金属の焼入れ(熱処理)って何?その目的も色々

加工のこと

金属部品加工ではその製造工程の中に「焼入れ(熱処理)」という工程があります。

熱処理だけで1つの専門書がいくつもありますし、熱処理技能士という国家資格があるくらいですので、本気で勉強しようと思うとかなり時間をかけないといけません。

 

個人の部品加工依頼でも、熱処理のことを少し知っておくとより自分が思っている部品が出来上がるのではないかと思います。

ここでは、そもそも熱処理って何?なぜ行うのか?について素人向けに簡単に説明します。

熱処理ってどんな処理?

熱処理っていうのは、その名前の通り金属を加熱することを指しますが、熱処理をするほとんどの目的というのは金属を硬くすることです。

我々が普段から使用している金属製品のほとんどは合金で、鉄と言われているものも何かしらの元素が組み合わさったものです。

 

金属組成の中で、熱処理に最も重要な役割を果たすのが炭素。

炭素が含まれる量が多いほど、熱処理によって硬くなりやすいという性質があります。

なので、炭素が含まれていない金属は熱処理をしても硬くならないです。(例えば、SS400などの安価な材料とか)

 

熱処理ができる金属にはいくつもの種類があり、それらの種類によって熱処理で加熱する温度も変わります。

また、熱処理によって得られる硬度も変わりますので、部品の使用目的(どれくらいの硬度が必要か)によって、どの金属を使うかを選ぶわけです。

 

例えば、個人の部品加工依頼で熱処理をした方がよいものとしては、摺動部に使うようなシャフト(軸)とか、他の部品とよく擦れるようなもの、刃物などがあります。

金属を熱処理する時に気を付けておくべきこと

金属の熱処理の主な目的は硬化ですが、熱処理工程で気を付けておかないといけないことがあります。

 

1つは、部品加工の工程で注意することとして歪みが出ることです。

熱を加えることで、金属は必ず歪みが出ます。

なので、熱処理の後には許容できない寸法外れが出る可能性があるため、熱処理後に研磨などの工程を入れたりすることが多いです。

 

実際、熱処理でどれくらい歪むのかというと、形状や大きさによって異なります。

例えば、手のひらに乗る小さなサイコロ状のブロックだと、0.01~0.05mmくらいの歪みで収まるかもしれませんが、両手でよいしょ!と持たないといけないサイズになると、0.1~1mmくらいは歪むかもしれません。

特に、薄っぺらい板状のものやフォークのように枝分かれしているような形状のものは歪みが大きくなります。

 

個人依頼の部品で、熱処理工程を入れると金額が高くなるのは熱処理費用および熱処理後の仕上げ工程が必要になるからです。

熱処理って費用は高いの?

個人依頼では、依頼金額ができるだけ安くなるようにしたいと考えている人が多いかと思いますが、熱処理費用は業者によってバラバラです。

1kgあたり〇〇円という金額設定をすることが多いですが、加工依頼をする業者さんがどこの熱処理業者に依頼しているかにもよりますので、見積してもらってください。

 

2つ目に注意しておきたいのは、熱処理で硬くすればするほど金属は脆くなりやすいということです。

金属の硬度と靭性(しなやかさ)は、相反する性質です。

熱処理で硬度を上げれば靭性が下がります。

 

靭性が下がると、衝撃によって割れやすくなるんです。

なので、何でもかんでも硬くしたらよいというわけではなく、丁度よい硬さというものが各金属の種類ごとにあると思ってください。

 

また、大きい金属になると熱処理をしても中心まで熱が入らないため表面近くほど硬くなります。

逆に、小さい部品だと中まで硬度が入りやすくなるのですが、シャフトのように折れては困る部品は表面だけを硬くするのが理想です。

 

中まで硬くしてしまうと、靭性が無くなるので折れやすくなります。

そこで、行う熱処理が表面だけを硬くする高周波焼入れとか浸炭焼入れ窒化(タフトライド・イソナイト)です。

これらの熱処理は、部品の表層だけを硬くしてくれるので折れにくいのです。

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「硬くする」以外の目的で行う熱処理とは

金属を硬くする目的以外には、焼鈍しょうとん(焼きなまし)という処理で金属の歪みを除去する目的の熱処理もあります。

 

え?

ちょっと待てよ。

さっき、熱処理の注意点で歪みが出るって言ったやん!!!

 

という反論があるかと思いますので説明しておきます。

 

そもそも、熱処理で歪みが出るという理由は、熱によって金属の組織変化が起こるからなのですが、金属の組織変化というのは熱だけでなく、叩く、削るといった物理的な力によっても起こります。

 

ここで、1つ覚えておきたいのが残留応力や内部応力という言葉です。

金属にプレスしたり、削ったり、溶接したりすることで金属内部に発生するストレスだと思ってください。

このストレスは、時間をかけて自然解放されることもあれば、熱を加えることで解放させることもできます。

 

金属材料はその製造方法によって、いくらか残留応力を持っているものが多いです。

圧縮して引き延ばした圧延材、溶かして固めた鋳造材なども、それぞれの製造工程でストレスがかかっているので材料として出来上がった時点では、内部応力が残っているんです。

 

そんな材料をそのまま削ると、切削した部分から応力の解放が起こり、結果的に加工品に加工歪みが出やすくなります。

それを防ぐ目的で、あらかじめ焼鈍という熱処理を加えてあげることで、中に溜まっていた応力を解放し、切削による加工歪みを最小限に抑えることができるのです。

 

熱処理で歪むというのは、内部応力が解放されるからで同じことで、先に内部応力を解放しておいて切削加工による加工歪を最小限に抑えるかどうかの違いです。

焼鈍は溶接品に行うことが多いですよ。

まとめ

金属部品には熱処理という処理によって、部品性質を各段に向上させることができます。

一方で、熱処理が入ると加工工程が増えるのと、加工技術も少し高いものが求められるため、加工費は高くなります。

 

個人で部品加工依頼をする時には、その使用目的に合わせて熱処理の必要性を考えてみましょう。

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