンタでは加工軸の数によって加工できる形状の制限が解放されます。
例えば、3軸加工だとXYZ(縦・横・高さ)だけしか動かないけれども、5軸加工の場合はXYZAC(縦・横・高さ・横回転・縦回転)といった感じで加工軸が増えます。
機械テーブルが回転するタイプや工具を取り付けるヘッドが倒れるタイプがありますが、多軸であるという理屈は同じです。
5軸加工のメリットは
- 段取りが換えが少なくて済む
- 専用治具が不要になることがある
- ボールエンドミルの周速度ゼロを回避することができる
- 刃物の突き出し量を少なくすることができる
- 複雑な形状も加工可能になることが多い
といったことが挙げられます。
マシニング加工の精度
マシニング加工で対応できる加工精度ってどれくらいなのか気になりますよね。
マシニングの精度を決めるのは、主軸の芯振れとテーブルなどの駆動装置の正確さです。
テーブルの駆動をボールねじで行うのかリニアで行うのかによっても、機械の性能が変わります。
⇒マシニングセンタの【ボールねじ駆動】【リニアモーター駆動】の違い
とは言え、マシニングの種類(メーカーなど)や使用する工具によっても異なりますが、概ね0.001~0.01mmくらいは可能と言われています。
特に0.01mm以下の寸法になると超精密加工の部類に入ると言ってよい。
寸法を測定する道具も通常のノギスやマイクロメーターでは難しくなってきますので、三次元測定機や画像測定器なども活用しないといけません。
それに、1/1000 mm単位になると、もはや温度管理をしないと熱膨張率が高い金属などは簡単に寸法が変わりますので「20℃管理での寸法保証」というような条件を付けておくことが大事です。
マシニング加工に必要なもの
マシニング加工で必要になるのは、エンドミルやドリルのような加工工具はもちろんのことですが
芯出しバー(あるいはタッチセンサー)やCAD/CAMも必要になります。
部品加工においては、機械原点と製品の加工原点を一致させておくことが必須となります。
なので、必ず加工前には芯出しを行わないとダメ。
芯出しを適当にしてしまうと、不良品が出来上がってしまうのでフライス加工初心者の人はしっかりと注意しましょう。
⇒芯出しを制する者はフライス加工を制する!初心者はよく聞け!
もう1つ必要になるのがCAD/CAMです。
加工プログラムを作るためのソフトでパソコンを使います。
加工プログラムではGコードといった専用のコードが使われますが、細かいコードは全部覚える必要はありませんが基本的なコードは覚えておいた方がよいかと思います。
⇒全くの新人はマシニングセンタの加工プログラムをどこまで理解すべき?
最近のマシニングセンタには簡易CADが内蔵されていて、CADデータを取り込めばマシニングの操作画面上で簡単な加工プログラムが作れるものもあります。
しかし、作れるデータには限界があって3Dモデルを使った3次元加工のような複雑な加工プログラムは作れません。
やはり、複雑な加工はCAD/CAMソフトを使って加工プログラムを作るのが一般的です。
CAD/CAMソフトはいくつものメーカーが販売しているのですが、どのメーカーのソフトが良いのかという点については、価格と使いやすさによると思いますので一概には断定できないです。
ソフトあるいはソフトのグレードによって2次元加工、2.5次元加工、3次元加工のうち、どこまで対応できるかが変わることがほとんど。
ちなみに、CADとCAMは別物ですからご注意ください。
マシニング加工の手順
マシニング加工をするためには、まずCAD/CAMで加工プログラムを作成します。
作成した加工プログラムはフラッシュメモリーなどの媒体を介して機械に読み込ませるか、無線LANでパソコンから直接マシニングに送るなどします。
加工プログラムを機械に読み込ませたら、材料を機械テーブルにセット。
バイスで挟んだり、クランプ治具を使ってテーブルに材料が動かないよう固定してから芯出しを行います。
芯出しが終わったら、使用する工具の工具径補正(実際にどれくらいの大きさの工具であるかを機械に入力する作業)と高さ補正(実際にどれくらいの刃長が工具ホルダーが出ているかを機械に入力する作業)を行って初めて加工プログラムを実行することができます。
加工プログラムを起動したら、あとは加工が終わるのを待つだけです。
まとめ
マシニングのこと理解できたでしょうか?
現在では、フライス加工においてマシニングセンタは超重要かつ主流の工作機械です。
汎用フライス盤だけでは加工できないような曲線輪郭や曲面のある部品もマシニングがあれば簡単に加工できますし、量産加工もマシニングで加工プログラムを繰り返すだけで可能になります。
昔々は回転テーブルを使ったり、品物を傾けるための加工治具があったりしましたが、マシニング(特に5軸加工機)が出てからは使わなくなった治具も多く存在します。
今後、フライス加工の職人を目指したい人はCAD/CAMの使い方を覚え、マシニングが使えるようになることを強くおススメします。
実際に加工会社に入社してから覚えることも多いですが、職人不足が叫ばれている昨今では難しい加工ができるよう技術を磨いていくと、スカウトもされるし高収入も目指せますよ!