部品加工で使える安い金属材料SS400、SPCC、SPHCとは?

材料のこと

個人の部品加工依頼で、材料には特にこだわらないのでとにかく安い材料で作ってほしいということありますよね?

私も、たまに依頼を受けるときにこのような希望を受けることがあります。

 

その時に決まって勧めるのがSS400やSPCC、SPHCです。

 

一般的に「鉄」と言われる部類の材料の中では、最も安価、最も流通していて加工も容易な材料です。

町工場のなかには、固い材料は削ったことがないから受けないというところもありますが、SS400は削れないという金属加工屋は無いのでは??と思うくらいです。

 

なので、もしも金属加工を依頼したいと思ったら、材質をSS400かSPCC、SPHCで指定すると安くつきますよ!

ここでは、SS400とSPCC、SPHCって何が違うの?

ということについて、簡単に説明します。

SS400とは?

SS400は一般構造用圧延鋼材と言われているもので、一般的に「鉄」と言われると、我々町工場はこの材料を思い浮かべます。

昔はSS41という名称を用いられていたので、古い図面などにはまだ「SS41」と記載されているものも珍しくありません。

 

SSの後ろにある「400」という数字ですが、これは最低の引張り強さをMPa(N/mm2)で表記したものというのが鋼材の説明にもある文言です。

簡単に言ってしまえば破壊しにくさを数字で表したものと思えばいいです。

 

もっと詳しく引っ張り強さを知りたい!!

という人は、自分で勉強してみてください(笑)

 

SS400のは熱間圧延鋼板に分類され、キルド鋼から製造されます。

鉄鋼材料は製銑→精錬→製鋼という工程で製造されるわけですが、キルド鋼は精錬の段階でアルミニウムなどを添加して酸素を取り除かれたものを言います。

 

キルド鋼材の特徴は、作られた鉄の塊(インゴット)の組成に偏りが少なく、鋳物によくあるような気泡もほとんどないことです。

このキルド鋼から作られたインゴットを熱して延ばしてできるのがSS400です。

 

SPCCとは?

SS400とよく似ていて、同じくらい使われています。

冷間圧延鋼板になり、SS400が熱間圧延鋼板であるのとは対照的ですが、熱間圧延した鋼材を常温で引き延ばしたものになります。

決して、冷蔵庫のような冷た~い場所で作っているわけではないです(笑)

 

また、SPCCは薄く引き延ばされた鋼板になるので厚みには規格品があります。

0.4~6mmくらいまでがあります。

これ以上の厚みになるとSPCCではなく、ミガキ材と呼ばれるものになる。

 

SS400ミガキ材(フラットバー)はSPCC?

SS400の材料を使って部品加工をするときに、ミガキ材を使うことがあります。

棒状のミガキ材のことを「フラットバー(FB)」と呼んだりもします。

 

ミガキ材って何?と思う人もいるかもしれませんが、ミガキ材はSPCCと同じように熱間圧延した鋼材を冷間圧延した材料のことです。

 

冷間圧延していない普通のSS400素材は「ミガキ」という言葉と対照して「黒皮」と言われます。

ミガキ材は圧延ロールなどで引き延ばされているため、表面がツルっとしています。

一方で、黒皮は熱間圧延するときにできるスケールがついているため、凸凹しています。

 

丸材の画像ですが、表面の違いを画像で見比べてもらえれば一目瞭然!

丸棒素材黒皮

ミガキ材

なので、ミガキ材も広義ではSPCCと同じ仲間ですが、SPCCという呼び名は板材のみに適用します。

一方、ミガキ材は板材と丸材(引き抜き材)と両方があります。

ミガキ材にも、SPCCと同様に寸法規格があるので、キリの良い寸法の部品を作る場合には、削ることが不要になったりして便利です。

 

ただし、SPCCやミガキ材は常温で引き延ばした材料になるので、製造過程でかなりの加工応力が発生しています。

素材寸法はかなり精度が良いのですが、削ったりして加工をすると、加工した部位から応力が解放されたりするので、加工歪みがすごく出やすいというデメリットがあります。

 

なので、バリバリ削らないといけないような加工品の場合は、あまりミガキ材はおススメできません。(加工者の意見です)

 

SPHCとは?

汎用的な熱間圧延鋼板として、SPCCと同じように薄い板の規格品です。

SS400との大きな違いは、強度保障が何もないということです。

その点、SS400やSPCCよりも少しだけ安いです。

 

薄い板構造の部品などには、SPHCをSS400の代わりに使うことはよくありますが、厚みが12mmくらいを超えてくるようならSS400を使います。

ただし、強度が必要な場合はSPHCで本当に大丈夫かどうかは検証しないといけません。

 

SPHCは表面が凸凹していますが、酸洗いすることで表面を滑らかにしているSPHC-Pというものもあります。

色合いも異なり、SPHCは黒皮と同じく黒色をしていますが、SPHC-Pはミガキ材と同じような灰色になっています。

 

SS400、SPCC、SPHCの簡単な比較と使い分け

成分的にもさほど差がない鋼材たちですが、それぞれの使い分けってどうするのか?

簡単に分けるとするなら、薄い板を曲げたり切ったりして作る部品はSPCCかSPHCを使う。

それ以外ならSS400を使う。

 

こんな感じでよいと思います。

これ以上、深く考えてもナンセンスです。

 

SS400やSPCC、SPHCを使わないほうがよい部品例

これらの材料は一般構造用に使うのは問題ありません。

例えば、架台とかただの治具とか。

架台を作るときに使うアングルとかCチャンネル鋼材もSS400のものがほとんどです。

 

しかし、スチールの中では最も柔らかい部類の材料になるため、回転して擦れる部分に使うシャフトとか、衝撃が加わる部品などには向きません。

もちろん、プレス金型やプラスチック用金型にも使えません。

 

耐摩耗、耐衝撃の機能が必要とされる場合は、焼入れにより硬度を上げる必要があるのですが、SS400などは焼入れができないのです。

 

何故なら、いずれの材料も組成に炭素が少ないのが特徴だからです。

 

金属はFe(鉄)だけでなく、炭素や窒素、亜鉛、バナジウム、モリブデン、アルミ、銅・・・といったものが混ざった合金です。

その中でも、炭素量というのは熱処理に重要な元素であり、炭素がないと金属は固くならないと思ってください。

 

なので、熱処理も必要ないような部品ならば、最安値の材料を使いたいならSS400などを指定しましょう。

もし、表面の防錆が気になるという場合は、黒染めとかパーカー、窒化処理、メッキなどを検討するといいでしょう。

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