フライス加工をしていると「ボーリング加工」という言葉に出会うことがあります。
なまじっか専門用語のボキャブラリーが無いうちは、よく似た単語に「ホーニング」ってのがあるなぁと思ったりする。
ここでは、ボーリング加工とは何か?
よく似ているホーニング加工とは違うものなのか?
ということについて説明します。
ボーリング加工とは?
ボーリング加工はすでに空いている穴の仕上げ(精度出し)をすることを指すのが一般的。
使用する工具はボーリングバーと呼ばれるものを使用します。
大昭和精機のボーリングバーは「カイザー」と呼んだりもしますね。
ボーリングバーを製造しているメーカーはいくつかあると思いますが、基本的には仕上げ加工をするために使うので、刃物は1枚だけです。
なんで1枚刃なのか?と疑問に思った人のために説明しておくと、1本の工具に複数の刃(チップ)がついていると、それら取り付けられたチップ間の誤差というものが僅かながらにも生じますね。
例えば、3枚(①~③)のチップがついているとして、それらに0.005mmの誤差がある状態で削っていくと、①のチップで削った面を②か③のチップでさらに0.005mm削っていくという形になります。
別に問題ないよね?と思うのですが、精度を出すための仕上げ加工ということを忘れてはいけません。
チップは消耗品であり、刃先は摩耗します。
当然、3枚のチップがついていると、どれか先に摩耗していきますよね。
刃先の摩耗は切削抵抗の違いを生み、面粗度の悪化を生じさせます。
それらを繰り返していくと、思うようにきれいな仕上がり面が得られなくなるのです。
だから、基本的にはボーリング工具は1枚刃なのです。
ボーリングの下穴と仕上がり精度
ボーリング加工では、下穴はどれくらいにするべきか?
これは加工者によって意見が分かれるところかなと思いますが、平均的には仕上がり寸法よりも直径で0.2~0.5mmくらい小さくしておけばよいでしょう。
というのも、ボーリング加工の1回切込み量は直径で0.1~0.2mmくらいが限界です。
これでも結構多いです。
人によっては0.3mmとかいっちゃうよ!と言うかもしれませんが、個人的にはチップがダメになるのでやらないです(笑)
また、加工する材料にもよります。
チップ次第ですが、熱処理したものを仕上げる場合は、できるだけ低速回転でゆっくりと削る方がいいです。
1回に削る量も直径で0.05mm以下にするべきかと思います。
仕上がり精度はどうか?というと、0.01mmレベルの管理になります。
0.005mmは正確に出せないかも。
ボーリング加工は砥石で研削するのではなく、刃物で削る加工なので。
ボーリングのびびり
ボーリングバーは0.005~0.01mmくらいずつ穴を広げることができるのですが、これくらいの切削量になると、チップの摩耗によって”工具の滑り”が起こることがよくあります。
工具の滑りというのは、単純に削れなくて加工面の上をチップが滑ってしまう現象です。
ボーリングバーも絶対に歪まない、しならないというわけではないので。
そうすると「あれ?おかしいな?穴を0.01mm広げるようにしたのに」とまた0.01mm広げるように設定してみるけど、やっぱり削れない。
おかしいな?と同じことを繰り返していくと、元の寸法から0.05mmくらい拡大設定したところで一気に0.05mm削れて加工NGになってしまうという事故が起こるのです。
初心者さんによくあります。
すごくびびって加工面が波打ってしまう!!!
というお悩みも聞きます。
正直、1回びびって加工面が波打ってしまうと、なかなか修正が難しい。。。
びびりが出る理由としては
- 切込み量が多過ぎる
- チップが摩耗して切削抵抗が大きくなっている
- 刃物の回転数が速すぎる
- 切りくずがちゃんと除去できていない(クーラントやエアブローが足りないなど)
というようなことが考えられます。
切削条件はしっかりと工具のカタログなどを見て調整するようにしましょう。
sponsored linkボーリングとリーマ加工の違い
ついでにボーリング加工とリーマ加工の違いについて質問を受けることもたまにあるので、ここで書いておきます。
結論を言うと、大きい穴(概ね直径20mm以上くらい)にはボーリング加工が適用され、小さい穴はリーマ穴が多いです。
そもそも、ボーリングとリーマは工具が異なりますので、その程度の使い分けだと思ってい頂いて差支えないかと思います。
もしも、穴の面粗度が必要だとか超高精度(0.001mmレベルの公差管理が必要)を求める場合は、ジグ研磨などを選択することになるでしょう。
ホーニング加工とは?ボーリング加工と何が違う?
結論から言うと、ホーニング加工は研削。
ボーリング加工は切削。
両者の違いはこれです。
ホーニングは穴の径を仕上げる加工という点でボーリング加工と似ていますが、ホーニングでは円柱状の回転工具(マンドレル)に複数の砥石が張り付いていて、マンドレルを回転させながら荒加工した穴を上下させて研削します。
砥石が回転しながら穴を上下に動くので、研削面はアヤ目(格子状の目)になります。
このアヤ目が潤滑油の溝代わりになったりもするので、ピストンシリンダーによくホーニング加工を適用している気がしますね。
個人でもバイクのピストンシリンダーのホーニングをしている人が結構います。
個人向けにAmazonで工具は安く手に入ります(部品加工で使っているものは、これとは違います)。
マンドレルについている砥石は可動性であり、荒加工した穴の壁にどれだけの力で押し当てるかを調整することができ、それによって穴径寸法を仕上げます。
このあたりは、結構職人技が必要とされます。
もう1つ、ホーニングで注意しないといけないのは、荒加工の穴に沿って砥石が動くので、荒加工の穴の位置がズレていてもホーニングで修正することはできません。
ズレた位置にある穴に沿って動くので、そのまま仕上げてしまいます。
もしも、荒加工の穴位置がズレていることが事前に発覚した場合、修正がききそうならばワイヤー加工か放電加工で仕上げるようにします。
まとめ
いかがでしたか?
ボーリング加工とホーニング加工の違いがはっきりしたでしょうか?
フライス加工ではボーリング加工はすれども、ホーニング加工はしません。
ホーニングはホーニングの業者に依頼するので。
ボーリングとホーニング。
わかれば簡単なことですが、混同しないようになれたら幸いです。