緩和ケアにおける「モルヒネ」と「死期」への誤解を解けば心が救われる

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昨今の健康ブームもあり、大衆へのがんの治療における疼痛緩和、緩和ケア、終末期医療へのイメージも随分と変化してきてはいるだろう。

しかしながら、未だにモルヒネなどの鎮痛剤に対して誤った見識を持ち、家族の治療に接触する人々も多いことは事実である。

「がん」と診断され抗がん剤や放射線などによる治療と共に避けることができないのが、痛みに対する処置です。

そして、その痛みを取り除く医療用麻薬として有名なのがモルヒネ。

モルヒネはケシから抽出されるアヘンが原料のアルカロイドです。

古代エジプトではすでに外科手術のための痛み止めとして、ケシの葉をかみ砕いて使用していたということも言われているくらいに昔から人類と関わりのある成分なのです。

しかし、日本人のモルヒネに対する一般人の考え方には「死期」を脳裏によぎらせる力があるようだが、がんの痛みを緩和することが何を意味するのかを再認識してほしいと願う。

モルヒネのような鎮痛剤をどのように捉えるのかによって、本人はもとより周囲の家族にとっても『人生の最期』を心安らかに迎えられるか否かが変わるのです。


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死期を悟ることへの恐怖

この世に生まれた人は必ず死にます。

遅かれ早かれ皆平等に最期は死ぬのです。

生きとし生けるものの中で唯一人間が自分の死期というものへの恐怖を抱き恐れるとされます。

『死』というものへの思想は実に玉石混淆であり、かつての日本帝国も国を挙げて特攻隊という若き尊い命を粗末に扱った歴史を抱えているが、その時代背景や世界情景で大きく変わる。

だが、現在の日本に生きる私たちが抱える問題は、病に倒れた時の末に迎える最期までの過程をどのように過ごすのかということである。

世界中の国の中には尊厳死を認める国もあり、つまりは安楽死の容認です。

世界で初めて安楽死を認めた国はスイス。

誰でも「死にたい」と思えば、いつでも死なせてもらえると勘違いをしている人が少数いるようですが、その認識は間違いです。

何故、死にたいと思うのかについて身体的苦痛と精神的苦痛が認められなければ安楽死はさせてもらえない。

中でも唯一ベルギーは安楽死への年齢制限を撤廃した国であり、先日もベルギーで子供の安楽死が執り行われたという報道があったばかりである。

ただ、子供に対しては精神的に未熟であるという認識から、精神的苦痛が伴わなくても生きるに堪えがたい身体的苦痛があり、本人とその家族が望めば安楽死を認めているという。

これら安楽死は仁徳の精神に反するという意見もあり、議題とするには少々答えが見つからない部分がある。

だが、確実に言えることは安楽死を願う本人にとって「死期を悟ることへの恐怖」よりも、今ある苦痛(痛み)が耐え難いということの意思の表れが紛れもなく安楽死ということだ。

残念ながら我が国日本では安楽死は認められていない。

もしも、医師が患者とその家族に乞われて仕方なくでも安楽死をさせたりでもすれば、その医師は刑事責任を負うことになる。

安楽死を許さない法律が日本にはあるのだ。

先ほどの安楽死を願う本人の意思というものを鑑みる限り、少なくとも、身体的苦痛により安楽死を願う人にとってその苦痛は死期を悟ることよりも恐怖であると言えます。

これが意味することは人の終末期における「生きる」という意味さえも考えさせらえるだろう。

痛みと闘いながら生きるのか、たとえ寿命が短くなるとしても痛みを失くして生きるのか。

(ここで間違った認識はしてほしくないので言及しておくが、モルヒネを打ったからといって必ずしも死期が近いとか、寿命が短くなるというわけではありません。)

モルヒネで痛みを取り除けば延命治療につながる

日本人独特の美徳の中にある「我慢すること」が医療の現場でも時折見かけられるようですが、少なくとも、がん治療における現場ではそういった観念や習慣というのは捨てたほうが良い。

痛みというのは、人間が感じることのできる感覚の中でも様々な弊害をもたらします。

この世には幸いにも痛みを消してくれるモルヒネなどの鎮痛剤が存在するのです。

間違った使い方をすれば、それは予期せぬ死を招きますが、適切に使用すればQOL(生活の質)を上昇させてくれる素晴らしい薬なのです。

自然が私たち人類に与えてくれた傑作と言わずして何と言おうかというくらいの薬である。

モルヒネを使い始めると死期が近いとか、廃人になってしまうのではないかという認識を未だにお持ちならば、今すぐ払拭してほしい。

がん治療における痛みの緩和は早い方が良い

2002年、WHO(世界保健機関)が定義したことに「緩和ケアは疾患の発症早期から始まる」とあるように、現在ではがんと診断されて治療が始まると同時に痛みに対するケアも始まります。

何故なら、がん治療の促進には、患者の身体的な状況もそうだが精神的な安定性が大きく影響するからです。

人は痛みによって行動が萎縮され寝たきりになる傾向があるが、早期に疼痛緩和処置を受けることで限界まで自発運動ができる状態を続けることができる。

そうすることによって、過剰な筋力低下や免疫力の低下を防ぐこともでき、恐怖や不安などの心因ストレスからも解放されて精神的に安定性は増す。

さらには手術や抗がん剤治療、放射線治療にも力強く対応でき、結果的に延命になるのだ。

痛みを我慢してベッドの上に寝たきりになれば、結局は全身の身体機能は低下します。

何らかの病気で入院を体験したことがある人ならば、実感できることでしょうけれど、たった数週間を病院のベッドで運動もせずに過ごすと一気に体力と筋力が低下するのが分かります。

人間の体は怠慢には恐ろしい速さで浸食されるということですね。

モルヒネ中毒への間違った懸念と心配

もしも、がんで入院をする、あるいは在宅療養を選択するにせよ医師から「モルヒネ」を使いましょうかと言われてもゾクッとしてはいけない。

痛みの除去こそが人の心を安らかにしてくれるのです。

モルヒネを使えば、どんどん効かなくなるまで使用量が増えてしまう。

中毒で死んでしまう。

廃人になってしまう。

こうした負のイメージがはびこる現実には唖然とするばかりです。

まったくのデタラメであり、何故このような流言が日本では起こるのかが不思議ですね。

終末期ケア、緩和ケアと聞くと死期を悟る方もいらっしゃるが、そのケアの意味をよくよく考えてみてください。

緩和ケアの目的は「最期を看取ること」ではありません。

患者の苦痛を最大限に取り除くことです。

モルヒネの素晴らしいところは、痛みを除去するだけでなく、全身組織や臓器の侵襲反応(咳や痰、呼吸困難など)さえも緩和してくれるところにあります。


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WHOが定めた鎮痛剤の使用スケジュール

1986年にWHOはガイドラインとして『Cancer Pain Relief』を国際標準に定めました。

それは、痛みの度合いによって3段階に分けて薬を使うということです。

1.非オピオイド系鎮痛薬(アスピリン、アセトアミノフェンなど)

2.弱いオピオイド系鎮痛薬(コデイン、トラマドールなど)

3.強いオピオイド系鎮痛薬(モルヒネ、フェンタニル、オキシコドン、メサドン)

オピオイドとはモルヒネを含む医療用麻薬を化学構造から分類した鎮痛薬の総称です。

最近では医療用麻薬と呼ばずにオピオイドと呼ぶことが多くなってきています。

オピオイドの使用は1から3の順番に段階を分けるのですが、日本の医療現場では欧米諸国と比べて鎮痛薬の使用量が半数以下となっていることに問題がある。

その背景にあることこそが、モルヒネなどへの固定観念です。

これさえ無くなれば、がん治療の苦痛がもっと軽減されることは間違いないだろう。

モルヒネと延命効果

モルヒネ中毒への都市伝説的なイメージとは裏腹に、海外の科学雑誌などには多くのモルヒネ効果が報告されている。

抗がん剤が効かなくなった、終末期の患者に使用するモルヒネの量を比較すると、モルヒネを多く使った患者の方が痛みもなく長く生きることができているという。

あるいは、がんが発見された早期からモルヒネなどの鎮痛剤を併用して治療を受けている患者とそうでない患者でも、やはり前者の方がQOL(生活の質)も良く長く生きているのだ。

これこそが、あなた方家族が望むことではないだろうか?

痛みがもたらす弊害がいかに生存率に影響を及ぼすかがわかるだろう。

薬の服用量は年齢や性別、体重によって決められるものが多いけれども、モルヒネなどのオピオイド鎮痛薬は完全に個々の痛みに合わせて容量を決定します。

とりわけ、がんの治療においては突発的・間欠的に強い痛みに襲われることもある。

だが、静脈経由あるいは皮下経由で投与されるモルヒネの量はその痛みの発作に合わせて増量し、痛みを除去します。

痛みが治まれば、また量を元に戻すことを繰り返しながら治療を続けるのです。

モルヒネを使用する患者と家族、医療従事者の課題

がん治療を続けていくうちに、どうしても体力的衰えてきたりして十分にセルフケアができなくなることもある。

多くは入院をして看護師に手伝ってもらいながら治療を続けるが、中には在宅治療を強く希望される方もいらっしゃる。

がんの治療と疼痛緩和は切り離せないことであり、当然、終末期には鎮痛薬を持続的に投与することになる。

その際には持続的に鎮痛薬を投与するポータブルサイズの医療機器も普及しており、実際に病院でも医師や看護師からの指導を受けて使うことになりますが、誤作動をしないようにしっかりと説明を覚えておかなければいけません。

高齢者になれば複雑な様式になっている医療機器を触ることに抵抗があるし、万が一のトラブルにさえ気づかないまま痛みの発作を起こしてしまう可能性もある。

これからも決して避けることのできない大きな課題が、医療従事者の目の行き届かないところでのトラブルシューティングだ。

医療従事者も全員がエキスパートではないし、新人だっている。

なので、いくつもの「もしも」を挙げ、一種のマニュアル化ができればスムーズな対処がある程度可能になるだろう。

モルヒネを使うことのまとめ

あなたが将来、がんになる確率は決して低いとは言い切れません。

もしもの時、人生を悟る前に治療と平行して疼痛緩和にも注視してください。

それが、結果的に人生の最期を有終に迎えることの手助けになるはずですから。

モルヒネは怖いものという誤った認識は捨ててしまいましょう。

QOLを高く、そして長生きをしたいではありませんか。


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