ボール盤作業は、金属加工において必要不可欠な工程のひとつですが、操作ミスや安全対策の不備により重大な事故につながることもあります。
本記事では、ボール盤作業における安全性を確保するための注意点を解説します。
特に、これから工場でボール盤作業を初めて行うという人は必読となる内容ですので、最後まで読んでくださいね。
まず最初にボール盤にはいくつかの種類がありますので、これから自分が操作するボール盤がどのタイプのものなのかを知っておいた方がよいかもしれません。
ボール盤にも種類はあるものの、町工場で最もよく使われているのは以下の3つです。
- 卓上ボール盤
- 直立ボール盤
- ラジアルボール盤
直径13mm以下の穴開けや面取り作業をするのによく使われるのが卓上ボール盤。
もう少し大きいサイズの穴加工やタップ加工も行うのが直立ボール盤。
大物部品に穴加工やタップ加工を行うのがラジアルボール盤。
というイメージを持ってもらえればよいかと思います。
ボール盤の機能
ボール盤で行う加工作業は、ドリルを使って穴をあける、面取りカッターで穴の面取りを行う、タップを使ってネジ穴加工をするということがほとんどです。
ちなみに、タップには種類があって使い分けをしないといけないことを知っていますか?
タップの使い分けについても紹介していますので参考にしてくださいね。
たまにボール盤でフライス加工をする!みたいな人がいますが、基本的にボール盤はフライス加工ができるような構造になっていないし、無茶な使い方をすると機械がダメになるのも早いのでやめた方がいいです。
ボール盤の主軸にはドリルチャックがついていて、そこにドリルを取り付けたり面取りカッターを取り付けて回すことで加工を行います。
ドリルチャックはハンドルで回して締めるタイプや手で回して締めるタイプなどがあります。
ボール盤にはタップ加工ができるものとできないものがありますが、その違いは主軸が正回転・反回転の両方ができるかできないかです。
タップ加工は右ネジの場合は正回転で切り込んで反回転で抜き取る作業が必要ですから、正回転も半回転もできるボール盤じゃないと、タップ加工はできませんので注意してください。
タップ加工ができるボール盤の場合、主軸のドリルチャックに直接タップをくわえるタイプとタッピングタッパーと呼ばれるものを取り付けて保持するタイプがあります。
直立ボール盤になるとドリルチャックとタッパーの付け替えができるものが多いですね。
以下の写真はタッピングタッパーの例です。
ボール盤作業そのものは、ボール盤についているハンドルレバーを上下させることで主軸を動かし、穴加工やタップ加工を行います。
加工中に手を離さないように注意しましょう。
sponsored linkボール盤作業における注意点と安全対策
最新のボール盤には安全装置が装備されているものも増えているようです。
例えば、非常停止ボタン。
古いボール盤ですと、電源をOFFにしても惰性でしばらくは主軸が回りますが、万が一服などが巻き込まれたとしても止められないことで事故につながるケースもあることから、非常停止ボタンが装備されるようになってきました。
非常停止ボタンを押すと、電気制御で瞬時に主軸が止まるようになっています。
他には、主軸カバー。
ドリル加工をする時など、切りくずが飛散します。
飛散した切りくずが手や顔に当たったりすることもあるのですが、それを防ぐ目的で主軸部分を覆うようなカバーが付けれているボール盤もあります。
慣れてしまえば切りくずが飛んで来るのも気にならないのですが、慣れない主婦の方たちなどがパート作業でボール盤を操作する場合はカバーがあった方がよいかもしれません。
最近ではベルトカバーのロックも厳重になってきました。
ボール盤の動力は電気モーターの回転伝えるプーリーと主軸スピンドルを回すプーリーをベルトでつなぐことで伝えられています。
当然ですが、モーターを回転させている時に手をベルトに近づけてはいけません。
間違いなく手が死んでしまいます!
こういった事故を未然に防ぐため、ベルトカバーを開けた瞬間にモーターが止まるようなインターロック機能がついているボール盤や、ベルトカバーを簡単に開けられないようにしているタイプのボール盤もあります。
ボール盤の切削条件の設定と注意点
ボール盤の主軸の回転速度は主軸プーリーのベルトをかける位置などを変えることで調整できます。
あるいは、直立ボール盤やラジアルボール盤などはギヤチェンジをレバーで行えるようになっているものもあります。
いずれにしても、加工する時に使用する工具の種類や大きさによって、主軸の回転速度を必ず調整しないといけません。
基本的には小さい刃物ほど高速回転、大きい刃物になれば回転数は小さくします。
大きい刃物をつけて高速回転すると遠心力でボール盤が揺れたり、工具が外れてしまったりすることもあるかもしれませんから十分に注意しましょう。
必ず、条件が分かる人にお願いして調整してもらってください。
自分で切削条件を調べたい場合は、使用する工具の切削条件をインターネットで調べるとすぐにわかると思います。
どうしても分からない場合は、最初は低速からやってみて徐々に速度を上げてみるとよいです。
sponsored link作業前の点検と整備
当たり前ですが、ボール盤の整備がちゃんとされているか確認は必要です。
古すぎるボール盤だと、電気配線が切れそうになっているものとかあるかもしれないです・・・
超危険。
あとは、安全装置が確実に作動するかも事前に確認しましょう。
タップ機能もついているボール盤の場合は、ドリル加工モードとタップ加工モードのどちらになっているのかを確認してから作業に取り掛からないと、タップ加工をするつもりがドリル加工モードで作業を始めてしまい、主軸が反転しない!!!と焦ることになる。
タップ加工で主軸が反転しないとどうなるか。
タップが入るとこまで入り、主軸のタッパーやドリルチャックが品物に衝突するし、タップが折れる可能性もある。
それだけじゃなく、品物が動いてぶっ飛んでしまうかも。
こうなるとケガをする可能性が高いので、絶対にドリルかタップのどちらのモードになっているのかは確認しよう。
安全にボール盤作業を行うための服装
ボール盤作業では、切りくずが飛んでくる可能性があります。
なので、服装としては切りくずがまとわりつきやすい素材のものは着用しないのが鉄則です。
事故対処法として覚えておきましょう。
ウール系の服はダメですよ!!
そして、軍手などの手袋は着用禁止です。
工具にまとわりついた切りくずが軍手にまとわりついて、刃物に手が引き寄せられたり、主軸にからんで指の骨がバキバキに折れたりすることもあります。
なので、素手で操作するようにしてください。
あとは保護メガネの着用もしましょう。
目に切りくずが飛んでくると超危険です。
未然に事故を防ぐための予防策は機械そのものよりも、作業者の確認作業が大前提になります。
ボール盤が正常に作動するのか、事故につながりやすい服装はしていないかなど。
まとめ
以上、ボール盤作業を安全に行うための注意点を書きました。
これから工場でボール盤作業をする人は、それぞれの工場にあるボール盤の機能や操作をちゃんと聞いて正しく使うようにすれば、事故にはなりませんし恐れる必要は全くないです。
事故を起こす人は決まって使い方を間違えている人なんです。