金属加工工具や鍛造部品、あるいは装飾目的で使われるコーティングもありますが、TiC、TiCN、TiNコーティングは聞く頻度が多いコーティングです。
でも、これらのコーティングって何が違うの?
使い分けは?
ということを質問されても「うーん。よくわからん」ということあるんじゃないでしょうか。
ということで、ここではよくある3つのコーティングの違いを解説します。
ちなみに、コーティングをする方法としてPVD、CVDという2つのメジャーな手法がありますが、それらの違いについても知っておくとよいですよ。
TiCコーティングとは
気化させたチタン(Ti)が金属表面の炭素(C)と反応してできるのがTiCコーティング。
チタンカーバード(炭化チタン)膜で、俗に「タイシー」と呼ぶ人も多いですね。
色は銀色(少し青っぽさもあったりする)をしていて、非常に硬くセラミックスコーティングの中ではDLC(ダイヤモンドライクコーティング)に次ぐ硬さのようで、ビッカースHv3300~3700ほどにもなるとされます。
炭化膜のなかでは特に硬いコーティングであるため、硬さと滑り性、耐摩耗性が求められるような金型によく使われます。
また、滑りが良くて摩擦係数が小さいということは、金属どうしの擦れで焼き付けが起こりにくいわけですから摺動部品にも使われるし、金属をせん断する刃物にもTiCコーティングは多用されています。
※せん断というのは、挟んで押し切るというイメージです。
膜厚2~4μm(コーティング業者によって、コーティング手法などの違いから対応できる膜厚は変わります)
耐剥離性が高いので、せん断刃物などに使用してもコーティングが剥がれて困るということも少ないですし、複雑形状の部品や穴がたくさんある多孔部品へのコーティングも良好。
以上から、TiCコーティングの特徴は、硬くて滑り性がよいということです。
TiNコーティングとは
チタン(Ti)と窒素(N)の合金被膜である窒化チタン膜のコーティングです。
PVDコーティングの中でも最も凡用的(スタンダード)なコーティングのため、目にする機会が多い。
ビッカースHv2000~2500程度あり、刃物の品質を向上させます。
膜厚も1~4μmと薄いので、よほどの超精密部品でないかぎりは変寸を気にするほどではありません。
一般的なカッターナイフとかにも「チタンコート」と書かれ、TiNコーティングした刃を採用しているものがあります。
使っているカッターナイフの切れ味がすぐに悪くなって困る・・・という人は、チタンコートされたカッターナイフを使うといいですよ。
チタンは自然界に多く存在する安価な金属であることからコーティング費用はおそらく、最も安価な部類になると思います。
耐磨耗性の向上に加え、耐蝕性に優れていいるので製品が錆びにくくなります。
また黄色~金色をしているので見た目がキレイで、TiNは人体に無害であることから食器とかの装飾などにも使われたりします。
sponsored linkTiCNコーティングとは
TiNコーティングに炭素(C)を加え、より高硬度な仕様にさせたものがTiCNコーティングです。
ビッカースHv3000~3500程度あり、TiNよりもHv1000くらい高くなります。
紫色から黒っぽい色をしていて、炭素が加わることでTiNの金色から急に色合いがダークになりますね。
工具によくコーティングされています。
超硬エンドミルにはTiCNコーティングしているものが多い気がする。
膜厚はTiNと同じくらいの1~4μm
TiCNの目的は、TiNだとちょっと硬度が不足しているかな・・・というような部品に適用され、TiNをバージョンアップさせたものというイメージでよいかも。
工具ではステンレス鋼やインコネル、ハステロイなどの難削材と呼ばれる鋼材向けの工具に施されていることが多い。
あるいは、冷間鍛造用のパンチとか絞り金型などにもよく使われます。
TiC、TiCN、TiNコーティングの比較と使い分け
コーティングの使い分けというのは、その部品の用途によって試行錯誤することが多いです。
この部品にはこのコーティングじゃないとダメというようなことはありません。
「今までTiNでやってきたけど、TiCNを試してみるか」的な感覚でやることが多いです。
ぶっちゃけ、やってみんと分からんというわけです。
ただ、基礎知識としてどのコーティングが硬いのか。
見た目はどうか。
耐食性はどうか。
などを吟味できることが大事ですね。
これらのコーティングの他にも、DLCコーティングとか、TD処理などもありますので調べてみてはいかがでしょうか。