ジュラルミンは、高強度で軽量なアルミニウム合金の一種で、多くの産業分野で重要な役割を果たしています。
特に航空宇宙、自動車、スポーツ用品などの分野で広く使用されており、その優れた機械的特性から高い評価を受けていることから、個人依頼でもジュラルミンを使ってみたいという要求は時々あります。
とはいえ、ジュラルミンって具体的に何なの?普通のアルミと何が違うの?という方に向けて、本記事では、ジュラルミンの基本的な特性とともに、代表的な種類である2017アルミニウム合金(ジュラルミン)、2024アルミニウム合金(超ジュラルミン)、および7075アルミニウム合金(超々ジュラルミン)について詳しく解説します。
これらの合金の違いやそれぞれの特性、用途について理解することで、適切な材料選定の参考にしてもらえると幸いです。
ジュラルミンとは?
ジュラルミンは、アルミニウムを基材とし、主に銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)を添加した高強度のアルミニウム合金です。その名前は、ジュラルミンを初めて開発したドイツのデューレン社(Dürener Metallwerke AG)の名前に由来します。
20世紀初頭に開発され、1911年に初めて特許が取得されました。
とにかく柔らかいアルミを鋼くらい硬くしてやったぞ!というのがジュラルミンってことです。
そんな硬いアルミであるジュラルミンの開発は航空産業に革命をもたらし、従来の木材や鉄に代わる新しい軽量材料として飛行機の構造材に採用されました。
第一次世界大戦中には、軍用機の製造においてジュラルミンの需要が急増し、その後の民間航空機の発展にも大きく貢献しています。
ジュラルミンの種類と特徴
ジュラルミンには
- ジュラルミン
- 超ジュラルミン
- 超々ジュラルミン
の大きく分けて3種類があります。
それぞれに特徴がありますので以下に解説致します。
A2017アルミニウム合金(ジュラルミン)
特徴と用途: A2017アルミニウム合金は、銅(Cu)を主な合金元素とするジュラルミンの代表的な種類です。高い強度と適度な耐食性を持ち、機械的な加工性にも優れています。
このため、航空機の構造材や自動車の部品、船舶の部材などに広く使用されています。また、ボルトやリベットなどの締結部品としても適しています。
メリットとデメリット
メリット:
- 高強度
- 良好な加工性
- 航空機や自動車部品など多用途に対応
デメリット:
- 耐食性がやや低い(防食処理が必要な場合がある)
- 熱処理後の寸法安定性に注意が必要
A2024アルミニウム合金(超ジュラルミン)
特徴と用途: A2024アルミニウム合金は、銅(Cu)とマグネシウム(Mg)を主成分とする超ジュラルミンです。A2017よりもマグネシウムの量を少し増やしてより硬くしたものになります。
非常に高い強度と優れた疲労特性を持ち、航空宇宙産業で特に重視される材料です。航空機のフレームや翼の構造部材、宇宙ロケットのタンクなど、極めて高い強度と耐久性が求められる用途に使用されます。
メリットとデメリット
メリット:
- 非常に高い強度
- 優れた疲労特性
- 航空宇宙分野での実績
デメリット:
- 耐食性が低い(防食処理が必要)
- 溶接性が悪い
A7075アルミニウム合金(超々ジュラルミン)
特徴と用途: A7075アルミニウム合金は、超ジュラルミンよりもさらにマグネシウム(Mg)と亜鉛(Zn)の添加量を増やしたもので、非常に高い強度と硬度を持つ超々ジュラルミンです。
強度は全てのアルミニウム合金の中で最高水準にあり、高負荷がかかる構造部材に適しています。航空機の機体や高性能なスポーツ用品、自動車の高性能部品などに使用されます。
メリットとデメリット
メリット:
- 最高水準の強度と硬度
- 優れた機械的特性
- 高負荷がかかる用途に適している
デメリット:
- 耐食性が最も低い(防食処理が必要)
- 加工時に特別な注意が必要
ジュラルミンの種類と成分の違い
ジュラルミン、超ジュラルミン、超々ジュラルミンの化学組成は、それぞれの特性に大きく影響を与えます。
以下の表に、代表的な2017、2024、7075アルミニウム合金の化学組成を示します。
| 合金 | Al(アルミニウム) | Cu(銅) | Mg(マグネシウム) | Mn(マンガン) | Zn(亜鉛) | Cr(クロム) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2017(ジュラルミン) | 91.7-94.7% | 3.5-4.5% | 0.4-0.8% | 0.4-1.0% | – | – |
| 2024(超ジュラルミン) | 90.7-94.7% | 3.8-4.9% | 1.2-1.8% | 0.3-0.9% | – | – |
| 7075(超々ジュラルミン) | 87.1-91.4% | 1.2-2.0% | 2.1-2.9% | – | 5.1-6.1% | 0.18-0.28% |
物理的特性の比較(強度、硬度、耐食性)
各合金の物理的特性を以下に比較します。
| 合金 | 引張強度(MPa) | 硬度(HB) | 耐食性 |
|---|---|---|---|
| 2017(ジュラルミン) | 415-540 | 105-120 | 中 |
| 2024(超ジュラルミン) | 470-520 | 120-140 | 低 |
| 7075(超々ジュラルミン) | 540-590 | 150-160 | 非常に低 |
用途の違い
各合金の特性を活かした用途の違いを以下にまとめます。
- 2017(ジュラルミン)
- 航空機の構造材: 高強度と軽量性が求められるため、航空機のフレームや部品に使用。
- 自動車部品: 軽量でありながら強度が必要なエンジン部品やシャーシに適用。
- 船舶の部材: 耐食性が中程度で、海水環境でも使用可能。
- 2024(超ジュラルミン)
- 航空機のフレーム: 非常に高い強度と疲労特性により、特に重要な構造部材に使用。
- 宇宙ロケットのタンク: 極めて高い耐久性と軽量性が求められる用途に最適。
- 7075(超々ジュラルミン)
- 航空機の機体: 最高水準の強度が必要な部位に使用される。
- スポーツ用品: 高強度を活かし、自転車のフレームやゴルフクラブなどに適用。
- 高性能自動車部品: 高負荷のかかる部品に使用され、耐久性と性能を向上させる。
このように、成分と特性を比較すると実際にどの材料を使えばよいのか検討するときに参考になりますね。
ジュラルミンの加工方法
ジュラルミンの種類については説明した通りですが、次に知っておきたいのは加工性です。
以下に、ジュラルミンの加工性について解説します。
熱処理
ジュラルミンは、熱処理によってその特性を最大限に引き出すことができます。熱処理は、材料の内部構造を変化させることで、強度、硬度、耐久性を向上させます。ジュラルミンの熱処理プロセスは、一般的に以下のステップで行われます。
- 溶体化処理: 合金を高温(約495-505°C)で加熱し、合金元素を固溶させる。このプロセスにより、材料の均一な組織を形成します。
- 急冷(クエンチ): 加熱後、急速に冷却することで合金元素を固溶体のまま保持します。これにより、強度と硬度が向上します。
- 時効処理: 一定の温度で保持することで、析出硬化を促進し、さらに強度を高めます。時効温度は、合金の種類によって異なります(例:2017は約175°C、7075は約120°C)。
加工技術(切削、成形、溶接)
ジュラルミンは、その優れた機械的特性から、さまざまな加工技術に対応できます。
切削: ジュラルミンは加工性に優れており、精密な切削が可能です。特に2017や2024合金は、切削加工で高い仕上がり品質を得ることができます。切削工具の選定と適切な冷却剤の使用が重要です。
成形: ジュラルミンは、プレス加工や鍛造による成形が可能です。高い成形性を持ち、複雑な形状の部品を一体成形することができます。これにより、軽量かつ高強度な構造物の製造が可能となります。
溶接: ジュラルミンの溶接は難易度が高く、特に2024や7075合金は、溶接部の強度が低下することがありますので一般的には溶接は行いません。
ジュラルミンのメリットとデメリット
高強度をもつジュラルミンだからこそ魅力がある材料ですが、もちろん、メリットだらけではありません。デメリットもありますので、両方を知っておくことが大切です。
利点(軽量、高強度、加工のしやすさ)
ジュラルミンの主要な利点は以下の通りです
- 軽量: アルミニウム合金であるジュラルミンは、他の金属材料に比べて非常に軽量です。これにより、航空機や自動車などの輸送機器での使用に最適です。
- 高強度: 銅やマグネシウム、亜鉛などの合金元素を含むため、非常に高い強度を持ちます。これにより、構造材や機械部品として広く利用されています。
- 加工のしやすさ: ジュラルミンは加工性に優れており、切削、成形などの加工方法に対応できる一方で溶接性は非常に悪いです。
欠点(コスト、加工時の注意点)
ジュラルミンにはいくつかの欠点も存在します
- コスト: 高強度のアルミニウム合金であるジュラルミンは、原材料コストが高めです。また、熱処理や特殊な加工技術を必要とすることもあるため、製造コストも増加します。
- 加工時の注意点: ジュラルミンの溶接や熱処理には高度な技術が必要です。不適切な溶接や熱処理を行うと、材料の強度が低下する可能性があります。また、2017や2024合金は耐食性が低いため、防食処理が必要な場合があります。
まとめ
ジュラルミンは、高強度と軽量性を兼ね備えた優れたアルミニウム合金です。その特性は、航空機、自動車、船舶、スポーツ用品など、様々な産業で重要な役割を果たしています。
特に、航空宇宙産業では、その軽量性と高強度が飛行性能や燃費向上に大きく寄与しており、ジュラルミンの存在なしには現代の航空機技術は語れません。
ジュラルミンの魅力は、その多用途性にもあります。2017アルミニウム合金(ジュラルミン)は高い加工性と強度を持ち、2024アルミニウム合金(超ジュラルミン)は非常に高い強度と疲労特性を持っています。さらに、7075アルミニウム合金(超々ジュラルミン)は最高水準の強度と硬度を持ち、特に高負荷のかかる用途での使用が適しています。
適切なジュラルミンの種類を選定することで、製品の性能や耐久性を最大限に引き出すことができます。各合金の特性をしっかりと理解し、具体的な用途や環境条件に応じて最適な材料を選ぶことが、あなたのプロジェクトを成功させる鍵となるでしょう。
余談として、最も硬いとされるA7075よりもさらに硬いアルミがあります。
それはアルミーゴ。
日本の大同特殊鋼という会社が作っているアルミ素材です。
ただ、価格が高い・・・






