ワイヤー放電加工とは?初心者でもわかる!原理・特徴・メリットを解説

加工のこと

ワイヤー放電加工とは、金属を加工する際に、ワイヤー状の電極と加工物との間に火花を散らし、その熱で素材を溶かして形を作る加工方法です。切削工具を使わず、複雑な形状や硬い素材の加工も可能で、金型製作や試作など、幅広い分野で利用されています。

時々、ワイヤーで物理的に切断していると勘違いする初心者さんがいらっしゃいますが、大きな間違いなので注意してくださいね。

 

この記事では、ワイヤー放電加工の原理、特徴、メリット・デメリット、そして実際の用途まで、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。ワイヤーカットとも呼ばれるこの加工法は、CNC(Computer Numerical Control)制御によって高精度な加工を実現し、自動車部品や精密機器など、さまざまな製品の製造に不可欠な技術となっています。

ワイヤー放電加工の原理をわかりやすく解説

ワイヤー放電加工は、電極とワーク(加工物)との間に高周波の電圧をかけ、微小な放電を発生させることで加工を行います。この放電によって発生する熱でワーク表面が溶融し、ワイヤーが通過した部分の材料が除去されます。

主に真鍮製の細いワイヤー線が電極となります。真鍮線の太さは直径0.25mmが主流ですが、微細加工などを行う場合はさらに細いワイヤー線を使用することもあります。ただ、細くなればなるほど断線しやすいので加工速度はより遅くなります。

まるで糸のこぎりで切るように、ワイヤーを移動させることで複雑な形状を加工することができます。(繰り返しますが、物理的に切断しているわけではありません

ワイヤー放電加工の特徴とメリット

ワイヤー放電加工は、以下の特徴とメリットを持っています。

複雑な形状の加工: 切削工具では加工が難しいピン角形状の加工や、精度穴加工、切断など、複雑な形状の加工が可能です。
高硬度材料の加工: 切削では難しい超硬素材や焼入れ鋼も加工可能です。

精度が出しやすい:切削では難しい精度要求された穴加工なども可能となります。

ワイヤー放電加工のデメリットと注意点

一方で、ワイヤー放電加工には以下のようなデメリットと注意点があります。

加工速度が遅い: 切削加工に比べて加工速度が遅いです。

加工コストが高い: 設備投資やランニングコストがかかり、加工コストが高くなる傾向があります。

加工液が必要: 加工液を使用するため、液の管理や処理が必要になります。

材料の制限: 導電性のある材料しか加工できません。樹脂製品などは加工できません。

ワイヤー放電加工でできること

ワイヤー放電加工は、その特徴を活かして、以下のような様々な加工に利用されています。

金型製作: 複雑な形状の金型を製作することができます。
試作: 新製品の試作や、少量多品種の部品の製作に適しています。
精密部品加工: 医療機器や時計部品など、高精度な部品の加工に利用されています。
航空機部品加工: 軽量で高強度の航空機部品の加工に利用されています。

ワイヤー放電加工業者を選ぶ際のポイント

ワイヤー放電加工を依頼する際、どの業者に依頼すれば良いか迷う方も多いのではないでしょうか。加工精度、納期、価格など、様々な要素を考慮して選ぶ必要があります。

1. 加工精度

ワイヤー放電加工で最も重要な要素の一つが、加工精度です。製品の機能や見た目を左右するため、必ず確認しておきましょう。

  • 公差範囲: どの程度の公差で加工できるかを確認しましょう。
  • 表面粗さ: 表面の滑らかさや光沢など、求められる表面状態を確認しましょう。
  • サンプル加工: 可能であれば、サンプル加工を依頼し、実際の加工精度を確認しましょう。

2. 納期

製品の納期は、生産計画に大きく影響するため、必ず確認しましょう。

  • 納期厳守率: 過去の納期実績から、納期厳守率が高い業者を選びましょう。
  • 緊急対応: 急な依頼にも対応できる体制か確認しましょう。
  • 生産能力: 必要な数量を、指定された納期までに生産できる能力があるか確認しましょう。

3. 価格

複数の業者から見積もりを取り、価格を比較検討しましょう。

  • 単価: 単価だけでなく、総額で比較しましょう。
  • 追加費用: 加工後の処理費用や運送費などが含まれているか確認しましょう。
  • 品質とのバランス: 安いからといって、品質が低い業者を選ぶのは避けましょう。

4. 実績

過去の納品実績を確認することで、業者の技術力や信頼性を評価することができます。

  • 業界での実績: どの業界の製品を多く扱っているか確認しましょう。
  • 得意な加工: 複雑な形状や特殊な素材の加工を得意としているか確認しましょう。
  • 顧客からの評判: 過去の顧客からの評判をインターネットなどで調べてみましょう。

 

ワイヤー放電加工に関するQ&A:よくある質問に答えます

ワイヤー放電加工は、精密な加工が可能なため、様々な産業で利用されています。しかし、その仕組みや特徴について詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。ここでは、ワイヤー放電加工に関するよくある質問に答え、その魅力と注意点について解説します。

Q1. ワイヤー放電加工はどんな素材に使えるのですか?

A1. 導電性のある金属であれば、ほとんどの素材を加工できます。

ワイヤー放電加工は、電気を通す金属であれば、鉄、ステンレス、銅、アルミなど、幅広い素材に対応できます。硬い材料や、複雑な形状の加工も可能です。

Q2. ワイヤー放電加工でできる最小穴径はどのくらいですか?

A2. ワイヤーの太さによって異なりますが、直径0.08mm程度の穴あけも可能です。

ワイヤー放電加工は、非常に細いワイヤーを使用するため、微細な穴あけが可能です。ワイヤーの太さを調整することで、加工精度を上げることもできます。

Q3. ワイヤー放電加工の騒音はどれくらいですか?

A3. 切削加工に比べて騒音が少ないですが、全く音がしないわけではありません。

ワイヤー放電加工は、切削工具が直接材料に接触しないため、切削加工に比べて騒音が少ないのが特徴です。しかし、放電に伴う音や、冷却液の循環音が発生します。

Q4. ワイヤー放電加工は環境に与える影響はありますか?

A4. 加工液の処理や廃棄物処理など、環境への配慮が必要です。

ワイヤー放電加工では、加工液を使用するため、その処理や廃棄が環境問題に繋がることがあります。また、発生する粉塵も適切に処理する必要があります。近年では、環境に配慮した加工液や、廃棄物処理システムが開発されています。

まとめ

ワイヤー放電加工は、複雑な形状の加工や高硬度材料の加工に優れた加工方法です。

この記事では、ワイヤー放電加工の原理、特徴、メリット・デメリット、そして実際の用途まで、幅広く解説しました。この記事が、ワイヤー放電加工についてより深く理解するためのきっかけとなれば幸いです。

タイトルとURLをコピーしました