個人で部品加工を町工場に依頼したいなぁと思う時にとっても大事だけど、とっても難しいのが材料の選別です。
鉄で作って欲しい、そう思っても「鉄」にも色々あるんです。
加工依頼をすると、必ず聞かれます。
「材質は何にするの?」って。
その時にあなたが「適当な鉄で・・・」なんて答えても、「はぁ?」と言われる恐れもあるわけです。
というのも、金属部品で使われる「鉄」は「鋼(はがね)」であり、炭素やニッケル、コバルトなどいくつかの金属元素が配合された合金だからです。
純粋な鉄(Fe)で作る部品はほぼありません。
部品材質の「鉄」は「鉄」じゃない
中学校の化学の時間に鉄の元素記号を習ったはずですね。
そう「Fe」です。
でも、実際に町工場で削っている鉄っていうのは、炭素(C)や窒素(N)、場合によってはコバルト(Co)、ニッケル(Ni)などが含まれた合金なんです。
純粋なFeだけの金属を削ることはありません。
鉄は合金にすることによって、様々な性質を持つようになります。
その性質は硬さや靭性(粘り具合)、引張強度などです。
でも、個人が町工場に部品加工を依頼するときには、そこまで詳しいことを知る必要はほぼないでしょう。
鉄にも色々あるということさえ頭に入れておけば、ひとまずはOK。
鋼(合金)を使う理由
町工場で取り扱う鉄は100%合金といってよい。
SS400、S50C、SCM440,SNCM439、SKD11などなど。
鉄の種類の名前を聞いても、何ですかそれ?ってなりますね。
名前なんて知らなくても大丈夫。
自分が欲しい部品の用途をしっかりと、依頼する町工場に伝えよう。
そして、どんな金属を使うのが良いのか教えてもらおう。
もしも「うちは言われた通り加工するだけだから、分かりません」って言われたら私に聞いてください。
回答できることなら、回答できる範囲でお応えします。
(お時間は少しくださいませ。できる限り早く可能な範囲でお返事を差し上げますので)
ご連絡は info@hirano-s.jp まで
町工場で取り扱う鉄が合金である理由は、純鉄を製鉄することが難しいというだけでなく、金属の性質を状況によって使い分けるためでもあるのです。
例えば、よく他の部品と擦れるようなものはできるだけ摩耗するのを抑えるため、耐摩耗に優れた金属が望ましいわけです。
でも、ただ単に何かを固定するだけの用途ならわざわざ硬い金属を利用する必要はありませんし、鉄の種類によっても値段がバラバラです。
金属に耐摩耗性を付加させるためには、コーティングや工業用メッキを施す他に「焼入れ」という手段があります。
焼入れ方法は色々あるんですが、焼入れをすることで金属に歪みが生じますので、精密な寸法が必要な部品は焼入れ後に研磨処理などの仕上げ加工の工程を入れます。
もちろん、焼入れや研磨をすると加工代は高くなるので町工場に随時予算を相談すべきです。
実際、思っているよりも加工代って高いと覚悟しておくべきです。
(中には足元を見てくる会社もあるかもしれませんけどね)
非鉄金属の種類も細かく分類されるので調べてみよう
鉄以外の金属には、ステンレス、銅、アルミ、真鍮などがありますね。
他にもアルミ青銅とか、銅タングステンとかチタンなんかもあるけど、レアな材料を使うと入手困難だったり、加工困難だったりするので加工屋さんがどんな金属を削っているのか聞いてみましょう。
加工屋さんによって、対応している金属が異なったりします。
アルミ専門とかステンレス専門とか、難削材専門とか。
チタンはかなり硬い金属で難削材なので、加工できる会社が限られてくるのは有名な話。
非鉄金属の加工は加工屋さんによりけり
非鉄金属の加工は鉄の加工と違い、加工条件などが異なります。
何よりも、普段から鉄をメインに加工している町工場では非鉄金属を削ることを嫌う会社も少なくありません。
その理由は単純に加工条件が分からないというだけでなく、スクラップの分別の問題もある。
スクラップとは削りカスのことで、削りカスは鉄と非鉄金属では分別しておく必要があるため、鉄を削って加工した機械でセッティングを変更しアルミを削るという場合は、削りカスができるだけ混ざらないように一度キレイに機械の掃除をすることになるんです。
実は、この掃除の手間がかなり面倒。
だから、町工場では鉄だったら鉄しか削らない、アルミだったらアルミ専門、ステンレスならステンレス専門っていうようにしているところが多いのです。
うちの会社のように、何でもかんでも削っちゃうという会社は少数派かも。
つまり、自分が作りたい物の材質を決めたら、その材質をメインに削っている町工場をできるだけ探す方がいいですね。
ちなみに、スクラップを分別しなければならない理由はスクラップの買取単価が金属の種類によって様々であるためです。
町工場で排出されるスクラップはスクラップ屋さんに金属の種類ごとに1kgあたり○○円という相場で引き取ってもらうのです。
つまり、町工場が1Kg100円の金属を100kgスクラップ屋さんに渡したら10,000円の雑収入が町工場に入るということです。
ところが、金属スクラップを混ぜこぜにしてしまうと、1Kgあたり100円で買い取ってもらえたはずの金属さえ、1Kgあたり20円くらいまで暴落することがあるからです。
そうすると、同じ100Kgのスクラップを渡しても2,000円にしかなりません。
これは、加工屋さんからしたら痛手なんです。
アルミもステンレスも合金
町工場で普段削っている鉄は合金だよって書きましたが、実はアルミとステンレスだって合金です。
だから、アルミにもA1070、A5052、ジュラルミンなどなど様々です。
ネットで「アルミ 種類」と検索されるとすぐに分かると思います。
どういった所でどんな種類のアルミが使われているのかなどを事前に調べておくと良いだろう。
ステンレスに関して、あなたはステンレスは「錆びない」「磁石が引っ付かない」という認識をもっていませんか?
実はこれも違う。
通常取り扱うステンレスも合金なので、錆びるし、磁石に引っ付くタイプのものも、引っ付かないものもある。
名前はSUS304とかSUS630とか色々です。
こちらも、ネットで「ステンレス 種類」と検索すれば詳しく書かれているサイトがたくさんあるのでそちらを参照されたし。
樹脂や超硬金属はどこの町工場でも削るわけじゃない
町工場の中には樹脂(MCナイロンが多い)やプラスチックを専門に加工している会社もあります。
むしろ、鉄を削っている町工場に樹脂を削ってくれと頼んでも断られる確率70%くらいじゃないでしょうか。
とにかく加工の勝手が全く異なるのだ。
樹脂は鉄と比べて非常に軽い。
それに耐磨耗にすぐれたものもあるので、高負荷がかからないようなところで使われることも多い。
もしも、樹脂(MCナイロン)に興味を持ったなら、樹脂を加工している加工屋さんに問い合わせしてみよう。
「こういうところに使おうかと思うんですが、どうでしょうか?」ってね。
あと、まず個人で使うことは無いだろうと思うが補足的に書いておくが、超硬金属というものがある。
鉄を削るための鉄というイメージを持ってもらえればよい。
普通は目的の形に焼結(焼き固める)して成型し、砥石でチョロチョロ研磨したり、放電加工と言われる方法で加工したりする。
鉄を削る刃物では削れない金属です。
ま、そういうのもあるんだよって思ってくれればいいかな。
結論:材質によって相談する加工屋が変わる
結局、材料の種類なんてむちゃくちゃ多いので、わざわざ全て調べてから加工依頼をするなんてかなり面倒ですね。
大まかに、こういう金属の種類があるんだなってことだけでも認識しておいてください。
ネット等で個人依頼を受けてくれる加工屋さんを見つけた時、どんな金属を加工してくれるんだろうか?って疑問に思えたらいい。
あとは、自分が必要としている部品がどんな材質を使うべきか、鉄は鉄でもどこに使うのかを説明して正しい金属の選別ができれば、後々困ることも少ないだろう。
水気の多い場所で使うから錆びをできるだけ抑えたいとか、負荷がかかる部品だから割れにくいような金属にしたいとか、凄く擦れる部品だから耐磨耗に優れた金属がよいとかを伝えることです。
「こんなのが欲しいんです」という形だけでなく、その一歩先を伝えることができればイイネ!