「板金」
薄い金属板を曲げたり溶接したり切断したりすることで製品をつくる工法の1つ。
自分で組み立てるタイプの金属性のラック(棚)がホームセンターなどで安く販売されているのはご存知の通り。
価格は数千円程度が相場ですね。
しかし、あれは大量に同じものを自動で作るから実現できる価格であって、オリジナル製品となると高くなるというのは理解できると思います。
とはいえ、ここではこれは何円ですよということを示すわけではないが、ある程度の相場ってもんがあるんですよとお伝えできれば、もしも個人で板金や溶接加工を依頼する時には参考になるのではないでしょうか。
特に、最近では個人法人問わずに色々なご相談を多く頂く中には板金・溶接の話が出てくるので。
個人依頼の板金・溶接加工は受けてくれるのか?
まず金額云々の前に、個人依頼で1個から曲げ加工、絞り加工、溶接加工、レーザー加工などにより製品製作を受けてくれる会社があるのかどうか。
それでもって、ぼったくり金額じゃない良心的な価格で対応してくれるかどうか。
それは、会社次第。
正直なところ、一番手っ取り早いというか間違いない解決策は知り合いにそういう仕事をしている人にお願いすることです。
だって、知り合いからなら「仕方ないなぁ、まぁやったるわ」という感じで受けてくれるだろうし、頼みやすいしね。
[speech_bubble type=”fb” subtype=”L1″ icon=”yakuza.jpg” name=”おっちゃん”]そんな知り合いいねぇよ! [/speech_bubble]
という人がほとんどですけどね。。。
さて、知り合いに板金加工をしてくれそうな人がいない場合は、もうインターネットで探すしかないですね。
とりあえず、調べて問い合わせを入れてみるしかない。
それでもって、見積もりをしてくれるようなら検討できるでしょう。
ただし、個人依頼だからとか法人だからとかの区別ではなく、単品モノ(オーダーメイド品を含む)はどうしても価格は高くなります。
流れ作業的に量産するものと比べると、曲げ加工ならベンダー機というもので金型を使って曲げますし、プレスも同じ。
溶接はどのような仕様でやるのかにもよるし、材質によっても価格は変わります。
例えば、曲げ加工の場合だと他の品物用の金型が転用できそうならば問題ないのですが、特別に金型を作らないと製作できない形状だとまた困ります。
溶接の場合「素材を支給するので溶接してください」という要望も時々あるが、これはリスキー。
というのも、支給してくれる素材の種類が何か不明なことがあるからです。
通常は依頼そのものを受けないか、受けたとしても失敗するリスクをお伝えした上で万が一失敗しても代金は請求します。
素材によっては溶接が難しいものもあるので、そういった意味では素材調達からお願いしておく方が無難です。
実は、個人からの依頼を多くの会社が受けたがらない理由は単品モノだからということと別のところにあるのです。
個人依頼で嫌われるケース
個人依頼で最も懸念するのは、図面の問題。
これこそが個人依頼を嫌う最大の理由だと言えます。
図面がなくて、文面だけでこれくらいの大きさでこんな形のものと伝えられることがあるが、正直なところイメージするものは人によって変わる可能性もあります。
やっぱり、イラストでもよいので図面は必要です。
ですが、イラストで送ってくれる場合でも「ここの部分は構造がどうなってるの?」と言いたくなるようなものも多い。
正式な図面ではないものが多く、依頼を受けてから見積もりを出すまでに色々と質問をしたりしながらと時間がかかってしまうのです。
見積りをする時間は正直お金が発生しませんし、それだけ時間をかけて新たに図面をこちらで描いてあげないといけないとかとなると、また労力が必要です。
それも仕事だろと言われたらそうなんですが、やっぱり会社としては最終的に利益に繋がるようにもっていかないといけません。
本当ならば、図面化する場合は製図代というものが発生したりもするのですが、正直私のところでは製図代を請求しません。
だからなおさら、価格については協力できるようにと考えるのですが、それでも納得頂けないケースは多々あります。
そしてもう1つ。
価格を厳しく言う割には、品質にも非常に注文が多いケース。
大量生産されている市販品を元に金額設定をされているのかどうかは分かりませんが、想定予算が異常に低いという人もいます。
「予算は3,000円くらい」なんて言われたものが、実際に見積もりをしてみたら最低でも10,000円超えはするというものもあります。
やはり、まだまだ価格に対する感覚の違いというものは痛感することがよくある。
それでもって、もっとピカピカにしてほしいとか、公差精度を厳しく指定してきたりもすることがある。正直なところ悩みます。
加工物の素材による価格の違い
これはアルミ製で薄い板からレーザーでまずは形を切り抜き、曲げ加工と溶接加工で製作したもの(長さ900mmあります)。
個人のお客様に納品したものですが、これがステンレスや鉄だとまた金額が大きく変わります。
重量だってアルミだと軽いですが、ステンレスになると約3倍になる。
送料も変わりますよね。
価格的には大きさによりますが、ステンレスが割と高いです。
何で作ると安くつくか、そして用途によって素材は何が適切なのかも直接加工屋に相談してみるとよいかもしれません。
ちなみにですが、上の写真のもので1~2万円くらいです(正確な金額は伏せておきます)。
手のひらに乗るくらいのもので、曲げ加工をするだけなら1,000~3,000円くらいでしょうか。(内容にも寄ります)
いずれにしても、予算を考える時にはホームセンターで売っているようなものの価格を想定してはいけません。
これでこんなにするの?!となってしまいますので。
逆に、上の写真のようなもので10万円近くの見積もり金額を提示されたらドン引きしますけどね(笑)
案外難しい曲げ加工
金属を折り曲げて形を作るというのは、簡単そうで難しい。
ただ、ハンガーやゼムクリップのような細い金属(針金)を折り曲げて形を作るものは、専用機があるのでアレンジしやすい。
中には動物の形や花の形などをしているもの、パズルピースの形をしているゼムクリップもあるが、 これも専用機で器用に作られます。
一方、太い金属棒を曲げる場合はこのようにはいきません。
かなり強い力を加えないとダメですもの。
どうするかというと、専用の金型を使って曲げます。
これは一例ですが、パイプを曲げるのか、丸棒を曲げるのかによってもノウハウは違いますし、素材の太さによっても変わります。
そして、なによりワイヤー線であろうと、太いパイプであろうと曲げ加工はロット数が多いということ。
1つだけのために、加工セッティングをして・・・となると、効率が非常に悪くてものすごくコストがかかります。
曲げる時間はたかだか知れているとはいえ、実際に加工するまでの準備で時間が大変なんです。
個人依頼で多いことに、出来上がる製品だけを見て数千円くらいでしょう?と言われるのですが、実際の中身をもっと知ってほしいと思う次第です。
単品の場合は特に加工代というものの中に準備代(段取り代)が含まれるんですよということ。
板金加工の相場とは何を基準にしているのか?
結局のところ、加工知識がない人にとっては相場なんてものは分かりません。
レーザーで切る場合は、切断する素材の厚みや大きさがどれくらいなのか。
また、素材は切り抜いて捨てる部分が多く出ないか?
曲げ加工の場合は、使える金型があるかどうか?
無ければ作らないといけないです。(めちゃ高い)
素材の種類は何か?
溶接は必要なのか?
など。
色々な要素が組み合わさるので、相場はあって無いようなものだと思ってください。
たまたま転用できる金型を持っていれば、安く済むかもしれませんがなければ高い。
とりあえずは、見積もり依頼を出すしかないということです。