部品加工の表面処理に『黒染め』と『パーカー(パーカーライジング)』があって、何が違うのか?という疑問を持ったりすることがあると思います。
どっちも同じことでしょ?
と思っている人がけっこういますが、実は全く異なる処理なんです。
もちろん、パーカー処理と図面に書いてあっても、黒染めで代用OKとしてくれるお客さんがほとんどですが、ここでは一応、両者の違いについて紹介しておきます。
黒染めは四三酸化鉄処理(しさんさんかてつしょり)
黒染めは鉄鋼表面に強アルカリ性の処理液で化生処理することで四三酸化鉄被膜(Fe3O4)を生成する処理のことです。
見た目を黒く光沢を出したいということが主な目的として利用されます。
黒染めの膜厚は0.001~0.002mmくらいであり、処理前後でほとんど変寸しません。
防錆力は決して高いとは言えませんが、素地よりはマシというレベル(気休めレベル)と思っておいたほうがよいです。
ただ、メッキと違って脱膜しないというメリットがあります。
基本的には屋内使用のものに適していて、屋外使用のものにはあまり適しません。
パーカーはリン酸塩皮膜処理(りんさんえんひまくしょり)
日本パーカーライジング社のもので、鉄鋼表面に薄いリン酸塩皮膜を生成する処理のこと。
リン酸塩被膜にも種類があって、リン酸マンガン、リン酸亜鉛、リン酸カルシウム被膜などがありますが、黒染めと違って光沢はなく、むしろ艶消し効果があります。
黒染めよりも防錆効果はそこそこありますが、やはり屋内使用することを前提にした部品に適用します。
パーカー処理の中でもリン酸マンガン被膜は防錆だけでなく耐摩耗性も得られるというメリットがあるので、カムシャフトやピストンなどにも処理を施したりすることがあります。
特にリン酸マンガン被膜処理のことをリューブライト処理と呼びます。
また、パーカーライジングをすると、表面の凸凹がなだらかになり油の浸透性も良くなるので、塗装の前処理として活用されることもあります。
sponsored link黒染めとパーカーの色合いの違い
業者によって色合いの差が出たりすることがありますが、平均的な色合いで言うと黒染めは黒~青っぽい黒という感じです。
一方でパーカーは黒というよりかはグレー(灰色)~茶色っぽい仕上がりになります。
ただし、黒染めは焼入れをした高硬度製品に対しては黒くなりにくく、どちらかと言うと茶色に染まります。
あるいは、うまく染まらないかもしれません。
パーカーは鋳物にもよく処理されますが、鋳物に処理した場合は赤っぽい色に仕上がります。
黒染めとパーカーの使い分け
最後に、黒染めとパーカーの使い分けはどうしたらいいのか?ということについてですが、黒色にしたいだけなら黒染めで十分です。
防錆効果がより欲しいならばパーカー処理をします。
耐摩耗性も欲しいなら、パーカー処理の中のリューブライト処理をすると考えればよいでしょう。