フライス加工の中にはいくつかの種類の溝加工があります。
それぞれの溝加工に合わせた工具を選択することが重要ですが、加工方法は1つとは限りません。
本稿では、フライスの溝加工に関する情報をお伝えしましょう。
アリ溝
このような、ハの字になった溝のことをアリ溝と呼びます。
アリ溝はフライス加工をする場合、アンギュラーカッター(アングルカッター)と呼ばれる工具を使用することになります。
ハの字の部分の角度は45°だったり60°だったりしますし、中途半端な角度設計されている部品もあったりします。
市販工具で販売されていないような中途半端な角度設計をされているアリ溝については、特殊オーダーメイドで工具を作るしかありませんので、加工費よりも工具費にお金がかかってしまうことも多いですね。
製品の大きさや形によっては、アンギュラーカッターではなく、ワイヤー放電加工で加工したりすることも可能です。
T溝
Tスロットナットを入れるための溝であることが多いです。Tスロッターと呼ばれる工具を使って加工するのが一般的です。
もちろん、先ほどのアリ溝でもお伝えしたワイヤー放電加工も可能ですが、コスト面を考えるとTスロッターを使うのがよいでしょう。
T溝の加工手順は、最初にストレートエンドミルで加工してから、T部分をTスロッターで加工します。Tスロッターの柄の部分には刃がついていないので、いきなりTスロッターで加工はできません。
V溝
V溝の加工については、V溝カッターを使うかワイヤー放電加工加工をします。
もしくは加工品を傾けエンドミルで削る方法もあります。
加工物を傾ける方法としては、ヤゲン台のような治具を使用するかヘッドが傾くフライス盤を使えば可能です。あるいは、5軸マシニング加工機のように、ワークテーブルや機械ヘッドが自由に傾けられるものでも同じく可能です。
この方法の問題点として1つ注意しないといけないのは、Vの角度が90°以下だとエンドミルがエンドミルが入らないので無理が生じてしまうという点です。
第3の方法としては、ダブルアングルカッターを使って加工する方法です。
この方法の欠点は、工具長によって加工できる出来ないの制約があるということです。
ダブルアングルカッターの刃の角度は30°、45°、60°と種類があります。
ちなみに、細かいV溝をいくつも続けて加工した面をセレーションと呼ぶこともあります。
U溝
U字型の溝の加工方法はボールエンドミルもしくはワイヤー放電加工になります。
ただし、直径80mmもあるような大きいU字溝になると、市販のボールエンドミルがありません。なので、その場合は適当なサイズのボールエンドミルを使って3次元加工(もしくは2.5次元加工)によって溝加工を行います。
U字ではなく半円形の溝であれば、大きめのブロックに穴加工をしてから半分に割るという方法もあります。U字溝に限らず、製品形状に合わせてどのような加工方法を取ると良いのかを判断するのが技術者の腕の見せ所とも言えますね。
以上、フライス加工で行う代表的な溝加工を紹介しました。
それぞれの形の溝に合わせて使用する工具や加工方法が変わりますので、適切な方法を選び良い製品を作ってもらえることを願います。