ステンレスは難削材とも言われていますが、使用するエンドミルのリード角を変えるだけで削りやすくなったりします。
リード角ってなにや?
「リード角」とは、エンドミルの刃のねじれ角度のことで、エンドミルの刃先がワークに対して切り込む角度であり、切削性能や仕上げ面粗さに影響を与えます。
工具カタログとかインターネットショップとか見てみるとわかりますが、30°、45°、50°と色々な角度があります。
リード角が違う理由は、目的とする加工物によって最適な角度のものを使い分けするため。
とりわけ、ステンレスの加工をする時にリード角が重要だと言われているんです。
ステンレス素材の加工で起こりやすい加工硬化、工具の焼け付きを防ぐために切削抵抗を減らせるエンドミルを使用したいのですが、この切削抵抗を左右する要素の1つが、エンドミルのねじれ角度(リード角度)なんです。
エンドミルのねじれ角とその用途
エンドミルのねじれ角は、切削性能や仕上げ面の品質に大きな影響を与える重要な要素です。
ねじれ角は、刃先が材料に対して切り込む角度を示し、一般的には「強ねじれ」と「弱ねじれ」の2種類に分類されます。
それぞれの特徴と適用例を以下に詳述します。
強ねじれエンドミル
特徴:
- 刃物寿命が長くなる:強ねじれエンドミルは、一定の刃長単位でみると弱ねじれエンドミルに比べて加工物と刃物が接触している長さが短くなります。そのため、切削抵抗が小さくなり刃の寿命が長くなります (岡崎精工 超硬ソリッドハイヘリカルエンドミル 4枚刃)。
- 切り屑の排出が良好:強ねじれだと加工物を細かく切り刻んでいくイメージで切削します。そのため切り屑が小さくスムーズに排出されるため、加工中の詰まりを防ぎ、高速加工が可能です 。
弱ねじれエンドミル
特徴:
- 高い剛性:弱ねじれエンドミルは、刃先の剛性が高く、硬い材料の加工に適しています。強ねじれエンドミルと比較して、ビビリの発生を抑える効果があります。
- 安定した加工:特に溝加工や深い切り込みを行う際に、刃先が材料にしっかりと食い込むため、安定した加工が可能です 。
ステンレスの加工におススメのエンドミルは強ねじれ角のエンドミル
エンドミルの刃にはねじれ角(リード角とも言う)が0°~60°まで色々とありますが、ステンレス加工で第一に選択するのは強ねじれ角のエンドミルです。
JIS規格では40°以上のねじれ角のものを強ねじれとされます。
エンドミルのねじれ角が強い(大きい)と、刃物の切れ味が良くなります。
理屈はありますけど、イメージ的にも何となくわかりません?
刃物を立てて削るより、少しねかせてシュッとした方が切れる感じが。
同じ条件で同じ量の切り込みをするならば、エンドミルのねじれ角を大きくすることで、ねじれ角が小さいものよりも切りくずが薄くなり、切りくずの排出性も向上する。
つまりは切削抵抗が小さくなることであり、ステンレス加工で発生する加工熱の発生を抑えることができます。
こうことが、強ねじれ角のエンドミルを選ぶ理由になります。
ステンレスに限らず、荒加工に使用するラフィングエンドミルも、ねじれ角の違うものが用意されていたりします。
切削抵抗を減らしたいんだという場合は、ねじれ角が大きいものを選んで使ってみてください。
強ねじれ角エンドミルを使う時のデメリット
ねじれ角が大きいと切削抵抗が小さくなるというメリットにより、ステンレス加工に適していると言えるわけですが、全てのステンレス加工に推奨されるわけではありません。
エンドミルのねじれ角が大きいということはエンドミルの回転によって、軸方向に加工物を巻き上げる力が大きくなるということです。(※右巻きのエンドミルにおいて)
特に肉厚が薄い加工物だとビビリが強く出てしまいますし、場合によっては加工物が変形してしまってモノにならないこともあります。
あるいは、加工物が大きくてしっかりしたものだと、逆にエンドミルがホルダーから引き抜かれる力が大きくなるとも言えます。
なので、Z方向の加工寸法公差がある場合は、仕上げシロにいつもよりも少し余裕をみておくことが望ましいと思います。
そしてもう1つ、強ねじれエンドミルを使う場合は”うねり”の発生に注意しないといけません。
ねじれ角が大きいと切削抵抗が小さくなるので、ビビリが発生しにくく面粗度も上がります。
だけど、刃物がねているということは、外周刃の長さも長くなりますので1回の切削で刃物が加工物に当たるタイミングのズレが大きくなります。
これによって、深い溝加工などをすると壁にうねり(波打ち)が出来てしまうことがあるので、仕上げ加工はねじれ角が緩いエンドミルを使用することをおススメします。
不等リード・不等分割エンドミルのすすめ
エンドミルには強ねじれと弱ねじれがあると書きましたが、それぞれのメリットを活かそうとしたエンドミルとして不等リード・不等分割エンドミルというものもあります。
ビビリの抑制に効果的で、難削材や重切削に適しているエンドミルです。
例えば、4枚刃のエンドミルであれば、2枚ずつがそれぞれ異なるリード角になっているエンドミルや、刃の位置が均等ではないエンドミルです。
ビビリが出にくいメリットがある一方で、芯部分が等リードのエンドミルに比べて細くなるため高負荷を掛けてしまうと折れやすいデメリットもあります。
なので、仕上げ加工用に使うとメリットを活かせます。
ステンレス加工に使うおススメのエンドミルのまとめ
エンドミルの素材は超硬が主流になってきています。
高速回転で切削することも多くなってきていますし、超硬エンドミルの価格もずいぶんと安くなっています。
メーカーによって切削性の違いはあるかもしれませんが、それは使用している機械や切削油などの条件によっても適しているものが変わる可能性もあります。
とりあえずはステンレス専用のエンドミルを選択し、なおかつリード角が大きいものを選び、仕上げはいつも通りのエンドミルで加工してみてください。