砲金と真鍮の違い|見分け方と用途を完全解説

砲金と真鍮の違い|見分け方と用途を完全解説 材料

金属加工や修理の現場で「この部品、砲金?それとも真鍮?」と迷った経験はありませんか?見た目が似ているこの2つの金属ですが、成分・硬さ・耐食性・価格などに大きな違いがあります。誤って使い分けると、思わぬ劣化やトラブルを招くことも。

本記事では、砲金と真鍮の違いをわかりやすく解説し、見分け方・用途・特徴の比較まで網羅しています。色味や重量感、磁性の有無など目視や簡易的な判別法も紹介しているので、実務にすぐ活かせます。

この記事を読めば、砲金と真鍮の選定で迷うことはもうありません。ぜひ最後までご覧ください。

 

砲金と真鍮の違いとは?素材・価格・見た目を徹底比較

砲金と真鍮の違いとは?素材・価格・見た目を徹底比較

 

「砲金と真鍮って何が違うの?」という疑問を持った方に向けて、まずはこの2つの金属の違いをわかりやすく整理していきます。銅をベースにした合金である点は共通していますが、実は成分や価格、耐久性、加工性、さらには見た目まで異なる点が多くあります。この章では、素材特性の比較を通じて基本の違いをつかみましょう。

 

砲金と真鍮の成分と性質の違い

砲金と真鍮は、どちらも銅を主成分とした合金(金属)ですが、混ぜられている元素(副成分)によって性質が大きく異なります。まずは、それぞれの組成と特性のちがいを見ていきましょう。

真鍮(Brass)は、銅に亜鉛を加えた合金です。一般的に、銅60〜70%、亜鉛30〜40%の割合で構成されており、黄色味が強く黄金色のような光沢を持っています。加工がしやすく、見た目も美しいため、装飾品やドアノブ、楽器(トランペットなど)にもよく使われます。電気伝導性も比較的高く、電気部品にも適しています。

一方の砲金(Gunmetal)は、銅にスズと鉛を加えた青銅系の合金で、主成分は銅88%、スズ8〜10%、鉛2〜4%程度とされます(※日本産業規格:CAC406など)。砲金は耐摩耗性や耐腐食性にすぐれ、特に海水や湿気に強いのが特徴です。したがって、バルブ、水道管、船舶のプロペラ、工業機械の軸受け部品など、長期間にわたって耐久性が要求される分野に向いています。

また、硬さの点でも違いがあります。真鍮は比較的やわらかく加工性が良いですが、砲金は硬くて削りにくいものの、耐久性や耐摩耗性にすぐれており、過酷な環境下でも安定しています。

【参考】<br>
日本産業規格(JIS H5120)による砲金の成分比率
https://www.jisc.go.jp

 

見た目と価格の違い|色・重さ・相場感を比較

ここでは、砲金と真鍮の外観と価格のちがいについて詳しく見ていきましょう。見た目の判断は現場でもよく行われる方法なので、覚えておくと便利です。

真鍮はその名のとおり、鮮やかな黄色や金色に近い色合いをしており、表面に明るい光沢が出やすいのが特徴です。これに対して砲金は、赤みがかった落ち着いた黄金色〜赤銅色に見えることが多く、やや鈍い輝きになります。時間がたつと、砲金は黒ずんだり緑青(ろくしょう)が出ることもあり、真鍮よりも経年変化しやすいと言えます。

また、同じ大きさのかたまりでも、砲金の方がわずかに比重が高く、重く感じる傾向があります。これは、スズや鉛といった密度の高い元素が含まれているためです。

価格面でも違いがあります。スクラップ市場などでは、砲金の方が真鍮よりも高価に取引される傾向があり、2025年現在の相場では、砲金スクラップがキロあたり約700〜850円、真鍮スクラップが500〜700円程度とされています(地域差あり)。これは、スズの市場価格が高いためであり、素材としての価値にも差が出ます。

【参考】
非鉄金属スクラップ相場情報|スクラップ価格ドットコム
https://www.super-recycle.com

 

砲金と真鍮の違いを現場でどう見分ける?簡易チェック法と注意点

砲金と真鍮の違いを現場でどう見分ける?簡易チェック法と注意点

「これは砲金か?真鍮か?」と迷った時に役立つ、現場で使える判別方法をまとめました。特別な測定器がなくても、色・重さ・火花・音・磁性の有無などである程度見分けがつきます。ここでは、実際の現場判断に使えるチェック方法と、ありがちな間違いを防ぐための注意点もあわせて解説します。

 

砲金か真鍮かを見分ける5つの現場的ポイント

現場で金属の種類をすぐに見分けたいとき、専用の分析機器がないケースも多いですよね。そこでここでは、目視や簡易的な方法で砲金と真鍮を判別するための、5つの実用的チェック法をご紹介します。

①色合いと光沢感を観察する
真鍮は黄金色に近い黄色で、光沢が強いのが特長です。一方、砲金は赤銅色~茶褐色の落ち着いた色合いで、やや鈍い光沢を持ちます。光が当たったときの反射の仕方にも違いがあり、砲金は少しマットな印象を受ける場合が多いです。

②音をたたいて確かめる
金属を叩いたときの音響の違いも判断材料になります。真鍮は「キーン」と高めで澄んだ音が鳴る傾向があり、楽器にもよく使われます。対して砲金は、やや低く鈍い音を出すことが多く、音の響き方が比較的短く感じられるでしょう。

③削ってみて削り屑の色を確認する
削り屑(切粉)の色にも注目しましょう。真鍮を削ると、明るい黄色の削り粉が出ます。砲金は、赤みがかった濃い色の削り屑になることが多く、少し重たい印象の粉になります。
これは、それぞれの合金に含まれる主成分の違い(亜鉛とスズ)に由来しています。

④磁石で反応をチェック
基本的に、真鍮も砲金も非磁性体(磁石にくっつかない)です。ただし、不純物や別の素材が混ざっていると反応が出ることがあります。磁石に反応した場合は、「砲金・真鍮以外の金属」が混入している可能性もあるため注意が必要です。

⑤持ち比べて比重の違いを感じる
同じ形状・体積の金属であれば、砲金の方がわずかに重く感じられます。これは、スズや鉛といった密度の高い元素が含まれているためです。目安として、真鍮の比重は約8.4g/cm³、砲金は約8.7〜8.9g/cm³程度とされています。

 

よくある誤判定とその回避方法

現場での判別は便利な反面、誤った判断をしてしまうリスクもあります。ここでは、特によくある誤認パターンと、それを防ぐためのポイントをご紹介します。

①真鍮に似た砲金・鋳物との混同
砲金と真鍮は、加工や経年によって見た目が似てくることがあります。とくに使用後の部品や酸化した金属では、色や光沢だけでは見分けがつきにくくなります。また、鋳物青銅(BC系)など、砲金と同じくスズを含む合金も混在していると誤判定の元になります。

このような場合は、「削ってみる」「重さで比べる」といった複数のチェック方法を併用することで、判定精度を高めることができます。

②スズ含有量を見落とすことでの誤用
特に砲金はスズの含有量が多いため、加工性や耐食性に大きな影響を与えます。見た目で真鍮と判断してしまい、耐摩耗性が必要な箇所に誤って使うと、摩耗や腐食による不具合が発生する可能性があります。

そのため、「用途によって素材を疑う視点」も大切です。たとえば、水道メーターやバルブのような耐腐食性・耐久性が重視される場面では、まず砲金を想定し、それに合致するかを慎重に見極める必要があります。

このように、現場での簡易判別にはコツがありますが、複数の要素を組み合わせて判断する視点が、最も信頼性の高い方法です。

 

砲金と真鍮の違いを活かす用途選定と現場での正しい使い方

砲金と真鍮の違いを活かす用途選定と現場での正しい使い方

砲金と真鍮はそれぞれ適した用途があります。配管部品、バルブ、水道メーター、彫金素材など、それぞれが活躍する現場は異なります。この章では、現場で失敗しないための素材選定の基準と、用途に応じたおすすめの使い分け方について詳しく解説します。また、検索では出てこない現場でのトラブル事例とその回避策も紹介します。

 

砲金と真鍮の用途の違いと選び方のコツ

砲金と真鍮は、それぞれ異なる特性と強みを持っているため、使い分けを誤ると性能の低下やトラブルの原因になります。ここでは、実務での素材選定の判断基準についてご説明します。

 

まず、砲金(銅+スズ+鉛)は、耐腐食性や耐摩耗性が高く、海水や高湿度環境に強いという特長があります。そのため、水道管・バルブ・ポンプ部品・船舶用プロペラなど、水を扱う場面や屋外設備での使用が向いています。とくに、JIS規格CAC406(BC6)は、配管部品用として幅広く採用されており、長期間メンテナンス不要な設計を可能にします。

一方、真鍮(銅+亜鉛)は、加工性にすぐれ、美しい金色の光沢を持っているため、装飾品・家具金物・楽器(トランペットなど)・ネームプレートなど、デザイン性が求められる用途に最適です。さらに、削りやすくロウ付け性も良いため、複雑な形状や繊細な加工が必要な場面でも選ばれます。

選び方のポイントとしては、以下のような軸で判断するのが効果的です。

使用環境 選ぶべき素材
海水・湿気・水道 砲金(耐腐食性重視)
加工のしやすさ重視 真鍮(加工性・デザイン性重視)
長寿命・重負荷 砲金(耐摩耗性)
外観重視・軽量部品 真鍮(見た目・価格重視)

現場で起こりやすいトラブルと素材ミスによる失敗例

ここでは、実際の現場で発生しやすい素材ミスによるトラブルと、それを回避するための視点をお伝えします。

 

①耐圧不足による漏れや破損
真鍮は加工がしやすい反面、強度や耐圧性がやや劣るため、高圧の水や蒸気がかかるバルブやジョイント部に使うと、内部から割れたり、微細な漏れを引き起こすことがあります。とくに冬場の凍結などで内部圧力が高まった際には、真鍮製の継手が破損するケースが多く報告されています。

②腐食による早期劣化と事故リスク
真鍮を屋外や湿気の多い環境に使用すると、緑青(ろくしょう)やピッティング腐食が発生しやすくなります。とくに海水が飛散するような沿岸部では、腐食が急速に進行し、半年~1年以内で部品交換が必要になる例もあります。これは、スズの含有がない真鍮が耐食性に乏しいためです。

このような事例を避けるには、「設置環境を正しく評価すること」「素材特性を理解したうえで選定すること」が何より重要です。安易に「見た目で判断」せず、使用条件と求められる耐久性を軸に、長期的視点で素材選択を行うことが、結果的にコストダウンにもつながります。

砲金と真鍮は、どちらも優れた素材ですが、向いている場面と使ってはいけない場面がはっきりしているため、「違いを理解したうえで正しく選ぶ」ことが、品質・安全・信頼性を守るカギになります。

 

まとめ

砲金と真鍮は、どちらも銅を主成分とした合金ですが、それぞれの成分・性質・用途には大きな違いがあります。砲金はスズや鉛を含み、耐腐食性や耐摩耗性に優れた素材で、水道設備やバルブ、船舶など過酷な環境下での使用に適しています。一方の真鍮は亜鉛を加えた合金で、加工しやすく外観が美しいことから、装飾品や楽器、機械部品などに多く使われています。

また、現場での見分け方としては、「色合い」「音の響き」「削り屑の色」「磁石への反応」「比重」など、簡易的な5つのチェックポイントがあり、これらを複合的に用いることで、ある程度の判別が可能です。

素材選定を誤ると、耐圧不足による破損腐食による早期劣化といったトラブルを招きかねません。そのため、使用環境や目的に応じて、素材の特性を正しく理解したうえで選ぶことが重要です。

この記事を通じて、砲金と真鍮の違いを正確に把握し、現場での判断力と信頼性を高めていただければ幸いです。

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