うちの親父が初めてマシニングセンタを導入した昭和も終わりの頃。
あの頃は「おぉ!マシニングセンタを入れたんか!」と物見遊山のような人もウチのような小さな町工場に訪れたという。
あれから30年の月日が経つ今日この頃。
マシニングセンタが市場に登場して以来、工作機械の進化は止むことがない。
今や五軸加工機が置いてあっても誰も驚かない時代です。
実は、五軸加工機は最近になって開発されたものではなく、マシニングセンタが登場した当初から着々と実用化に向けて開発が水面下で進んでいたのです。
機械の自動化だけでなく、簡易熱処理から研磨まで1台の機械で全て対応できるマシンまで登場している時代です。
さらに、今後は3Dプリンターとコラボした複合機械が市場に広まることでしょう。
3Dプリンターにはまだまだ不足している部分があり、伸びしろがある分野でもあるため、今後に期待する人は多い。
さて、そんな時代の風雲児とも言える五軸マシニングセンタですが、時々、五面加工機と何が違うの?という質問を聞いたりもします。
確かに、ものづくりの経験が浅い者にとっては、紛らわしい言葉ですね。
ここでは、両者の違いについて簡単にお伝えします。
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そもそも五軸ってどの軸のこと?
3軸加工とか5軸加工とか聞くけど、そもそも「軸」ってどこの軸を言っているのか?
まず、3軸とはX,Y,Zの軸のことです。
このうち、Z方向の動きはヘッド(工具がついている軸)の動きです。
X,Y方向はテーブルが動きます。
なので、実際に素材をエンドミルなどで削っているのは、工具が動いているのではなく、テーブルに固定した素材が動いているということになります。
それに加えて、工具はZ方向に上下に動くということ。
この組み合わせによって、3軸が同時に動かせるようになれば、3次元加工の1つであるヘリカル加工もできます。
ヘリカル加工とは、Z軸方向にらせん状に工具を動かして加工する方法のことです。
らせん状に工具を動かすということは、X,Y,Z全ての軸が同時に動かないといけませんよね。
今のマシニングセンタはX,Y,Zの同軸移動は当たり前ですが、市場に出た初期の頃はオプションでした。
なので昔の古いマシニングセンタを持っているところでは、いまだにヘリカル加工ができなかったりします。
XY, XZ, YZ いずれかの動きしかできないんです。
もしかすると「2.5次元加工」という言葉を聞いたことがある人もいるかもしれません。
CAD/CAMソフトが出た頃も、2.5次元加工と3次元加工に分かれていましたが、2.5次元加工というのは、X,Zの2軸もしくはY,Zの2軸の動きで加工するプログラムのことを指していました。
そに比べて5軸とは、X,Y,Zに2つの回転軸を加えたものを指します。
追加される2軸は3つあります。
それがA軸、B軸、C軸。
- A軸とは、X軸を中心にした回転軸
- B軸とは、Y軸を中心にした回転軸
- C軸とは、Z軸を中心にした回転軸
5軸の組み合わせは、AC、BCもしくはABになります。
例えば、AC軸タイプの場合
BC軸タイプの場合
この2つのAC、BCタイプは立型のマシニングで採用されています。
立型マシニングとは、工具が下向き(Z軸方向)に取付られるタイプのマシニングのこと。
工具を横向き(X軸もしくはY軸方向)に取り付ける、横型のマシニングの場合は、AB軸タイプもあります。
この加わる2回転軸が工作機械のどの部分に加わるかによって機械のタイプも変わります。
削る素材(ワーク)を固定するテーブルにA軸もしくはB軸とC軸があるタイプもあれば、工具を取り付けたヘッドに回転軸が追加されているものもあります。
ちなみに、工具そのものの回転軸(主軸)は5軸の ”軸” にカウントしません。
あくまでも、機械の動きに対しての移動軸のことです。
五面加工機とは?
五面加工機とは機械テーブルに固定したワークに対して、テーブルと接地していない5面を加工できる門型の工作機械のことです。
つまり、工具が上からも横からも出てくる、もしくは、主軸ヘッドが真横に傾くことができる機械です。
五軸機械との違いは、その用途にあると言えます。
五面加工機は主にセッティングが大変な大物加工に使われます。
いわゆる門型加工機と呼ばれるものです。
五面加工機のメリットは、段取りが1回で済むことと、加工物の取り外しをしないまま加工を続けられるので、大物であっても高精度な加工がしやすいということです。
ここで、五面加工機も五軸加工機も結局は加工するワークサイズの違いだけの問題か?と疑問を持つ人もいるが、基本的にはその考えで概ね間違いではない。
五面加工機でも主軸ヘッドに2方向の回転軸がついているものは、五軸加工が可能だからです。
五面加工機が求められるのは、主に、大型設備の架台やフレームの加工品などが必要な仕事で、品物を度々傾けたり寝かしたり起こしたりができないものに利用されています。
一方で、五軸加工機が求められるのは、複雑な形状だけれども溶接などにより接合するのではなく一体物で作りたい部品がある場合や、加工面が多く、できるだけ一回のセッティングで加工を終わらせてしまいたいような部品の製作に利用されます。
五面加工機と五軸加工機
よく似た名前ですが、その違いは主に製作するモノによって使い分けされているということです。
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