【鉄の種類と特性】 鉄材の基本から用途まで詳細解説

鉄の種類 部品加工依頼の「い・ろ・は」

金属部品の加工依頼をしようと思うが、素材の指定は「鉄」で大丈夫だろうか?

なんて思ったりしませんか?

実は、加工屋としては「鉄で作ってください」と言われると困っちゃうんですよね(笑)

 

鉄は私たちの日常生活に欠かせない素材です。建設、製造、輸送など幅広い産業で使用されており、その堅牢さと加工しやすさから、特に重要視されています。

鉄は工業界の”米”だなんてことも昔は言われていたくらいです。

 

この記事では、そんな鉄の基本的な性質とその幅広い利用について解説します。

本記事を読めば、鉄に関する理解を深め、鉄材の選定に役立つ情報を得ることができるでしょう。

鉄とは

鉄(Fe)は地球の地殻に豊富に存在し、その堅牢さと加工しやすさから、建築や機械製造、輸送など多岐にわたる分野で広く利用されています。

その物理的特性とコストパフォーマンスの高さが、鉄の普及と利用の主要な要因です。

 

でも、世の中に存在している「鉄製」だと私たちが思っている金属のほぼ全ては、純粋な鉄(Fe)で出来ているわけではありません。

ほぼ何かしら他の成分が混ぜられた合金だったりします。

混ぜる素材によって、それぞれの合金の特性が変わり、環境に合わせて使い分けをされているというわけです。

 

鉄の種類一覧

鉄は、古代から現代に至るまで重要な素材として使用されてきました。鉄の種類とその用途について詳しく見ていきましょう。

1. 純鉄 (Pure Iron)

特徴:

  • 炭素含有量が0.04%未満の非常に純度の高い鉄。
  • 柔らかく、延性が高い。

用途:

  • 主に研究用途や特殊な工業製品の製造に使用。
  • 電磁石のコアや実験用の標準物質としても利用される。

2. 鋳鉄 (Cast Iron)

特徴:

  • 炭素含有量が2%から4%の鉄合金。
  • 高硬度で脆い。
  • 鋳造性に優れる。

用途:

  • エンジンブロックやパイプ、鍋などの鋳造製品に使用。
  • 強度が必要な機械部品や建築材料としても活用される。

3. 鋼 (Steel)

特徴:

  • 炭素含有量が0.02%から2%の鉄合金。
  • 強度、硬度、延性のバランスが良い。

用途:

  • 建築用の構造材、自動車の車体、家電製品、工具など幅広い分野で使用。
  • 合金成分を調整することで、耐腐食性や耐熱性などの特性を付与できる。

4. ステンレス鋼 (Stainless Steel)

特徴:

  • クロム含有量が10.5%以上の耐食性に優れた鉄合金。
  • 錆びにくく、耐久性が高い。

用途:

  • キッチン用品、医療器具、建築用外装材、化学プラントの装置など。
  • 美観を維持しつつ、耐久性が求められる場面で使用される。

5. 高速工具鋼 (High-Speed Steel, HSS)

特徴:

  • タングステン、モリブデン、クロム、バナジウムなどを含む高合金鋼。
  • 高温でも硬さを維持する。

用途:

  • ドリルビット、フライスカッター、タップなどの工具に使用。
  • 高速切削や高温作業が必要な場面で活躍する。

6. 耐熱鋼 (Heat-Resistant Steel)

特徴:

  • 高温下での強度と耐酸化性を持つ特殊鋼。
  • ニッケル、クロム、モリブデンを含むことが多い。

用途:

  • ガスタービン、ボイラー、排気システムなどの高温環境下で使用。
  • 熱交換器や炉の部品としても利用される。

7. 電磁鋼 (Electrical Steel)

特徴:

  • 磁性材料としての特性を持つ鉄合金。
  • 現象鉄(炭素が非常に少ない)にケイ素を添加。

用途:

  • 変圧器、モーター、発電機などのコア材料。
  • 電力の効率的な伝送や変換に不可欠。

鉄の種類のまとめ

鉄はその特性に応じて多くの種類があり、それぞれの用途に応じて使い分けられています。

純鉄は研究や特殊用途に、鋳鉄は鋳造製品に、鋼は構造材や工具に、ステンレス鋼は耐食性が求められる場面に、高速工具鋼は高速切削工具に、耐熱鋼は高温環境下に、電磁鋼は電磁用途にと、多岐にわたる用途で活躍しています。

それぞれの特性を理解し、適切に選択することで、最適な性能を引き出すことができます。

 

実際、趣味の範疇で加工依頼が多いのは鋼の加工です。

というのも、コストの問題も関係してくるからで、金属加工を行っている会社の中でも最も多く加工しているのが鋼でもあるからですね。

 

鋼の種類と選び方:趣味での部品加工依頼ガイド

以下には趣味で部品を加工したいと考えている方が、業者に依頼する際に知っておくべき鋼の種類と選び方について詳しく解説します。

鋼は多様な特性を持つため、目的に応じて適切な種類を選ぶことが重要です。

1. 炭素鋼 (Carbon Steel)

特徴:

  • 鉄と炭素を主成分とし、炭素含有量によって性質が変わります。
  • 炭素含有量が低いほど柔らかく加工しやすく、逆に高いほど硬くて耐摩耗性が高まります。

主な種類と用途:

  • 低炭素鋼 (Mild Steel):
    • 炭素含有量: 0.05%~0.25%
    • 用途: 車体部品、パイプ、建築用材料
    • 特徴: 柔らかく、加工しやすい。溶接も容易。
  • 中炭素鋼 (Medium Carbon Steel):
    • 炭素含有量: 0.25%~0.60%
    • 用途: シャフト、歯車、鉄道部品
    • 特徴: 強度と硬度のバランスが良く、加工と強度が両立。
  • 高炭素鋼 (High Carbon Steel):
    • 炭素含有量: 0.60%~1.5%
    • 用途: スプリング、刃物、工具
    • 特徴: 非常に硬く、耐摩耗性が高い。加工には専用の工具が必要。

2. 合金鋼 (Alloy Steel)

特徴:

  • 鉄と炭素に加え、クロム、モリブデン、ニッケルなどの元素を含む。
  • 特定の特性(耐熱性、耐腐食性、強度など)を向上させるための添加物が入っている。

主な種類と用途:

  • クロムモリブデン鋼 (Chromoly Steel):
    • 用途: 自転車のフレーム、航空機部品、工具
    • 特徴: 高強度で耐疲労性が高く、比較的軽量。
  • ニッケル鋼 (Nickel Steel):
    • 用途: シャフト、ボルト、航空機部品
    • 特徴: 強靭性があり、低温環境でも性能を発揮。

3. ステンレス鋼 (Stainless Steel)

特徴:

  • 主成分は鉄とクロム。クロム含有量が10.5%以上。
  • 高い耐腐食性を持つ。

主な種類と用途:

  • オーステナイト系ステンレス鋼 (Austenitic Stainless Steel):
    • 代表例: SUS304、SUS316
    • 用途: キッチン用品、医療器具、食品加工機械
    • 特徴: 非磁性で加工性が良く、優れた耐腐食性。
  • フェライト系ステンレス鋼 (Ferritic Stainless Steel):
    • 代表例: SUS430
    • 用途: 家電製品、車の排気部品
    • 特徴: 磁性があり、成形性に優れる。
  • マルテンサイト系ステンレス鋼 (Martensitic Stainless Steel):
    • 代表例: SUS410
    • 用途: 刃物、バルブ部品
    • 特徴: 高硬度で耐摩耗性が高い。

4. 工具鋼 (Tool Steel)

特徴:

  • 高硬度で耐摩耗性、耐熱性が高い。
  • 特殊な用途に向けた合金鋼。

主な種類と用途:

  • 冷間工具鋼 (Cold Work Tool Steel):
    • 用途: ダイカスト金型、パンチ、せん断工具
    • 特徴: 高硬度で常温での使用に適する。
  • 熱間工具鋼 (Hot Work Tool Steel):
    • 用途: 鍛造用金型、押出し用金型
    • 特徴: 高温下でも硬度を保つ。

5. 高速工具鋼 (High-Speed Steel, HSS)

特徴:

  • 高速切削に耐える硬度と耐熱性を持つ。
  • タングステン、モリブデン、クロムなどを含む。

用途:

  • ドリルビット、フライスカッター、タップ
  • 高速切削や高温作業が必要な場面で活躍する。

選び方のポイント

  1. 用途を明確にする:
    • 何に使う部品なのか、どのような特性が必要かを明確にする。
    • 例: 腐食に強い材料が必要ならステンレス鋼、硬度が重要なら工具鋼。
  2. 加工方法を考慮する:
    • 加工の難易度やコストも考慮。
    • 例: 溶接が多いなら低炭素鋼、加工のしやすさを重視するならオーステナイト系ステンレス鋼。
  3. 予算を設定する:
    • 材料費と加工費を考慮して予算を設定する。
  4. 業者と相談する:
    • 専門知識を持つ業者に相談し、最適な材料を選んでもらう。
    • 加工可能な材料やコストに関する情報を得る。

まとめ

鋼の種類と選び方を理解することで、部品加工依頼がスムーズに進み、満足のいく結果を得ることができます。目的に応じて適切な鋼を選び、加工業者としっかり相談して進めてください。

これにより、趣味のプロジェクトがより一層充実したものになるでしょう。

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