フライス加工で使用される「フルバック」はフルバックカッターとも呼ばれる切削工具の1つです。
正面フライスとかフェイスミルという単語もよく聞くけど、何が違うのか?という疑問があるかと思います。
本稿では、フルバックについて解説します。
フルバックとは?
まず最初に、フルバックとは被切削物のを平面を削ることに特化した切削工具です。
三角形や四角形、ひし形、丸い形などをしたチップをホルダーに取り付けて使用するのが主流ですが、一部では昔ながらの超硬ロウ付けバイトを取り付けるタイプを使用している会社もあります。
下の画像が超硬ロウ付けバイトを取り付けるタイプのフルバックです。
超硬ロウ付けバイトのメリットは、刃先が摩耗してきたらグラインダーで研磨して何度も使える点です。超硬部分が小さくなるまで何度も研磨して使います。
デメリットは、ホルダーにロウ付けバイトを取り付けるときに、取り付ける全てのバイトの刃先の高さと刃の傾きを合わせる作業が必要になることで、この作業が初心者ではかなり難しいです。
経験のない人ならば、刃を研磨して取り付ける作業だけで1時間以上を費やしてしまう可能性もあります。
その点、チップ交換式はかなり便利で楽ですね。チップを取り換えるだけなので数分で終わります。
ただ、チップ消耗に合わせてコストが高くなってしまう点がデメリットです。
フルバックと正面フライス、フェイスミルの違い
この3点は何が違うのか?と悩む人も結構いますが、結論を言うと同じものです。
名前の呼び方が違うだけで、指しているものは同じ。
フルバックの選び方
新たにフルバックを購入するとき、工具カタログやネットサイトを見ていると様々な種類の工具が存在することが分かります。
ただ、どれを選べばよいか分からない・・・という問題もあるかと。
まず第一に大きさは確認が必須ですね。
小さいフライス盤にデカい工具をつけるのはナンセンスです。そもそも馬力が足りないうえに、取り付けることさえ難しいでしょう。
次に取り付けるチップの数にも注意が必要です。工具が大きくなると取り付けるチップの数が自然と多くなるのはもちろんなのですが、同じ大きさの工具どうしても4枚のチップを取り付けるタイプや6枚だったりそれ以上だったりするかもしれません。
チップは工具の底面に等間隔に取り付けますが、チップとチップの間をチップポケットと呼びますが、このチップポケットは削りカスを排出するための隙間です。
チップ数が多くなると、チップポケットが狭くなるので切り屑の排出性が悪くなりますし使用するチップ数が多いとコストも高くなると思ってください。
そして、もう1つ大事なのは削るものが何かによって使い分けができるならしたいところです。
というのも、フルバックに取り付けるチップには傾きがあり、すくい角と言います。
すくい角が大きくなると切削性(切れ味)は向上しますが、チップの強度が下がりますので、硬い金属を削る場合はすくい角があまり大きくないものを選び、アルミや真鍮などの柔らかい金属を削る場合はすく角が大きいものを選ぶとよいかと思います。
すくい角などの情報については、各工具のカタログに記載されていますので確認してみましょう。
フルバックの加工条件・切り込み量
実際にフルバックを使用するとき、どれくらいの回転数でどれくらいの速度で削ったらいいのか?ということについては、基本的には工具カタログに記載されている条件表をもとに調整をしていきます。
自分が削る被切削物の種類や形、大きさによって条件はコロコロ変わります。
例えば、穴がいっぱい空いたプレートをフルバックで削る場合、穴が邪魔をしてチッピング(チップが欠けてしまうこと)しやすいです。切削速度を落としたり、回転数を変えてみたり適切な条件は加工しながら探すことになるでしょう。
ただし、フルバックはエンドミルと違い、刃の側面を使って削ることを主としていません。
どちらかというと、底面を使って削る工具になりますので段差のある壁をフルバックで綺麗に仕上げようとは思わない方がよいです。
フルバックを使用するメリット・デメリット
フルバックは加工物の正面を一気に削れるメリットがあります。
幅150mmのプレートを削る場合、径が80mmあるフルバックなら2回の切削で150mmは削れますが、同じものを径12mmのエンドミルで削ろうと思うと13回は削らないといけません。
デメリットとしては、正面切削に特化しているという点です。エンドミルは側面切削もできますがフルバックは側面切削は構造上適していません。
もう1つのデメリットは工具代が高いという点。どうしてもホルダーを購入して、チップも購入して・・・となりますから、それなりの金額になります。
フルバックも永遠に使えるものではなく、長年使用していると(特に過酷な条件で使用していると)チップを固定する部分などに歪みが出てきたりして、新品の時よりも使用しているチップの寿命が短くなってきます。
結構、この点が盲点だったりするのですが、できることなら1~2年に1回はホルダーの買い替えとかをするのがベストだと思います。実際は10年くらい使い続けたりしていますけどね。。。