アルミの切削加工で切削油を使わずに加工すると、エンドミルにアルミが溶着していまい困った!!という経験を持つ人は多いでしょう。
少し前までは、水溶性の切削油を高圧で吹き付けることが主流でしたが最近は切削油を使わずにエアブローで加工している工場が増えているようにも思えます。
これは、高圧クーラントで使用する水溶性の切削油は工具の過冷却を起こし、コーティング超硬工具の寿命を短くしてしまうという問題点が見つかったためだそうです。
あるいは、加工後、製品についた切削油のふき取りなどの手間が大変だからという理由でドライ加工をしているところもあるでしょう。
では、アルミをドライで加工する場合、どうすればエンドミルに溶着しないようにできるのか?
ここでは、その対策方法について紹介します。
DLCコーティングかダイヤモンドコーティングの工具を使う
アルミが工具に溶着してしまうのは、アルミが他の金属に比べて融点が低く、切削温度が上昇すると溶けて工具にまとわりついてしまうからです。
つまり、そもそもが無給油切削するには難しい素材なんですね。
それでも、無給油切削するならば必須になるのが工具のコーティングです。
コーティングしていない工具を使うと、かなりの高確率で溶着してしまいます。
一般的によく使うA5052、A6063、A2017、A7075などのアルミ素材の切削には、DLCコーティングが最も溶着に強いと言えます。
DLCコーティングとは,ダイヤモンドと黒鉛との中間的な物性を持つアモルファス(結晶が集まったものではなく、一体になっている構造)な硬質炭素膜です。
DLCコーティングは、アモルファスであるためその平面の平滑度が非常に高い。
つまりは、つるつる!!摩擦係数が少ない!!!
ということです。
なので、アルミのドライ切削でも溶着しにくいのです。
一方、アルミダイカスト(鋳造品)のアルミの場合は、DLCコーティングよりもダイヤモンドコーティングのほうが適していることがあります。
ダイヤモンドコーティングは、DLCと違ってアモルファスではありません。
結晶を集めて工具表面に接着しているので、平滑度という点ではDLCに劣ってしまいます。
なのに、何故ダイカストではDLCよりもダイヤモンドコーティングが推奨されるのか。
その理由はダイカストの構造にあります。
アルミダイカストの中には、高硬度の砥粒が混じっていたりします。
それが、工具に断続的に当たることでDLCコーティングだと部分的に剥がれてしまうことがあるのです。
そうすると、コーティングの役割を果たせなくなって溶着してしまいます。
しかし、ダイヤモンドコーティングならば、硬質砥粒よりも頑丈なのでコーティングが剥がれてしまうことはありません。
ただ、ダイヤモンドコーティングにも種類があって、結晶粒の小さい微結晶ダイヤモンドコーティングを選択しないといけません。
結晶間にアルミが溶着してしまうからです。
sponsored linkエアブローからMQLの加工に切り替えてアルミ溶着を防ぐ
MQLとはMinimum Quantity Lubricationの略で、いわゆるセミドライ加工のことです。
ジャンじゃか切削油をかけるのではなく、最小限の切削油にとどめるという方法。
アルミ加工は、ドライ加工に比べてMQLにすることで、圧倒的に溶着を防ぐことができます。
そのほか、セミドライならば少量の切削油の使用で済むうえに、工具寿命の延長によるコストダウンも望めます。
ただ、セミドライ専用の給油機が必要になったりするという課題がありますが。。。
アルミの溶着を防ぐ方法のまとめ
アルミ加工においては、いかにして切削熱を低減するかが1つの課題です。
工具のスクイ面の切削抵抗を極力小さくしたり、アルミの切りくずの排出効率を上げたりということは各種工具メーカーが研究して製品開発しています。
それらを使うことで、我々加工者は頭を使わなくてもアルミのドライ加工で溶着に悩まされなくなるのです。
有難いことですね。
そのうえで、どんなコーティング刃物を使うかなどの選択は自分でしないといけないわけですから、基礎的なことは押さえておきましょう。
追記
最近、コーティングとは違う電気処理によって工具のアルミ溶着が軽減されたという情報を聞きました。
電気処理は特殊な処理ですが、ダイヤモンド以外の金属工具ならばほとんど全て適用できる処理です。
処理後の見た目は全く変わらず、変寸もないため処理をしたものとしていないものを混ぜてしまうと、どれが処理したものか分からなくなるほど。
そんな特殊な処理ってどこでやってるの?
ということですが、実は、弊社の近くの処理屋さんがやっているんです。
コツコツと営業されていますが、今では大手企業も採用していたりするので興味のある方は私が代わりに受け付けますのでご連絡頂ければ。