今回はタップ加工のネジ深さについてピックアップしてみたいと思います。
弊社でも個人依頼で手書き図面であったり、CADで製図してくれていたり様々頂きます。ただ、どうもタップの深さについては ”あまい” 人が多い印象を受ける。
それはちょっと難しいんじゃない?というような指示をされる方もいる。
ネジは部品加工の中でもトラブルの多い部分でもあるのですが、今回お話する内容は簡単なことですし、少し認識を持っていてくれたら有り難いという加工屋サイドからのお願いでもあります。
タップ加工のネジ深さとは?正しい理解がトラブルを防ぐ
タップ加工は、ネジ穴を形成するために欠かせない加工工程です。しかし、ネジの「有効深さ」を正しく理解していないと、加工トラブルが発生し、結果としてコストや納期に影響を及ぼすことになります。
例えば、「M12のネジを深さ20mmで加工してください」と指示したつもりでも、タップの形状や工具の特性を考慮していないと、実際には適切なネジ深さを確保できないことがあります。
特に、個人で部品加工を依頼する際に間違いやすいのが、図面に記載する「ネジ深さ」の指定方法です。設計上の勘違いから、加工者側が困るような指示になっているケースも少なくありません。
例えば、下穴の深さとタップの深さが同じになっていると、実際の加工では十分なネジ山を形成できず、強度不足や締結不良の原因になります。
この記事では、タップ加工の基本的な仕組みと「有効深さ」の概念を詳しく解説し、適切な指示方法を具体例を交えながら説明していきます。タップ加工の理解を深めることで、よりスムーズな加工依頼が可能になり、仕上がりの精度も向上します。
タップ加工とは?基本の仕組みを押さえよう
タップ加工とは、下穴を開けた後に「タップ」と呼ばれる工具を使い、ネジ山を形成する加工方法です。一般的に、以下のような手順で行われます。
- 下穴の加工 – ネジのサイズに適した直径の下穴をドリルで開ける(例:M12のネジなら下穴は約10.2mm)
- タップの選定 – 加工する材質やネジの種類に応じて適切なタップを選ぶ(先タップ、中タップ、上げタップなど)
- タップ加工 – タップを回転させながらネジ山を形成する。手動の場合はタップレンチ、機械加工ならボール盤やマシニングセンターを使用
使用するタップ例👇
この加工方法は、アルミや鉄、ステンレスなど幅広い素材に適用可能ですが、材質によってはタップが折れやすいものもあります。特に、ステンレスのような硬い材質では、適切な切削油を使用しないとタップの寿命が短くなり、加工不良のリスクが高まります。
また、タップには先端の形状によって「先タップ(ポイントタップ)」「中タップ(プラグタップ)」「上げタップ(ボトムタップ)」の3種類があり、加工するネジ穴の形状によって使い分ける必要があります。例えば、貫通穴には先タップが適しており、止まり穴には上げタップが必要になります。この違いを知らずに適当なタップを選んでしまうと、意図した深さまでネジ山が形成されず、加工不良の原因になります。
【関連】ネジ穴加工に使うタップ(Tap)の種類と使い分けはコレだけ覚えておけばOK
ボール盤という機械でネジを加工する様子の例は以下の動画を見てもらえればわかると思います。
もちろん、マシニングセンターなど他の機械でも同じです。
ネジ加工の有効深さとは?意味と重要性
タップ加工でよくあるトラブルの一つが、「有効深さ」の認識のズレです。
有効深さとは、ネジがしっかりと噛み合い、ボルトが機能するために必要なネジ山の深さのことを指します。例えば、「M12のネジを深さ20mmで加工してください」と依頼した場合、実際にボルトがねじ込める深さが20mmであることを意味します。
しかし、ここで注意しなければならないのは、タップの先端部分は構造上、一定の距離はネジ山が形成されないという点です。例えば、通常のタップを使うと、先端部分は最低でも5~10mm程度のネジ山ができません。つまり、「有効深さ20mm」が必要な場合、実際の加工では25~30mmほどの深さまでタップを突っ込む必要があります。
例えば、こんな指示があった場合。
M12のネジを深さ20で加工してくださいということであり、この ”深さ” というのは ”有効深さ” で認識されます。有効深さというのは、ネジが○○mmの深さまで入ればOKですよ!っていうことです。
有効深さ20ならば、ネジが20mm入れば良いということ。
ここで、何が問題になるのか?
それはタップ(ネジ工具)の先端の形状です。タップの先端は構造上、一定の距離だけネジ山が加工できません。
つまり、仮に20mmの深さのネジ穴を加工しようと思った場合、タップを25~30mmくらいまで余分に突っ込まないと、有効深さ20には届かないということです。
ということは、下穴のドリルも少し深めに入れておかないといけません。
個人依頼でたまにあるのは、タップの有効深さを無視した設計で図面を送ってくださる方です。下穴深さ20mm、タップ深さ20mmという指示があったりもします。
でも、これは現実的には不可能。
ネジ穴加工の指示を図面に書く場合、手っ取り早いのは「M12タップ 有効深さ15」というように、深さを有効深さで示すと、あとは勝手に加工屋が加工をしてくれます。
この時に注意しておきたいのは、目的の有効深さのネジ加工をしてもらう時に下穴加工に問題が生じないかどうかということです。
例えば、これだとどうでしょうか?
厚み40mmの板に、M12のタップを有効深さ37mmで加工してくださいという指示ですね。有効深さが37mmということは、通常ですと42~47mm程度の深さで下穴ドリル加工をします。
でも、この場合は板の厚みが40mmしかありません。下穴を深さ42mmなどで加工しようとすれば、下穴は貫通してしまいます。
ネジの下穴を貫通してほしくなかったら、有効深さを考え直さないといけませんね。
下穴が貫通してほしくない場合は、M12 有効深さ30などに書き換えないといけない。
このように、自分が作ってほしい部品形状に応じてタップ加工においては、その下穴が加工できることを前提で指示するように心掛けてくださいね。
なお、下穴の深さはタップの有効深さに5~10mm足したくらいが一般的です。
もしも、下穴ギリギリまでネジ加工して欲しいなら
タップでネジ加工をする場合、ネジの下穴ギリギリまでネジを切るのは難しいですが、スレッドミルを使えば何とかなります。
スレッドミルというのは、ネジ加工刃がついている工具で工具をらせん状に回転させながらネジ加工する道具です。
実際に加工の様子を見てもらったほうが理解しやすい↓
これなら、下穴ギリギリから加工できます。
あるいは、下穴加工とネジ切り加工を同時に行るツールもあったりします。
じゃあ、これで加工してよ!!
と言いたいところですが、すべての会社がこの方法、このツールでネジ加工をできるわけではないです。加工会社によっては、「スレッドミルは使ったことが無いよ」というところも多いのです。
また、スレッドミルのデメリットは深いネジ加工ができないことです。スレッドミルの工具長以上の深さのネジ加工は物理的に無理ですもんね。スレッドミルの存在はあくまでも参考としてください。