アルミの部品加工依頼をするときに、忘れてはいけないのがアルマイト処理をするかどうかです。
アルマイトの目的として多いのは、耐食性を向上させることですが外観目的でカラーアルマイトをされることもあります。
他にも表面硬度を上げる目的で硬質アルマイト処理することも。
とにかく、目的に応じてアルマイト処理をするかしないかを決めましょう。
もちろん、アルマイト処理をしなくて済むのなら無理にする必要はありません。
無駄にコストがかかるだけなので。
アルマイトとは
アルマイトとは、金属表面に耐食性や耐摩耗性を付加する特殊な表面処理の一種です。このプロセスは主にアルミニウム合金に対して使用され、その表面特性を改良し、外部からの影響に対する耐性を向上させます。
アルマイトの製造プロセス
アルマイトの製造は以下の手順で行われます
- 前処理: アルミニウムの表面を洗浄し、不純物や油分を取り除きます。
- 酸化処理: アルミニウム部品を酸化性電解液に浸します。この際、直流電流を通じて酸化反応を促進させ、表面に酸化皮膜を形成します。
- 染色: 必要に応じて、酸化皮膜に色を付けるための染色処理が施されます。これにより、外観を美しくしたり、視覚的な識別を可能にします。
- 密着性の改善: 染色後、密着性を高めるために熱処理が行われることがあります。これにより、皮膜と基材の接着強度が向上します。
アルマイトの特性と利点
アルマイト処理を施した表面は次の特性を持ちます:
- 耐食性: 酸や塩基に対する耐性が向上し、金属部品の寿命を延ばします。
- 耐摩耗性: 表面硬度が増し、摩擦による劣化を抑制します。
- 絶縁性: 非導電性があり、電気絶縁性が求められる部品にも適しています。
アルミニウムの表面処理(アルマイト)の原理
アルミニウムは反応性が非常に高い金属であるため、空気中の酸素と反応し、酸化アルミニウム被膜(約0.02mm)を形成します。
アルミニウムが錆びないと思われているのは、この被膜形成により保護されるためです。
しかし、実際は酸化反応を受けているので錆びているということになります。
自然にできた酸化被膜は非常に薄いため、環境によっては浸食されてしまいますので通常はアルマイト処理という表面処理を行って表面を保護しています。
アルマイト処理はわざとアルミニウム合金の表面に酸化被膜を形成する技術で、アルミの表面に超微多孔性の酸化被膜を作ります。
メッキや塗装と違うのはアルミの表面から上に成長被膜を作ると同時に、内部にも下へ浸透被膜を同じだけ作ります。
被膜の厚みは10μm程度です。
(※1μm=0.01mm)
アルマイト処理がメッキや塗装と大きく違うのは、浸透被膜を作ってしまうということであり、メッキや塗装は剥離してから再びやり直しができますが、アルマイトの場合は、やり直す時には浸透した部分も除去しないといけないので少し痩せてしまいます。
なので、アルマイトを剥離すれば、必ず元のサイズよりも小さくなることを覚えておいてください。
注意点として、Aというアルマイト屋さんで処理したものをBという別のアルマイト屋さんに剥離してほしいと頼むと、ほとんどの場合は拒否されます。
他社でやったものに対しては、どんな液剤を使って処理しているかもわからないし、対処できませんというのが言い分です。
対応わるいなぁ!と思わないようにしましょう。
そんなもんです(笑)
アルミに色がつけるカラーアルマイトの原理
アルマイト処理でできた酸化被膜には処理工程で超微孔(直径10nm程度)ができます。
(※1nm=0.001μm=0.000001mm)
この孔は無数にできるのですが、ここにカラー染料を染み込ませて孔の口を水和物の膜で蓋をすると着色することができます。
これをカラーアルマイトと呼び、赤、青、黄など色々あります。
何も染色せずに、アルミの地の色のままにしておく場合は白アルマイトと呼びます。
白アルマイトやカラーアルマイトの他にも、酸化被膜の目を細かくするように特殊な処理をする硬質アルマイト、スーパーハードアルマイトという処理もあります。
硬質アルマイト処理をかけることで、アルミの表面硬度が鋼の硬度よりも高くなり、より耐摩耗性が上昇します。
専門的にはHRC40~45程度の硬さ(鉄を焼入れした硬さに匹敵します)。
さらに、スーパーハードアルマイト処理でHRC45以上にも上がります。
とりあえずは、アルミの表面処理にはアルマイト処理っていうのがあるんだよって知っておけば、あとは加工屋さんにアルマイト処理お願いしますって伝えれば大丈夫でしょう。
もしも、アルマイトって何??って逆に聞かれたら、別の加工屋さんに変更したほうがいいと思います(笑)
アルマイト処理をするときの注意点
アルマイト処理をするには、処理する部品をワイヤーなどに吊り下げて薬剤の中に入れます。
なので、吊り下げるための穴やひっかける部分が必要になります。
また、吊り下げるときに引っ掛けた部分はアルマイトができないので、カラーアルマイトをする場合は吊り下げ跡として色がつかない部分ができてしまうこともあります。
アルマイトに出す場合は、支障のない箇所で吊ってもらうように指示を出せるなら出した方がよいでしょう。
アルマイト処理のまとめ
アルマイト処理は防食目的であったり外観目的など用途に合わせて行います。
バイク部品で雨ざらしになるような場合はアルマイト処理をしておくことをお勧めします。
アルマイトの費用については、表面積で計算されることも多いようですが業者によって千差万別ですので、見積をとってみるしかありません。
特に必要がないかなと思う場合はアルマイト処理無しでも大丈夫でしょう。