平成27年に奈良県立医科大学の看護師さんからの「病院で使う針抜きの補助具を作れないか?」という相談を受け、頭を捻らせて色々と取り組んだものがあります。
それが、ヒューバー針の抜針補助具です。
本当に色々とやりましたよ。
ヒューバー針というのは、がん化学療法や高カロリー輸液の投与の時に使う針です。
皮膚内に埋め込まれた皮下埋没型中心静脈ポート(CVポート)に専用針であるヒューバー針を刺し込んで行われます。
化学療法サポートのサイトより引用 (http://chemo-support.jp/medical-apparatus/cvport.html)
ヒューバー針を使う理由は、抗がん剤投与などは何度も薬剤を血管内に投入する必要があるのですが、何度も何度も針を血管に抜き差しすると、血管がボロボロになってしまうからです。
CVポートを皮下に埋め込み利用することで血管の損傷を最小限に抑えているのです。
このCVポートにおいて、ヒューバー針を抜き差しする部分はセプタムと呼ばれ、シリコンゴムで構成されています。
メーカーにもよりますが、今回相談を受けたのは東レメディカル製の「ウィングドシュアカン」と呼ばれるヒューバー針が抜針する時に抜けにくい(抜くのに少し力がいる)とのことで、これは後でメーカーの方からお話しを聞くところによると、あえて抜けにくくしているということでした。
簡単に針が抜けて液漏れしてしまうのを防ぐためらしいです。
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抜けにくいがために起こる医療事故
ヒューバー針が抜けにくいということは、逆に、針を抜いた拍子に誤って指やその他のところに針を刺してしまう、いわゆる針刺し事故が起こってしまう可能性が高いというのです。
実際、病院では針を抜くときにちょっと、身構えてしまうという看護師もいるみたいでした。
そこで、簡単に安全に針を抜くことができる補助具が欲しい!とい要望が出たわけです。
試行錯誤を繰り返して作ったサンプル
あいにく、うちの会社は金属部品加工(切削加工)を本業としているため、樹脂とかプラスチック製品を製造するのは得意ではありません。
それでも何とかしてあげたいなぁと考えたアイデアをもとに3Dデータを作り、知り合いの3Dプリンターを使って作ってみたのです。
この後は、真空注形とかプラ型とかに進めて、実際に製品を作ることを構想していました。
一応、特許出願まで漕ぎ付け、平成28年(2017年)に無事出願できました。
他社が奈良県立医大に抜針補助具を作っていた!
これを見たとき、本当にビックリしましたよ。
なんと、2年前に私がやってきたことが、なんと「関西ものづくり新撰2019」選定製品として選ばれているんですもの。。。。
テクノグローバル株式会社さんが受賞されたみたいですね。
しかも、奈良県立医大のひとがテクノグローバル株式会社さんに話を持ちかけたみたいです。
なんだか悔しい思いをかみ殺しながら見ました。
悔しさを通りこして、笑えてくるのが不思議ですけどね。
少なくとも、先にやっていたのは私であることは事実です。
確かに私が試作していたものとは違いますが、基本構造は同じです。
試作したものを奈良県立医大の医者にもお渡ししたし、メールのやり取りやヒアリングまでしたのに。。。。
奈良県立医大さんは浮気をしたわけですね。
くそっ!!
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東レからは「いらない」と言われた事実
弊社ホームページでも書いていますが、実は、この機器を考えて試作しているときに東レメディカルの人と製品化に向けた話をしたことがあるんです。
ただ、その時の見解では抜針補助具はいらないという答えでした。
東レに限らず、ヒューバー針を販売しているメーカーの現在の市場の動きは針そのものに安全性を付加した(針刺し事故が起こらないように配慮された)商品を全面的に普及させたいネライがあるからだそうです。
実際、安全装置付きのヒューバー針は販売されています。
ただ、安全装置付きのヒューバー針はそうでないヒューバー針と比べてコストが高いため、貧乏病院などでは導入していないという事実がある。
まさしく、奈良県立医科大学が安全装置付きのヒューバー針を導入していないのは「高コスト」が原因なのかもしれません。
※奈良県立医科大学が貧乏かどうかは知らん。
製品開発の教訓
こういうことは、巷ではよくある話でしょうね。
お金を儲けるとか、儲けないという話とは関係なく、自分がやったことを評価されないのが悲しいですね。
でも、まぁ、自分の心の中にしまっておくことにします。
やっぱり、製品開発をする時はあきらめちゃダメってことなんですね。
何か面白いものを作ってみようかなぁとか考える日が増えそうです。。。。
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