部品加工を依頼するときに、加工業者にCADデータを送っておくと間違いが少なくて済みます。
紙ベースのFAXで送信したり、メールでPDFファイルやJPGファイルを送ってもよいのですが、結局は加工業者が自分でCADデータ化するということは少なくありません。
なので、出来る限りCADデータがあるのならば、データも送付しておくことが理想的です。
しかし。
日本中、世界中ではそれぞれが色々なCADソフトを使用しています。
各ソフトごとにオリジナルの拡張子が存在するのですが、そのままだと他のソフトを使っている人には共有できませんよね。
そこで考えられたのが、共有するための中間ファイル(拡張子)です。
誰もが使える(であろう)中間ファイルに保存して相手に送ることで、相手側もその中間ファイルを自分が使っているCADソフトに入れて閲覧できるようにしているのです。
そんな中間ファイル(拡張子)にも、色々と種類はあります。
では、数あるCADデータの拡張子のうち、何を使うのが良いのでしょうか?
2次元データ、3Dデータで拡張子は変わりますし、みんながよく使っている3Dデータ拡張子でも加工データとしては使えないものもありますので紹介します。
2次元データでよく使う拡張子dxf、dwg
フリーで使えるCADソフトでも広く適用できる拡張子がこれらの2つかと思います。
2次元データの閲覧に限定されますので3Dデータは見れません。
これらのうち、推奨されるのはdxfだと個人的には思います。
dwgも使えるのですが、ちょっと問題があるんですよね。。。。
ということで、まずはdwgから。
DWGとは何か?
DWGは「drawing」という名称を略したもので、こちらも2次元データの保存によく使われます。
CADソフトを開発しているAutodesk社が開発したもの。
Autodesk社が販売しているCADソフトとして有名なのがAutoCADです。
建築や機械設計など幅広い業種で使われているソフトになりますので、作図・操作ガイドの本もありますので、おススメと言えます。
DWGはAutoCAD標準のファイル形式であり、AutoCADがあまりに広く使われるようになったことから、他のCADソフトでも互換性を持っているものが多くあります。
つまり、DWGの拡張子であればデータを共有できるってことになる・・・・というわけではないんですよね(笑)
1つ問題があるのです!!
それは、あくまでもDWGはAutoCADの標準拡張子であるということに過ぎないということ。
AutoCADがバージョンアップするごとに、保存されるDWGのバージョンも変わるんです。
つまりは、ファイルの見た目は「〇〇〇.dwg」となっているのですが、古いバージョンの拡張子かもしれないし、最新バージョンの拡張子かもしれない。
なので、使っているソフトによってはDWGのバージョンが古いとか新しいとかでファイルが開けないということも起こりうるのです。
そのために、DWGファイルのバージョンを下げるフリーソフトなんかもあったりします。
わざわざバージョンを下げてから相手に送るなんて、めちゃくちゃ面倒くさくないですか?
そこで開発されたのがDXFという拡張子です。
DXFとは何か?
Drawing Exchange Formatの略称であり、CADデータを保存する時に使用する拡張子としては個人的に最もオーソドックスなものではないかと思います。
実はこのDXFという拡張子もAutodesk社が開発したものになり、「〇〇〇.dxf」という形式のファイルになります(〇〇〇にはファイルの名前が入る)。
DWGと違うのは、DXFはAutoCADの標準拡張子ではないことです。
バージョンが古いとか新しいというような縛りにとらわれずに、データの共有ができるようにしたのがDXFなんです。
お互いがAutoCADを使っている者どうしならば、DWGでファイルを共有すればいいし、違う種類のソフトをお互いが使っているのならば、DXFでファイル共有をすればいいのです。
普段、相手がどんなCADソフトを使っているかなんて分からないですよね。
なので、DXFがスタンダード拡張子だと思うんですよね。
もしも、あなたが加工業者に二次元のCADデータを送りたいのであれば作ったデータはDXFファイルで保存しておくといいですよ。
sponsored link3次元データ(3Dデータ)でよく使う拡張子igs(iges)、step(stp)、x_t
二次元データ(平面図)ならばDXFファイルがおススメですが、3DデータはDXFではダメです。
三次元データの共有で最もよく使われるのは、IGS(IGES)、STEP(STP)、x_t ファイルでしょう。
ほとんど、これらの拡張子のうちのどれかを使っています。
では、これらの拡張子の使い分けはどうするのでしょうか?
IGS(IGES)とは?
Initial Graphics Exchange Specificationの略であり、中間共有フォーマットの1つ。
3Dデータの共有としては、おそらくこの拡張子が世界標準と言ってもいいかもしれません。
もちろん二次元データの共有にも普通に使えます。
しかし。
あくまでも個人的な見解ですが、三次元データを igsファイルでもらってみると複雑な形状のものほど部分的にソリッドが欠けていたり、そもそもソリッドになっていなかったりすることがたまにあります。
簡単に言えば、
この理由についてはよくわかりませんが、各々が使用しているCADソフトの種類の違いに起因するものであることが濃厚かと思います。
STEP(STP)とは?
Standard for the Exchange of Product Model Dataの略称で、3Dデータを保存するフォーマットとして、個人的によく使う拡張子です。
IGSよりもデータ精度が良いことから、国際標準化機構(ISO)により規格されたファイル形式と言われており、世界標準の拡張子とも言えます。
もしも、STEPで保存できるのならば、3Dデータを送る場合は第一選択することをおススメしたい。
x_t とは?
これって、どう読めばいいの?というところから始まりそうですけど、パラソリッドと読めばいい。
とりあえず、そう覚えておいてください。
注意したいのは、x_t はIGS や STEP のような中間ファイル(拡張子)ではないということです。
3Dデータを作るCADソフトには”コア”なる「カーネル(kernel)」というものがあり、各社が販売している3D-CADソフトごとに使用するカーネルは異なります。
カーネルを独自に開発するのは非常にコストがかかると言われており、ほとんどの3D-CADでは市販されているカーネルを使っています。
その内の1つとして、部品系・機械系のCADで利用されるのがパラソリッドであり、その拡張子が「x_t」ということです。
ちなみに、建築用の3D-CADの場合は x_t ではなく、sat が多いらしい。
でも、部品加工を依頼したいという人が使っているCADなら、大体はパラソリッドのはずなので、拡張子は「x_t」になります。
問題点としては、パラソリッドにもバージョンが存在しており、使用しているCADソフトがあまりに古いものだったりすると上手く開けなかったりします。
その場合は、パラソリッドファイルのバージョンを落とす作業が必要になる。
パラソリッドのバージョンを落とすには、フリーのソフトがあったりするかもしれないので調べてみてください。
拡張子「STL」は3Dモデルは見れるが、機械加工には使えない!!
過去に個人の依頼者から3Dデータをメールで頂いた時、私が困ったのはSTLという拡張子です。
Standard Tessellation Language の略称であり、光造形や3Dプリンターでの造形の時に使う拡張子として有名です。
STLは三次元モデルを表現するための保存ファイル(拡張子)です。
あくまでも、表現するためのファイルなんです。
機械加工をするための加工プログラムを作るにはSTLは使えないのです。
図面を描いたり、3Dモデルを作るソフトをCADと言いますが、それらのCADデータから工作機械で加工するための加工プログラムを作るソフトをCAMソフトと言います。
似ているようで、全く違います。
STLではCAMで加工プログラムが作れませんので、加工業者にデータを送る場合はSTLファイルで送らないように注意しましょう。
3Dプリンターでの出力依頼などの場合はSTLでOKです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
AutoCAD、Solidworks、Fusion360、MasterCAMなどなど。
使用しているCADソフトはそれぞれ異なるはずであり、それぞれのソフト専用の拡張子もあります。
しかし、それでは相手が同じソフト(しかもバージョンが同じかそれ以上)を使っていないといけないということになります。
これでは、せっかく送ったデータも無意味。
なので、中間ファイル(拡張子)に変換して保存し、そのファイルをメールで送るようにしないといけないのです。
使用する拡張子は大体限定されていますので、あまりマイナーな拡張子は使わないようにするとトラブルが少なくて済みますよ。
文字化け、データが壊れているという悩みはよくあるので・・・