協力会社に部品加工依頼をするときに、紙の図面を渡して加工してもらう。
これが今までの一般的な流れでしたが、今は3Dデータも普及しており3Dデータで見積依頼、3Dデータで加工依頼を行うという流れを作りたいという企業は増えてきました。
しかし、町工場の実態は3Dデータはおろか、2Dデータすら見れない扱えないという零細会社も非常に多い。
それでもって、三次サプライヤー以下が多くの部品供給を支えているという実情もあります。
未だに紙をFAXで・・・ということが多いのです。
そんな現実に相反するかのように、3Dデータで見積依頼・加工依頼をしたいがどうすれば対応してくれるのかということについて、町工場の人間である私が代わりに解説します。
3Dデータを使うことのメリット
紙図面には無い3Dデータを活用するメリットはいくつかあります。
以下にその具体例を示します。
高精度な見積もりが可能
- 3Dデータを利用することで、見積もりの精度が飛躍的に向上します。
- 図面と違い、3Dデータは製品の寸法や形状を正確に表現できるため、加工業者は詳細な情報を基に見積もりを作成することができます。
- 例えば、複雑な形状の部品でも3Dデータなら一目で確認でき、加工に必要な工数や材料費を正確に見積もることができます。
- その結果、見積もりの精度が高まり、予期せぬ追加費用や納期の遅延を防ぐことができます。
時間とコストの節約
- 3Dデータを利用することで、見積もりから加工までの時間とコストを大幅に削減できます。
- 3Dデータは加工業者がすぐに利用できる形式で提供されるため、図面の読み取りや解釈にかかる時間が不要です。
- 例えば、紙の図面からデジタルデータに変換する手間や、図面の解釈ミスによる再設計のリスクがなくなります。
- そのため、全体の工程がスムーズに進み、コストも削減できます。
コミュニケーションの円滑化
- 3Dデータは、製品の仕様や要件をより直感的に理解できるため、依頼者と加工業者の間のコミュニケーションを円滑にします。
- 3Dデータは視覚的に理解しやすく、誤解やミスコミュニケーションを減らすことができます。
- 例えば、製品の詳細な形状や機能を3Dデータで共有することで、設計意図が正確に伝わり、依頼者の要求に対する理解が深まります。
- その結果、依頼内容の把握が容易になり、スムーズなプロジェクト進行が可能となります。
グローバルな取引に対応
- 3Dデータはデジタル形式であるため、地理的な制約を受けずにグローバルな取引が可能です。
- 3Dデータはインターネットを通じて瞬時に共有でき、遠隔地の加工業者ともスムーズにやり取りができます。
- 例えば、海外の加工業者に依頼する場合でも、3Dデータならメールやクラウドサービスを利用して即座にデータを共有し、迅速な見積もりを受け取ることができます。
- その結果、世界中の優れた加工業者にアクセスでき、最適なコストと品質を追求することができます。
3Dデータを利用する際の注意点
3Dデータをうまく活用できれば、紙図面ではわかり辛かった形状理解の問題もクリアできますし、FAXで送信して「数字が不鮮明で読み取りづらい」という問題も解決します。
ただし、データの授受においてはいくつかの問題点もあります。
データ形式の確認
3Dデータを利用する際には、対応するデータ形式を確認することが重要です。
加工業者によっては、対応できるデータ形式が限られている場合があります。
例えば、一般的に利用されるSTL形式やSTEP形式が主流ですが、特定の業者では独自の形式を求めることもあります。
依頼前に業者とデータ形式を確認し、適切な形式でデータを提供しましょう。
データの正確性
3Dデータの正確性は見積もりや加工の成功に直結します。
データに誤りがあると、見積もりが正確に行えず、加工後の製品に不具合が生じる可能性があります。
例えば、寸法が間違っていると、加工後に組み立てができない部品が出来上がることがあります。
データの作成時には、正確性に十分注意し、必要ならば第三者の確認を依頼することが重要です。
見積依頼の流れと必要事項
3Dデータを使うメリットとデメリットを少し書きましたが、ここからは実際に加工業者に依頼するときの実情と問題点について書いてみます。
公差やタップ加工、面粗度の指示は別ファイルで
3Dデータは部品の形状認識をするという点においては非常に優秀です。
視覚的に形が理解できる利点がある一方、多くの3Dデータでは面粗度や寸法公差についてはデータ上で指示することが難しいです。
これをクリアするには、サーフェイスの色を変えたりして別ファイルで色別に面粗度を指定するなどの対策をする必要があります。
他にも、ネジ穴なのか、キリ穴なのか、精度穴なのかの区別も同じく色分けをするなどして別ファイルで指示するのが一般的です。
こういった対策をすれば問題ないように見えますが、これが見積や加工のプロセスで1つ1つ確認をしないといけないという面倒さが出てきてしまうのです。
紙図面ならば、図面の中に全て情報が記載されているので楽なんですよね。
3Dデータを2Dデータor紙図面に変換が必要!?
上記の問題をクリアできたとして、受け取った3Dデータをそのまま活用する外注先を探すのも一苦労の現在。
町工場ではいまだに紙図面をFAXでやりとりしている会社は非常に多いです。
お客様の中には、一流メーカーなのに見積も注文も紙図面で行われ、挙句の果てには寸法数字が不鮮明だったりするのでデータを要求すると「データはありません」と言われる始末。。。
終わってますね。
あるいは、図面が読みずらいから問い合わせをしたらデータが送られてくるとか。
データがあるなら最初から出せよ!と言いたいのは山々だったりする。
そんな現状において、仮に一次受けや二次受けの会社が3Dデータで見積を行ったとします。
受注に至り、いざ外注に依頼しなきゃという段階で結局は紙図面や2Dデータ化するという作業を行わないといけません。
なぜなら、3Dデータは見れない・扱えないという町工場が多いから。
そんな会社に依頼しなければええやん!と思うかもしれませんが、価格や納期を支えているのは町工場なんです。
町工場が全体的にDX化を進められて対応できるようになれば問題はないのかもしれませんが、今のところは数年先に環境が出来上がっているとは考えにくいですね。
3Dデータで見積依頼・加工依頼をする流れ
3Dデータで見積依頼・加工依頼をするためには、まず以下のいずれかの会社を確保しておく必要があります。
- 3Dデータで直接見積をしてくれる業者
- 3Dデータを2Dデータや紙図面に変換してくれる業者
個人的な感覚ですと、大手企業の一次受け商社さんのほとんどは3Dデータを二次受けや3次受けの会社のために2Dデータ化をしたり紙図面化したりする作業をしません。
というか出来る人がいない???
結局、3Dデータを扱える2次受け以下の会社のどこかがやるか、データ変換を業務として受けてくれる会社を利用するしかない。
発注元が自らデータ変換をするのが今までの流れでしたが、図面枚数が多くなると年間で非常に多くの時間を費やすことになり、コストもはかり知れません。
ただ、その業務をほかの会社に「タダでやれ」と押し付けてしまうのは、受ける側も受け入れられないので協議が必要になるでしょう。
まとめ
3Dデータを利用することで、高精度な見積もりが可能になり、時間とコストの節約が期待できます。しかし、データ形式や正確性の確認、適切なコミュニケーションとデータセキュリティが重要です。
まずは、3Dデータを活用して見積依頼や加工依頼を効率化できる協力会社を見つけましょう。