金属・非金属および樹脂(プラスチック)の各種部品には「量産」と「単品」という数による製造ジャンルの分け方があります。
単品はその名の通り図面1枚につき1個ずつの加工依頼。
あるいは、2個、3個・・・・と数が増えていっても単品加工と呼ぶことはあります。
ただし、どこまでが単品加工なのかという概念はいまいち定まっていません。
部品形状にもよりますが、1ロットの注文数が50個を超えると
多いなぁ~(汗
という町工場もあれば、100~500個くらいまでは普通にできるというところもあるので、本当に様々です。
「単品=小ロット」というほうが正しいかもしれません。
一方、量産の概念も案外定まっていない。
私が知るところでは、500個以上、1000個以上じゃないとやらない(量産ではない)という会社も多い。
それはさておき、ここでは「量産加工」の相談をしたいなぁと思った時に加工屋として色々と思案することを書いてみます。
量産加工をする時の流れ
基本的には見積りをして、注文になったから即量産というよりも、まずは試作をして問題が無いかを確認した上で正式に量産開始というのが普通ですね。
形はできるけれども、加工精度に問題がでたり、できると思っていたが案外加工に難航するという見積り時には分からなかったことが出てくることもあります。
なので、生産量、加工精度、コスト、納期、材質、大きさなど幾つもの要素を総合的に判断し、最適な加工工程を設定しなければなりません。
試作後の検証によっては材質変更や加工業者の変更、加工方法・加工工程の変更などをすることになります。
”量産”の加工方法にはどんな方法がある?
一言で”量産”といっても、その加工方法は多様です。
金属部品であれば主な方法としては以下の4つが挙げられます。
- 鋳造
- 鍛造
- 金属粉末射出成型(MIM)
- 切削
樹脂(プラスチック)製品ならば
- 成形(射出成型や真空注型)
- 切削
どの方法を使って量産するかを決めるのは、その部品形状や大きさによります。
量産加工するための機械設備って特別なものだろうか?と思うかもしれませんが、案外そうでもなかったりします。
普通に単品加工をメインにしている加工業者が使うような工作機械でも、人手をかけないように自動ロボットを導入して24時間体制で稼働させているところもあります。
あるいは、CNC自動旋盤と呼ばれる機械のように2mとか3mもある長い材料を供給することで、人が1個ずつ材料を取り付けたりする必要がないまま、自動で製品を作り続けることも可能です。
他にも、例えばネジは鍛造と切削の組み合わせで作られていますし、ペットボトルの蓋のようなプラスチック製品の多くは射出成型です。
もしも、あなたが作りたいモノをどのような方法で量産すべきか分からないというのであれば、いくつかの業者に相談してみることをおススメします。
その時、量産加工をしている業者さんのホームページなどに掲載されている製品サンプル画像などを見てください。
自分が作りたいモノに近い形状やロット数を掲載している場合は、対応の可能性が高いです。
あとは、問い合わせをして相談してみるのがベストですね。
ちなみに、電話するのがいいですよ。
メールとかだと、迷惑メールに振り分けられていたりして気づかれない場合も時々ありますから。
継続性のある量産加工依頼かどうか?で業者の対応が変わる
量産加工を依頼する時の問題点はいくつかあります。
まず1つ目がスポット的な量産なのか、継続案件なのかによって会社の対応が変わります。
今回ポッキリの注文(スポット注文)になるけど、数千個の部品加工をお願いしたいという場合、量産屋という看板を掲げる会社ではなかなか隙間に入れてくれないことがある。
あるいは、やってくれるけど割高になる。
というのも、その量産加工に金型や治具が必要になるかどうか?ということです。
もしも継続案件ならば、金型代は初回のみ別途請求で次回以降の発注では金型代は請求しない。
あるいは、最初から金型代は請求せず、製品製造をしていくうちに金型費用をペイするよう計算するという方法があります。
でも、1回ポッキリか継続するか現時点では分からないということの方が多いかと思いますので、普通は金型費用を別途請求されることかと思います。
ただ、量産加工をメインにしている量産屋は、受注品ごとに生産ラインの確保をしていて継続的な計画を立てて部品生産をしているところも多いです。
いきなり「これを何千個だけ加工してほしい」と言われても、生産ラインに空きがないと言われることもあります。
加工屋としても、お金を稼げるお客さんを優先しちゃいます。
例えば、3年間は毎月の継続発注を約束しますといったことが言えると、かなり本気で考えてくれます(笑)
こういった背景があるので、各加工会社のホームページなどに「数千個の加工でも対応しています」と書かれてあっても安心できません。
実際に問い合わせをしてみれば、継続的に受注できる場合のみ受けますという返事が返ってくることが多いのです。
でも、世の中そんな仕事ばかりではありませんし、スポット案件もゴロゴロありますから諦めずに業者探しをしましょう。
数10社に問い合わせをして、ようやく対応してくれるところが見つかることなんて普通ですからね。
sponsored link試作と量産は別々の会社に依頼しなければならないこともある
まずは切削で少量を作ってみて検証し、問題なければ量産加工。
そんな流れで進める場合は、試作(切削)業者と量産(鍛造・鋳造など)業者で分けることがあります。
試作なんて不要。
単純な形状だし精密な機械部品でもなんでもないからという場合は、一発本番で量産することもあります。
それは、あなたの考え次第ですね。
量産した製品はどのように運ぶのか?輸送費の問題
部品の量産において、製造とは別に問題となるのが物流です。
実はこの問題が結構大きいことに、みんな気づかなかったりします。
1個500g(0.5kg)の品物であっても1000個あれば、500,000g = 500kgになります。
10,000個だと5tですからね。
さらに、重量だけでなく体積も考えないとダメです。
小さいものなら、箱に梱包して輸送することができますが、体積が大きいなら輸送方法も変わりますから梱包費用もバカにならないのです。
そこに加えて輸送費が発生しますので、単純に1個の加工賃だけを見ていては奈落の底に落ちることになる。
特に海外で量産加工をする時には輸送コストは重要なファクターです。
輸送で問題となることに時間も挙げられる。
国内輸送ですとさほどトラブルも少ないでしょうが、海外生産の場合は船便を使うことになると輸送日数が1週間以上かかることも普通にあるので、納期管理がよりタイトになりますね。
量産加工を相談する時のポイント
量産加工の相談でポイントとして挙げられることは以下のようなことです。
- 継続案件かスポット案件か
- 月産生産量
- 生産方法の指定(鍛造か切削かなど)
- 材質
- 製品の物流
- 支払い方法
上では書いていませんが、支払い方法についても量産は気をつけたいところです。
前金をいくらか払い、製造完了後に残金全額を支払えば発送。
この流れが最も多い気がします。
個人依頼の場合は、全額支払いを先に済ませないと前に進めてくれないことも多いです。
支払い能力の有無に信用性がどうしても企業と比べると個人は弱いのが一般的ですものね。
以前、うちの会社でネコをモチーフにした鍛造品の量産を中国メーカーで作ったことがあります。
この時は、データも何も無かったので私がCADデータを作成し、このデータを中国業者に送って製造したんですけど、精度も必要のないものだったので意外とトラブルなく終わりました。
たしか5000個くらい作ったと思います。
梱包形態はこんな感じで袋にガサガサっと入れてます。
本当に5000個あるのかどうやって確かめるんだ?と思う人もいるかもしれませんが、こういった量産品は1個1個を数えることよりも、1個あたりの重さから総重量を計算して数を確認する方法が一般的です。
ちなみにスポット案件でした。
まぁ、とにかく量産は単品よりも結構大変なことが多くて時間がかかると思ってください。