こんにちは。
大阪の町工場で働く Akimaru です。
季節も春が近づいているためか、バイカーも本格的に愛車のカスタマイズを始めているのでしょうか?
何故かここ最近、個人様からの部品加工依頼が多い・・・
嫌じゃないけど難しい案件が多いのです。
さて、町工場の中には個人からの部品加工依頼を受けている会社もそこそこあります。
自社で出来ることのみに特化して受けるところもあれば、外注先を使ってでも対応してくれるところまで様々です。
ただ、どうしても個人からの依頼は対法人ではないため、単品物かつ見積もり価格が安価でないと受注に至らないことが多い上に、何故か個人依頼の案件は非常に難しい内容が多かったりもするのです。。。
また、仮に「お願いします」と言われたところで、会社が繁盛期で多忙な毎日であればなかなか個人依頼を優先してできないケースはある。
あくまでも、収益性の面からほとんどの町工場にとって、お客様の優位性は「法人>個人」となってしまいます。
これは仕方ないと思ってください。
すいませんね。
さて、弊社も今年に入ってから何かしら個人様からのご相談を多く頂いております。
概ねは「見積もりしてください」なんですが、何をどう加工するのか?がぼんやりした内容だったり(手書き図面すらない)、見積もり返答はしたものの音沙汰なしだったりもします。
あとは、現品所有物(バイク部品が多い)に追加工したらいくらになりますか?ってよく聞かれます。
正直、大きさも詳細な形も手にして見てみないと非常に難しい。
写真を見たら予想はできますけど、実物を送ってもらったら予想外だったなんてこともあります。
そもそも、加工ができるのか?
材質は何?(鉄・アルミ・ステンレスといっても種類はそれぞれに色々あります)
そんな疑問を持ちながらの見積もりはほぼ不可能ですねん(笑)
そういった見積もり作業、ご相談について考える時間も必要になるわけですが、時間は有限。
本業の仕事が超忙しい時には、迅速に対応できない場合もあります。
でも、逆に手すきの昼休み時間くらいで何とか処理できそうな案件だと、即日に加工をやってしまうこともあります。
要するに、タイミングですね。
個人依頼に限らないことですが、仕事の受注タイミングってすごく大事。
アマチュア無線に使うパーツの加工依頼
毎度、最速最短で対応できるわけではありませんが今回はタイミングと内容が良かったです。
事前に弊社ホームページに部品切削のお問合せを頂いたのですが「現物を見てみないと何とも判断できないですね~」ってお伝えしたところ、その週末の土曜日にわざわざお越し頂きました。
(弊社は第2土曜日以外は営業しています)
弊社の所在地は大阪府なんですけれど、他府県でも遠方の方の場合は現物をお送り頂くこともあります。
それでも、現物を見て加工不可となることもあるのはご了承の上ですけどね。
今回のお客様、弊社に車でいらしたのですけれど、すごい長いアンテナが車から伸びていました。
す、すごいアンテナですね!!(驚)
私の第一声はこの通り。
どうやら、アマチュア無線をされているようで、今回はそのアンテナを車体にくっつけるジョイント部分の加工依頼でした。
丸い部品の外径を削ってパイプにかちこむ仕事依頼
まずは、無線用のアンテナを車に取り付けるジョイントホルダーです。
これの先端はパイプになっていますね。
見たところ、シームレスパイプのようです。
たぶんステンレス。
このパイプの部分にこの部品を突っ込みたいとのことです。
市販品を購入されたものだそうですが、何の材質かさっぱり分かりません。
ついでに、外径には平目ローレット、表面にメッキ処理してありました。
もしも硬質クロムメッキやと厄介ですなぁ。
どうしようか・・・
お客様曰く、ローレットも無くていい。
メッキも無くていい。
とのこと。
とにかく、これを少し削ってパイプにかちこんで欲しいと。
なるほど。
では、とりあえず寸法をノギスで測ってみるか。
部品の寸法を測ってみたら・・・
まずは、パイプの内径です。
およそ18mmですね。
お次は、中に入れるやつ。
え~っと。約23mmですか。
ということは、外径を5mmくらい削らないといけないわけですね。
しかも、かちこみなので0.1mmでも削り過ぎるとパイプの中でとまってくれなくなるので注意です。
きっちりと止まらないといけませんので、スコーンとパイプの中に落ちたら最悪。
相手がシームレスパイプなので内径18mmも実際は歪な円なんですよね。。。
いい塩梅の寸法に削るのって難しいです。
機械で切削するより研削する方法にした
材質が何かもわからない。
メッキも何かわからない。
寸法も程よいところを少しずつ削って探さないといけない。
ということで、機械加工をするのは逆に面倒だなという結論に至りました。
なので砥石を使って研削してやることに。
もちろん手動でちょっとずつ研削して、いい塩梅の寸法を探します。
と思ったのだが、どうやって固定しよう??
で、よく見ると真ん中にネジがあいていますね。
このネジを利用して固定できないかなぁと考えました。
で、このネジの種類は何だろう?
そういえば、お客さんは 3/8-24UNF だと言っていたような・・・
試しに3/8-24UNFタップを通してみましたら入りました。
オッケー。
よし、じゃぁこのタップを使って固定しよう。
依頼部品の外径の研削作業
実は弊社には研磨機はありません。
代用としてエンドミルなどを研磨・成型するグラインダーを使うことにしました。
写真はすこし作業を進めた時に撮ったものなので、平目ローレットはすっかり無くなっています。
最初に写真を撮るのを忘れてました(笑)
まずはグラインダーのホルダー部にドリルチャックをつけ、タップを掴みます。
実際には芯ブレが若干起こるかもしれませんが、シームレスパイプにかち込むだけなので別にそこまで気にしなくてもよいでしょう。
そして、ドリルチャックに掴んだタップのネジを利用して預かった部品を回して奥まで入れます。
右ネジなので、部品を左回転させれば奥へと入っていきますね。
そして、しっかりとドリルチャックに当たるまで入れます。
あとは、砥石を回転させて、部品もハンドルで回転させて研削していきます。
0.05~0.1mmずつくらいちょっとずつ研削します。
この時に必ず注意しないと危険なことになります。
それは、砥石の回転方向です。
部品はタップに回して入れているだけなので、砥石の回転方向を間違えるとネジが回って部品がタップから外れます。
そして、部品はぶっ飛んでいく。
怪我するぞ。
正しい砥石の回転方向はこうです。
こうやって、ちょっとずつ研削したらこうなりました。
何だか目が粗いですね。
でも、いいんです。
わざとです。
あまりツルツルにするよりも、ハメる相手であるシームレスパイプが歪だから目が粗い方がかえって滑り止めになる(ハズ)。
では、樹脂ハンマーで叩いてかち込んでみましょうか。
研削した部品をパイプへかち込みする
かち込みをする前に研削した部品の寸法はおよそ18mmになっていることを確認。
実際、マイクロメーターで測ると17.96mmくらいです。
はめる相手のシームレスパイプの内径は17.98~18.13mmと測るところによってこれだけ寸法にバラつきがあるのです。
ま、とりあえず叩き込んでみましょう。
パイプの口に研削した部品を合わせて樹脂ハンマーでちょっとずつ叩いて入れてみます。
少し入りました。
もうちょっと叩いてみるか。
はい。
しっかりとはまりました。
もう簡単に手では抜けません。
完成です。
これをやったのは、昼休みの30~40分くらいの間です。
こういう合間のタイミングでできる依頼は早いですね。
なので、そこそこ安価で対応できます。
でも、じっくりと機械でプログラムを作って削って、研磨もして、表面処理もして・・・となると、すぐには難しい。
なので、時間も費用もそれなりに必要になるんです。
個人のお客様はとにかく値段にシビアですから悩ましいところ。
趣味で使うものにしても、部品加工にかかる費用代ってのは、結局はお小遣いの中から捻出したりするわけですものね。
だから、私もできるだけ薄利でお渡しできるようには努力はしてます。
それでも、やっぱり会社としてやっている以上、赤字赤字ではダメですから折り合いのつく金額は提示します。
そこを理解してくれたお客様からは御依頼を頂くのです。
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