金属加工における水溶性切削液の腐敗臭の原因と対策方法

水溶性切削液 部品加工の基礎

金属加工において欠かせない水溶性切削液。

しかし、使用しているうちに腐敗臭が発生してしまうことがありますよね。

 

この腐敗臭は、作業環境を悪化させるだけでなく、切削液の品質低下や加工品質の悪化なども引き起こす可能性があります。

そこで本記事では、水溶性切削液の腐敗臭の原因と対策方法について解説します。

水溶性切削液の腐敗臭の原因とは?

一つ目は、微生物の繁殖によるものです。

水溶性切削液中には、微生物が繁殖するための栄養素が含まれていて、これによって切削液中の微生物が繁殖し、腐敗臭を放つ原因となります。

切削液中に含まれる微生物は、大部分が細菌や真菌です。

 

二つ目は、切削液中に含まれる添加剤の劣化・酸化によるものです。

水溶性切削液には、機能を向上させるために様々な種類の添加剤が含まれています。

しかし、時間の経過とともに、これらの添加剤が劣化・酸化することで腐敗臭が発生することがあります。

 

腐敗臭が出た水溶性切削液の使用は危険?

 

腐敗した切削液中には、微生物が繁殖し、有害な細菌、真菌、カビなどが含まれることがあります。これらの微生物は、呼吸器系、皮膚、目、耳などに悪影響を及ぼす可能性があります。

腐敗した切削液を使用することによって引き起こされる可能性がある健康被害は、以下のようなものが挙げられます。

  • アレルギー反応
  • 皮膚の刺激や炎症
  • 呼吸器系の炎症
  • 目の痛み、かすみ、炎症
  • 耳の痛み、感染症

以上のような症状が発生した場合には、切削液の管理方法に問題があると思った方がよいかもしれません。

作業員がこれらの健康被害に遭わないようにするためには、切削液の腐敗を防ぐための適切な管理方法を取り入れることが重要です。

 

水溶性切削液の腐敗臭を防ぐにはどうすれば良いのか?

水溶性切削液の腐敗臭を防ぐには、以下のような対策が効果的です。

  • 切削液の使用量を減らす
  • 定期的に切削液を交換する
  • 切削液に添加する抗菌剤や防錆剤の使用
  • 切削液の温度管理をしっかり行う
  • 切削液の清掃やメンテナンスを定期的に行う
  • 切削液の使用前後に適切な濾過を行う

これらの対策を行うことで、切削液の腐敗臭を防ぐことができます。また、切削液の品質低下や加工品質の悪化を防ぐためにも、適切な管理方法を取り入れることが重要です。

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水溶性切削液の腐敗を防ぐのにおススメは『アルカリ電解水』

意外かもしれませんが、切削液の希釈に使用する水をアルカリ電解水に変えるだけで一気に問題が解決されたりするんです。

どこでアルカリ電解水を買えばいいのか?ということについては、あとで紹介します

そもそもですが、一般的に水溶性切削液の希釈に使用される水道水アルカリ電解水は化学的な性質や成分が異なるため、分子レベルでの違いがあります。

 

まず、水道水は、水として一般的に使われるH2Oの分子からなっています。

これに対して、アルカリ電解水は水に電気分解をかけることで、水分子にプラスイオン(水素イオン)とマイナスイオン(水酸化物イオン)が生成されたものです。

つまり、アルカリ電解水は、水道水に含まれる水分子に、プラスイオンとマイナスイオンが付加された構成をしています。

 

また、水道水には、塩素やフッ素などの消毒剤や添加物が含まれている場合があります。

一方、アルカリ電解水は、水道水を電気分解することで生成されたものであり、添加物や消毒剤が含まれていないことが一般的です。

 

これらの違いにより、アルカリ電解水は、水道水よりも酸性度が低く、アルカリ性が高いという特徴があります。

さらに、アルカリ電解水には、水道水に含まれる微量な不純物や化学物質が取り除かれている場合があるため、より純度が高くなっているという点も異なります。

以上のように、アルカリ電解水と水道水は、分子レベルで異なる成分を含んでおり、化学的な性質が異なるため、異なる特性を持っています。

 

アルカリ電解水の効果

アルカリ電解水にはバクテリアの発生と増殖を抑制する効果があるので、切削液の寿命が長くなります。

つまり、作業コストの削減につながる!というわけです。

切削液は定期的に交換しなければなりませんが、切削液の寿命が延びることで排出される廃油量が減少すればSDGsにも貢献していることになりますね!

しかも、アルカリ電解水は”水”なので人体に無害

 

じゃあ、なぜバクテリアの発生と増殖抑制にアルカリ電解水が良いのかというと

主に以下の2つの理由が考えられます。

  1. pHの影響

アルカリ電解水は、pHが8.5以上になるアルカリ性を持ちます。

多くの種類のバクテリアは、中性の環境(pH 7.0)が好ましく、アルカリ性の環境には適応できないことが知られています。そのため、アルカリ電解水のようなアルカリ性の環境が、バクテリアの発生と増殖を抑制することがあります。

 

  1. 酸化力の影響

アルカリ電解水には、OH-イオンとH2O2が含まれています。

これらの成分は、酸化力を持ち、バクテリアの細胞膜を破壊することがあります。また、アルカリ電解水が生成する酸素分子も、バクテリアの増殖を防止するために役立ちます。

 

アルカリ電解水は冷却性能と洗浄力が高い

アルカリ電解水は水に比べて熱伝導率が高いため、切削液としてのクーラント能力が高くなります。

その理由は主に以下の2点。

  1. イオンの影響

アルカリ電解水は、水に電気分解を起こして生成された水素イオン(H+)と水酸化物イオン(OH-)を含みます。これらのイオンが、水分子の間に入り込んで、水分子間の結合を緩和させることにより、水の構造が変化します。

このため、アルカリ電解水は水よりもイオンが多く、イオンと水分子の相互作用により、熱の伝導が促進されます。

 

  1. 水分子の影響

アルカリ電解水は水分子の構造を変化させるため、水よりも密度が高く、分子間の距離が近い傾向があります。密度が高いほど、水分子同士の接触頻度が増え、熱伝導がより効率的に行われます。

 

さらに、アルカリ電解水には、洗浄力が高いという特徴があります。

水溶性切削液にアルカリ電解水を混ぜることで、切削液中に付着した切屑や汚れを効率的に洗い流すことができます。これによって、切削液中の汚れを除去し、切削液の清潔さを保つことができます。

 

以上のように、水溶性切削液にアルカリ電解水を混ぜることで、冷却性能が高くなる理由は、熱伝導率が高い、微生物の繁殖を抑制する、洗浄力が高いという特徴があるためです。

それによって、切削作業の効率化や切削液の寿命延長などのメリットが得られます。

 

アルカリ電解水を使用すると手荒れが無くなる

 

切削加工機や研磨機を使用している人など、切削液に直接触れることが多い人の中には手荒れがひどくて困っているという方も多いのではないでしょうか。

 

水溶性切削液にアルカリ電解水を混ぜると、手が荒れないという効果があるとされています。これは、アルカリ電解水が持つ皮膚保湿効果によるものです。

アルカリ電解水には、水道水よりもアルカリ性が高く、また、水分子が細かくなることにより、皮膚にうるおいを与える効果があります。そのため、水溶性切削液にアルカリ電解水を混ぜることで、手の乾燥や荒れを防ぐことができます。

 

また、水溶性切削液には、切削作業によって発生する切屑や油脂が含まれており、これらが手に付着することで、手荒れの原因となります。

しかし、アルカリ電解水には、汚れを浮き上がらせて落とす効果があるため、手を洗う際にアルカリ電解水を使うことで、手に付着した汚れをスムーズに落とすことができます。これにより、手荒れを予防することができるというわけです。

 

ただし、アルカリ電解水が強アルカリ性である場合、皮膚に刺激を与える可能性があるため、注意が必要です。また、アルカリ電解水を含む水溶性切削液を扱う場合には、適切な安全対策を講じる必要があります。

 

アルカリ電解水だと作業着や工場が汚れにくい

工場で働いたことがある人ならすごく共感してもらえると思うのですが、作業着の油汚れってすごいんですよね。

昔から”工場=汚い”というイメージが持たれているのも、金属加工で使用する油が原因の1つ。

 

しかし、アルカリ電解水だとほとんど汚れません。

実際に弊社で使用している限りでは、作業着の汚れもありませんし工場の床がベタベタすることもないです。

非常にクリーン。おススメです。

 

アルカリ電解水を切削液として使用するデメリット

実際に弊社で導入して、なかなか良いなと思いご紹介したアルカリ電解水の切削液ですが、もちろんデメリットもありますのでお伝えしておきます。

それは防錆性です。

 

アルカリ電解水なんですが、一週間とか時間が経過すると切削液のpHが中性に寄ってきます。

アルカリ性の状態だと、酸化の心配は不要なんですけど中性になってしまうと錆の問題が発生しますので、定期的(できれば1週間に1回)はリトマス紙などでpHの確認はしておいた方がいいです。

アマゾンで500円以下で安く購入できるので、弊社ではそれを利用しています。

 

デメリットと言えばこれくらいかなと思います。

価格は実際に使用する量(購入頻度)によって、会社ごとに差異はあると思いますから懸念材料には含まないですし、廃油の問題が無い(使用していると自然蒸発していくから)のも有難いです。

 

切削液に入れるアルカリ電解水はどこで購入するべきか?どこに相談したらいい?

まさかコンビニやドラッグストアでアルカリ電解水を探してきて切削液に混ぜる・・・なんてできないです。

切削液に入れるアルカリ電解水については、私の知り合いが取り扱っていますので紹介しておきます。

 

愛知県にある株式会社andmarkという会社ですが、トヨタ系の部品商社としても営業されている会社さんです。

アルカリ電解水を取り扱っておられて、地元では少しずつその効果と経済性から普及しつつあるようです。

「有限会社平野製作所の平野から聞いたよ」と言えば、それなりに良くしてくれると思います(笑)

質問だけでも聞いてくれます。

 

まとめ

金属加工において水溶性切削液の腐敗臭は避けられない問題ですが、適切な管理方法を取り入れることで防ぐことができます。

切削液の品質低下や作業員の健康への影響を最小限に抑え、安全かつ効率的な金属加工を行うためにも、切削液の管理には十分に注意しましょう。

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