なぜ?ステンレスは錆びない?理由と種類・手入れを徹底解説

材料のこと

ステンレス製品は、キッチン用品から建築材料まで、私たちの生活のあらゆる場面で活躍しています。その名の通り「錆びにくい」性質が最大の特徴ですが、「なぜ錆びないのか?」と疑問に思ったことはありませんか?この記事では、「ステンレス 錆びない 理由」を解説します。

ステンレスが錆びないメカニズムから、種類ごとの特性、錆びてしまった時の対処法、日頃のお手入れ方法まで、網羅的に解説。この記事を読めば、ステンレスに関する疑問が解消し、より安心してステンレス製品を活用できるようになるでしょう。ステンレスの魅力を再発見し、賢く付き合っていくための知識を、ぜひこの記事で身につけてください。

ステンレスが錆びない理由

ステンレスが錆びない理由は、その組成、つまり材料の組み合わせ方に秘密があります。鉄にクロムという元素を加えることで、表面に目に見えないほどの薄い膜が作られ、これが錆を防ぐ重要な役割を果たしているのです。

まるで鎧のようなこの膜は、非常に薄いにもかかわらず、驚くべき効果を発揮します。ここでは、ステンレスが錆びないメカニズムを紐解きながら、「錆びにくい」と表現される理由、そして「絶対に錆びない」とは言い切れない理由についても詳しく解説していきます。

ステンレスの耐食性を支える、この目に見えない立役者について、一緒に見ていきましょう。

 

ステンレス特融の”不働態被膜”のパワー

ステンレス鋼は「stain(錆)-less(無い)」と書くように、その名の通り「錆びにくい」金属として広く知られています。キッチン用品から高層ビルの外壁まで、私たちの身の回りのあらゆる場所で活躍しているのを目にするでしょう。

では、なぜステンレスは錆びにくいのでしょうか?その秘密は、鉄にクロム(Cr)という元素を10.5%以上加えた合金である、という点にあります。このクロムこそが、ステンレスの耐食性の要なのです。

クロムは酸素と非常に仲良し、というか、結びつきやすい性質を持っています。そのため、ステンレスの表面では、クロムが空気中の酸素と素早く反応し、薄い酸化皮膜を形成します。この皮膜は「不動態皮膜」と呼ばれ、厚さはなんとナノメートル単位。想像もつかないほど薄いのですが、その緻密さと安定性によって、それ以上の酸化、つまり錆の進行をしっかりと食い止めているのです。これが、ステンレスが錆びにくい最大の理由と言えるでしょう。

  • ステンレスの主成分と不動態皮膜の形成: ステンレスの主役は確かに鉄ですが、名脇役とも言えるクロムの存在がなければ、その特性は発揮されません。クロムが酸素と結合してできる不動態皮膜は、まるで表面を覆うバリアのような役割を果たし、水や酸素が鉄に直接触れるのを防ぎます。このバリアのおかげで、鉄は錆びの魔の手から守られているのです。
  • 不動態皮膜の自己修復機能: さらに驚くべきことに、この不動態皮膜は自己修復機能まで備えています。表面に傷がついても、クロムが再び酸素と反応して皮膜を再生するため、錆びにくさを維持できるのです。たとえ小さな傷がついても、すぐに「治る」というのは、まさに魔法のようですね。(参考:ステンレスとは?|特徴や錆びない理由、メリット・デメリットを解説 – 株式会社新進

 

ステンレスの種類と特徴

「ステンレス」と一口に言っても、実は様々な種類があることをご存知でしょうか?その違いは、含まれる成分や金属内部の組織構造に由来し、それぞれの特性や得意分野、つまり用途も異なってきます。

ここでは、ステンレスの中でも代表的な存在である、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系の3種類に焦点を当て、それぞれの個性を詳しく解説していきます。適切なステンレスを選ぶことは、その素材が持つ性能を最大限に引き出すための重要な第一歩。用途に合わせて最適な種類を選べるよう、それぞれの特徴をしっかりと押さえておきましょう。

 

ステンレスは、金属内部の組織、つまり原子の並び方によって大きく3つのグループに分けることができます。それぞれのグループは、まるで個性豊かな兄弟のようなもの。得意なこと、苦手なことがそれぞれ違うのです。

  • オーステナイト系ステンレスの特徴と用途: ステンレス界のオールラウンダーとも言えるのが、オーステナイト系です。クロムとニッケルという元素を含んでおり、これが優れた耐食性、つまり錆びにくさをもたらしています。さらに、加工性や溶接性にも優れているため、様々な形状に加工することが可能。そのため、キッチン用品や食器といった身近なものから、化学プラントのような大規模な設備まで、幅広い分野で活躍しています。代表的な鋼種は「SUS304」と呼ばれ、ステンレスの中でも特にポピュラーな存在です。(参考:ステンレスとは?なぜ錆びにくいのか、メリットやデメリットも解説!
  • フェライト系ステンレスの特徴と用途: 一方、フェライト系ステンレスは、クロムを主成分としています。こちらは磁石にくっつく性質、つまり磁性を持っているのが特徴です。また、オーステナイト系に比べると比較的安価なため、コストを抑えたい場合によく選ばれます。厨房機器や建築材料、自動車部品など、私たちの生活を支える様々な場所で活躍しています。代表的な鋼種は「SUS430」です。
  • マルテンサイト系ステンレスの特徴と用途: 刃物や工具に使われることが多いのが、マルテンサイト系ステンレスです。こちらもクロムを主成分としていますが、熱処理を行うことで非常に硬くすることができるのが最大の特徴。そのため、鋭い切れ味を求められる刃物や、高い強度が求められる機械部品などに適しています。代表的な鋼種は「SUS420J2」です。
  • 各ステンレスの耐食性の違い: これらの3種類のステンレスの中で、最も錆びに強いのはオーステナイト系です。次いでフェライト系、マルテンサイト系の順となります。つまり、錆びにくい順に並べると、オーステナイト系 > フェライト系 > マルテンサイト系、となります。用途や使用環境に合わせて適切な種類を選ぶことが、ステンレス製品を長く大切に使うための秘訣と言えるでしょう。

ステンレスが錆びる原因と対策

「ステンレスは錆びにくい」というのは事実ですが、残念ながら絶対に錆びないというわけではありません。ある条件下では、ステンレスも錆びてしまうことがあるのです。では、一体どのような時に錆びてしまうのでしょうか?その原因をしっかりと理解することで、未然に防ぐための適切な対策を講じることが可能になります。

ここでは、ステンレスが錆びるメカニズムを詳しく解説するとともに、具体的な対策方法をご紹介します。

 

ステンレスが錆びるメカニズムと要因

ステンレスの耐食性を支える不動態皮膜。この見えないバリアが破壊されると、鉄が酸化し、錆が発生します。不動態皮膜を弱らせる要因はいくつかあり、それらを理解することが錆対策の第一歩となります。

主な要因としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 塩分: 海水や塩分を含んだ物質が付着すると、不動態皮膜が腐食されやすくなります。沿岸部で使用する場合や、塩分を含む食品を扱う場所では特に注意が必要です。
  • 酸性物質: 酸性の洗剤や薬品などが付着したまま放置すると、不動態皮膜が溶かされてしまうことがあります。
  • 長期間の水分付着: 水分が長時間付着した状態が続くと、不動態皮膜が弱まり、錆が発生しやすくなります。特に、水が溜まりやすい場所や、湿気の多い環境では注意が必要です。
  • 表面の傷: 表面に傷がつくと、そこから錆が発生する可能性があります。傷が深いほど、錆びやすくなります。

このような理由から、ステンレス製の魔法瓶(水筒)にスポーツ飲料を入れてはいけないという話の理由につながるわけです。さびちゃうんですね。

 

ステンレスを錆から守るための対策

ステンレスを錆から守るためには、原因に応じた適切な対策を講じることが重要です。日頃から気を付けておくことで、ステンレス製品を長く美しく保つことができます。

  • もらい錆びとその対策: 他の金属、特に鉄製のものが近くにあると、そこから発生した錆がステンレスに付着し、もらい錆びを引き起こすことがあります。ステンレス製品の周囲には錆びやすい金属を置かないように心がけましょう。もし錆が付着してしまった場合は、早めに落とすことが大切です。メラミンスポンジなどで優しくこすり落とすか、市販の錆取り剤を使用するのも有効です。
  • 塩分や酸性物質による腐食とその対策: 海水や酸性の洗剤などが付着した場合は、すぐに水で洗い流し、十分に乾燥させることが重要です。特に、塩素系漂白剤は不動態皮膜を破壊する可能性があるので、使用は避けましょう。中性洗剤を使用し、柔らかいスポンジなどで優しく洗うのがおすすめです。
  • ステンレスの錆を防ぐための環境要因: 高温多湿な環境や、塩素系ガスが発生する場所では、ステンレスが錆びやすくなります。換気を良くしたり、適切な保管場所を選ぶなど、環境要因にも配慮が必要です。特に、温泉地など硫黄成分を含む環境では注意が必要です。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?

ステンレスって色々種類があるんだなと知った人も、ステンレスって錆びないわけじゃないんだって知った人もいるかもしれません。ステンレスの特徴を知ることで、どのように活用するか、活用されているかが改めて分かるような気がするのではないでしょうか。

ステンレスも万能じゃないってことで。

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