卓上ボール盤は木材やプラスチック・金属の素材に穴をあけたり、面取りをしたりするために使用されるコンパクトな機械です。
安価なものから高価なものまで、さまざまですが、個人が趣味レベルで使うには安い卓上ボール盤で十分でしょう。
しかし、切削加工をすると分かりますがドリルで穴をあけるだけでは欲しい物の形が出来上がらないことがほとんどです。やはりエンドミルなどで切削したい・・・という欲求も出てきますよね。
そんな時、卓上ボール盤で穴加工もエンドミルを使ったフライス加工もできればと思うかもしれませんので、本稿では卓上ボール盤でのフライス加工についての注意点を紹介します。
卓上ボール盤におけるエンドミル加工の問題点
卓上ボール盤の構造は、テーブルが固定されている状態で主軸が回転して上下に動くようになっていて、主軸の上下は横についているレバーを動かすことで操作します。
しかし、フライス盤として使用するにあたって決定的に足りない機構があります。
それは以下の4つです。
- 主軸の強度(トルク)が弱い
- 主軸の回転速度調整ができない
- テーブルがXY方向に自由に動かせない
- Z軸方向の位置固定ができない
主軸のトルク不足
フライス加工において、主軸のトルクは非常に重要です。
剛性と表現してもよいですが、特に金属の切削をしようと思っているのであれば剛性が必要になります。トルクが弱いと回転する刃物をワーク(被切削物)に接触させた瞬間に刃物の回転が抵抗に負けて止まってしまったり、ボール盤全体の剛性の低さが故に刃物が暴れてしまったりします。
ボール盤のトルクを上げるためには、モーターやプーリを変えてしまわないといけないでしょう。
主軸の回転速度調整
使用するエンドミルの大きさに合わせて、本来ならば主軸の回転速度を変えないといけません。小さい刃物はより高速に回転させ、大きい刃物では回転速度をゆっくりにします。
ところが、卓上ボール盤では主軸の回転速度調整機能がついていないものがほとんどです。速度調整するためには、モーターをデジタル制御するかギヤを使って変速させればよいですが、かなり大掛かりな改造を強いられることになってしまいます。
卓上ボール盤のテーブルをXY方向に動かす
卓上ボール盤のテーブルそのものは前後(XY軸)方向に動かないので、クロステーブルを乗せるのが最も簡単な方法。ハンドルを回すことで前後にテーブルを動かせる。
安価なものであれば、価格も一万円程度で手に入ります。
ただし、一言申し上げておくと強度は弱いです。強引に加工しちゃうと壊れるかも・・・
もしも、もう少し本気で考えているならば、ヤフオクなどで鋳物製で出来ているようなガッチリしたものを購入した方がよいです。なんなら、バイスを乗せられるくらいのものが理想ですね。
Z軸方向の位置固定をする
エンドミルで切削加工をするのであれば、Z軸方向の調整ができないといけません。一定の深さの溝を削る場合、常にZ軸は一定の位置で固定された状態でないといけませんね。
ボール盤の種類やメーカーによってもことなりますが、主軸の位置を固定できないものも結構あります。特に安価な卓上ボール盤では固定できないものが多い。
どうにかしてボール盤を大改造し、Z軸の位置固定ができるようにできるのであればよいですが、時間もお金もかかるのであまりお勧めしません。
卓上ボール盤を改造してフライス盤として使えるようになるか?
色々な課題をなんとかクリアできたとして、果たして卓上ボール盤は卓上フライス盤へと進化を遂げることができるのか?
見た目はそれっぽく使えそうになるかもしれませんが、主軸の振れや強度、全体の剛性や精度の問題が必ず出ます。フライス盤には及びません。
それに、結構なお金が掛かってしまいますね・・・
卓上フライス盤として販売されているような製品もありますが、小さな部品をちょっと加工するだけとか、趣味や遊びで使いたいのであれば、そんなに問題にならないかもしれません。
でも、結構本気の部品を作りたいのであれば加工専門業者に依頼するべきかと思います。